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2020.03.05

【2020秋冬パリコレ ハイライト1】暗い世相を打ち破るポジティブでピュアなコレクションが多く発表

(左から)ジバンシィ、ルイ・ヴィトン、サンローラン

 2月24日から9日間に渡って行われたパリコレクション。直前まで開催されていたミラノコレクションでは、最終日前日の「ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)」のショーが無観客ショーとなり、最終日は無観客ショーすら中止となり、パリコレクションへの影響があるかと思われた。しかし、結果的には「アニエスベー(agnès b.)」と「アー・ペー・セー(A.P.C. )」がショーを中止した以外は、つつがなく最終日を終えることが出来た。

 

 ただ、大きな異変は各所で起きており、ブランドによってはマスクを配ったり、主催のクチュール組合のシャトルバスでは消毒ジェルのサービスがあったり、挨拶の時も握手やハグ、ビズー(頬を触れ合わせるフランス式挨拶)は憚るなど、これまでにない光景が見られた。

 

 トレンドに目を向けてみると、サステナビリティ(持続可能性)やエコロジーへの意識の高さは依然として多く語られ、その流れで植物を思わせるグリーンが目につき、アニマルやボタニカルモチーフがあらゆるコレクションを華やかなものにしていた。また、中国を意識しているのかは不明であるものの、赤をキーカラーにするブランドが目についた。色の括りで見ると、黒や白のベーシックカラーの他に、原色使いのコレクションが多く、景況時には地味に、不況時には派手になる流行色の傾向はそのまま今季に表れていた。

 

 これまでにストリート色やワークウェア色の強かったブランドも、どことなくシックでドレッシーな印象を与えるケースが多く見受けられたのも今季の特徴。先の見えない殺伐とした状況下にあって、純粋に美しいものへの憧憬が、このような形で表れていたのかもしれない。

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

 ニコラ・ジェスキエールによる「ルイ・ヴィトン」は、これまでの作風を更に推し進め、様々な時代・アイテム・素材を組み合わせる、ハイパーミックスなアイテムでコレクションを構成。

 

 ランウェイ正面には、背景として15世紀から1950年代までの衣装をまとった200人のエキストラを配置。これは、「バリー・リンドン」や「時計仕掛けのオレンジ」などスタンリー・キューブリック作品の衣装デザイナーとして知られるミレーナ・カノネロとのコラボレーションによるもの。

 

 コレクションタイトルは“Time crush(時間の衝突)”。様々な時代の服を一堂に会したらどうなるか、という実験的な側面を持たせ、互いに異なる要素のミクスチャーによって人々の目を楽しませる内容となっていた。

 

 レザーやニットなど様々な素材を組み合わせたバイカージャケットや、飛行機の整備士が着用するつなぎを思わせるセットアップといったワークウェアインスパイアのアイテムから、闘牛士用のマタドールジャケットを思わせる刺繍のブルゾンまで、幅広いジャンルをミックス。各アイテムは、ディテールを追うと既視感はあるものの、一歩引いて見るとフューチャリスティックな印象さえ与える。既存のものを組み合わせることで生まれる、新しい服の形態を強烈に感じさせるコレクションだった。

ジバンシィ(GIVENCHY)

 クレア・ワイト・ケラーによる「ジバンシィ」は、ロンシャン競馬場内に100mはあるかと思われる会場を設営してショーを開催した。ヌーベルバーグに象徴されるフランス映画全盛時代の女優たちにイメージを求め、ポルトガル出身のアーティスト、ヘレナ・アルメイダによる自らを被写体とした写真作品からもインスパイア。黒、白、グレーのベーシックカラーに、赤、青、白、パープルなどの差し色を織り交ぜ、特に赤は強烈な印象を残した。

 

 ダブルフェイス素材のパゴダスリーブのケープやコートドレスは、ゆったりしたいシルエットで身体をソフトに包み込む。ラグランスリーブのチェックのコートや、スクエアパターンのプリントを組み合わせたドレスなども、多くのアイテムでルースフィットなシルエットが貫かれた。

 

 特にイブニングのシリーズは圧巻で、オーストリッチの羽やラフィア、ビーズフリンジが優雅な動きを見せ、オートクチュール全盛の1950年代のスタイルを想起。少なからずとも、ブランド創設者ユベール・ドゥ・ジバンシィ作品からの影響を感じさせた。

 

 モダンでエッジー、そしてマスキュリン・フェミニンというこれまでの「ジバンシィ」像が新たになったと実感させる力強いコレクションだった。

サンローラン(SAINT LAURENT)

 アンソニー・ヴァカレロによる「サンローラン」は、ヴァルソヴィー広場の噴水の上に建てられた特設会場内で最新コレクションを発表。80~90年代の「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」のアーカイブからインスパイアされつつ、アンソニー・ヴァカレロらしいフェティッシュな側面を加え、ブルジョワの子女と反逆的な不良の両面を一つのルックにミックス。その絶妙なバランスとコントラストで、招待客に新鮮なショックを与えた。

 

 「イヴ・サンローラン」全盛の80年代を彷彿とさせる、金ボタンのチェックのジャケットには、シースルーのブラウスとラテックスのパンツをコーディネートし、カシミアのロングコートにはレースアップのビュスティエ風レザーボディスを合わせ、外側と内側に大きな落差を付ける。

 

 ストラップ付のランジェリードレスや、「イヴ・サンローラン」作品を思わせるラッフルを飾ったドレスなど、熱圧着でパーツを繋いだラテックス製アイテムは、フェティッシュな中にオーソドックスな美しさがあり、特異な魅力を放っていた。

 

 今シーズンは黒の他にブルーやピンク、パープル、グリーンなどが登場し、特に様々なグラデーションの赤は目を引いた。そして、これまでの超ミニ丈のドレスは影を潜め、アンソニー・ヴァカレロによる新たな方向性を感じさせる意欲的なコレクションとなっていた。

 

取材・文:清水友顕(Text by Tomoaki Shimizu)

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