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2020.03.10

【2020秋冬パリコレ ハイライト5】パリコレに集う気鋭たち アフリカのデザイナーたちの活躍めざましく

(写真左から)テベ・マググ、ケネス イゼ、コシェ

ケネス イゼ(KENNETH IZE)

 「ケネス イゼ」は、パレ・ドゥ・トーキョーにて初のショーを発表。ナイジェリアのラゴス生まれでウィーン育ちのケネス・イゼは、ウィーンの応用芸術大学で学び、2016年に自己のブランドを設立。昨年はLVMHプライズのファイナリストに選出されている。これまでに、自らのルーツを辿るような色鮮やかなテキスタイルをあしらったコレクションを発表。今季も、アフリカを強烈に想起させるストライプや、グラフィカルなモチーフのジャカード素材や刺繍素材をふんだんに用いて、人を明るく、楽しくさせるようなルックの数々を提案。

 

 ストライプのジャカード素材のヘムをフリンジ状にしたパンツやジャケット、細いパネルで構成したスカート、レーシーな刺繍素材のドレスなど、そのどれもがアフリカを強烈に印象付ける。

 

 最終ルックから2番目のコートドレスはデブラ・ショーが、そして最後のフリンジトレンチはナオオミ・キャンベルが着用して会場を沸かせた。最前列にはエチオピア出身のモデル、リヤ・ケベデも駆けつけるなど応援者が多数集い、アフリカ出身デザイナーの機運の高まりを感じさせた。

コペルニ(COPERNI)

 セバスチャン・メイエールとアルノー・ヴァイヤンによる「コペルニ」は、13区にある旧フランス国鉄の倉庫、現レンタルオフィスのスタシオンFでショーを開催した。「コペルニ」は2013年にスタート。2015年より2年間、「クレージュ(Courrèges)」のコレクションを手掛け、その期間中は「コペルニ」を休止していたが、昨年活動を再開。今年はブランドとして初めてのショーを開催することとなった。

 

「クレージュ」からの影響もあってか、ミニマルでフューチャリスティックな作風を見せたコレクション。冒頭はテーラードが中心で、ラペルが一体化したトロンプ・ルイユ(だまし絵)のジャケットが目を引く。テーラード類はウエストを絞り、フェミニンな仕上がり。

 

 天竺素材にカットを入れて、コードでギャザーを寄せたトップスやドレス、ボタンをあしらったジャージーのトップスやスカートなど、アシメトリーのアイテムがアクセントとなっていた。

テベ・マググ(THEBE MAGUGU)

 今季パリコレクション初参加となった「テベ・マググ」は、パレ・ドゥ・トーキョーを会場にプレゼンテーション形式でコレクションを発表した。

 

 南アフリカ出身のテベ・マググは、ヨハネスブルグを拠点に活動し、昨年のLVMHプライズでアフリカ人デザイナーとして初のグランプリを獲得している。アフリカの言葉で「人を美しくするために」を意味する“Ipopeng Ext”と題されたプレゼンテーションでは、テべ・マググが育ったキンバリーの人々をモデルとして起用し、アフリカ人のカメラマンによって撮影された写真をエキシビション形式で展示した。また、アフリカのマスクを付けたマネキンに服を着せて披露。

 

 オーストリッチの羽をあしらったダメージプリントのシャツとパンツのセットアップ、ウエストと袖をギャザーで絞ったジャケット、肩にカットを入れたシャツドレスなど、美しい仕立てのアイテムが並んだ。

コシェ(KOCHÉ)

 クリステル・コシェールによる「コシェ」は、ベルシーのアコーホテルが所有する複合競技場を会場にショーを開催した。「ディーゼル(DIESEL)」や「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」を擁すOTBとライセンス契約を結んで初のコレクションとなったが、基本的なクリエーションへの姿勢に変化は無く。カジュアルでスポーティなスタイルと、クチュールのテクニックを組み合わせ、モダンでフレッシュな作風を貫いていた。

 

 ただ、複雑な切り替えのジャカードのデニム素材をあしらったルックや、レザーをふんだんに使用したルックなど、豪奢で凝った素材使いにOTBとの契約による変化を感じさせる。

 

 このブランドらしいカラーレースのパッチワークアイテムも多く見られたが、これまで以上に数が多く、やはりバージョンアップがなされている印象。「コシェ」とOTBの今後の美しい化学反応に期待していきたい。

クリスチャン ワイナンツ(Christian Wijnants)

 パレ・ドゥ・トーキョーでショーを開催した「クリスチャン ワイナンツ」。ボリュームあるアシメトリーのアイテムを通して美しい素材感を出し、チューブフリンジやハンドニットのセットアップにより洗練された手仕事を披露。その全てが上品な仕上がりで、バランスの妙を見せた。

 

 今季は特にニットのバリエーションが豊富で、薄手のものからローゲージのものまで様々。ゆったりしたシルエットが優雅な空気感をまとっている。

 

 プリント地をチューブ状にしてメッシュに縫い付けたドレスは、ヘビのような、海の生物のような動きを見せ、コレクションに大きなアクセントを与える。ジグザグのラインをフリンジ状に垂らしたニットのセットアップや、半分の顔のイラストをプリントしたスーツなど楽しさを感じさせるアイテムも。ストイックな中にユーモラスで楽しい要素を配し、見る者を魅了するコレクションとなった。

ロック(ROKH)

 ロック・ファンによる「ロック」は、パレ・ドゥ・トーキョーでショーを開催した。ショー当日は、実はソウルで行われる妹の結婚式と重なっていたという。そんな妹に捧げ、インスパイアされたコレクションは、彼女の好きなベビーピンクやクリーミーブルー、ライラックなどのパステルに彩られ、これまで以上にドレッシーな内容となった。

 

 ショー冒頭ではスリムなスーツが登場し、ストイックな空気感を醸し出す。小花プリントのドレスが登場すると、エリカの花で埋め尽くされたランウェイと呼応するかのように華やぎを生む。

 

 得意とするトレンチの再解釈は、今季はシャツドレスとドッキングさせたものや、チェック地の長い袖をあしらったものなど、いくつかのバリエーションが見られた。

 

 パールを刺繍したチュールのシースルードレスや、ドロップ型のクリスタルを縫い留めたチュールのシャツドレスなどは、一際ガーリーな雰囲気に。妹への愛情をぶつけつつ、抑制されたストイックささえ感じさせるコレクションとなった。

パトゥ(PATOU)

 昨年、アーティスティック・ディレクターに着任したギヨーム・アンリによる「パトゥ」は、シテ島のパリ警察と同地区にある新社屋にてプレゼンテーション形式で最新コレクションを発表。ギヨーム・アンリが「カルヴェン(CARVEN)」で見せた、ガーリーでフェミニンな作風と、ブランド創設者ジャン・パトゥのクチュール的要素が見事にマッチしたコレクションとなった。

 

 サイケデリックなフローラルプリントのシャツドレスは60年代風で、ボウタイのピンタックワンピースは70年代風、大きなパフスリーブのドレスは80年代風。クロシェ編みのカラーを飾った金ボタンジャケットにはニットレースのスカートを合わせ、ラッフルカラーのギャザードレスにはプリンス・オブ・ウェールズチェックのボリュームあるコートをコーディネートし、絶妙なヴィンテージ感を創出している。

 

 組まれた腕のイラストが描かれたトロンプルイユ(だまし絵)のケープコートや、ギピュールレースを襟に飾ったスーツなど、新鮮なルックも印象的。今後のパリコレクションでのショー発表に期待したい。

 

取材・文:清水友顕(Text by Tomoaki Shimizu)

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