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2019.05.12
資生堂の中国市場深耕ホップ・ステップ・ジャンプ
(c) 123rf
中国EC最大手のアリババが3月31日、「資生堂と戦略業務提携を締結した」と発表した。資生堂と「資生堂×アリババ戦略提携オフィス」を立ち上げ(既に杭州市のアリババ本社近くの事務所に資生堂社員12人が駐在している)、アリババのECサイト「Tモール」で扱う資生堂専用商品の共同開発やブランドマーケティングで提携するという内容だ。
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アリババが今回のような形で内外の企業と提携するのは初めてであり、注目を集めている。東洋経済Web版は、「2017年以降、資生堂の魚谷雅彦社長とアリババ張勇(ダニエル・チャン)CEOが月に1-2回ペースで頻繁に協議を重ねてきたことで実現した」としている。が、私は報道に接した折、今回の提携は資生堂の中国市場深耕のジャンプと捉えた。ホップ・ステップを経てのジャンプである。
「ホップ」は1980年。資生堂は中国市場への第一歩を刻み込んだ。当該者は当時の取締役外国部長の福原義春氏(現名誉会長)だった。「豊かになるのもいいものだ」の名言を残した鄧小平国家主席体制下で行われた「改革開放」宣言(1978年12月)から、僅か1年半余り後のことである。
福原氏は1980年に訪中し、北京市と(資生堂の)友好関係を結んだ。そして翌81年には北京飯店などの大型商業施設や9つのホテルで(商社経由ではあるが)、資生堂の化粧品・石鹸・歯磨き粉など60商品の輸入販売を始めた。P&Gの中国進出が88年、ロレアルが96年であることを勘案すると資生堂はいち早く「中国市場」に乗り込んだのである。
「ステップ」は2005年。資生堂は既に名誉会長に就いていた福原路線の継承を軸に、10年後のビジョンとして「売上高1兆円超、海外売上高比率50%超」計画を打ち出した。ロレアルは「中国ブランドのM&A戦略」に市場侵攻策を求めたが、資生堂は地道な「カウンセリングセールス」に軸足を置いた。
それを遂行する上で「リスニング調査」「イメージ(ブランド価格)調査」「ブランド(浸食)度調査」を継続的に実施した。福原氏の訪中に始まる中国戦略には、どんな目的が込められていたのか。直近の決算状況が、それを教えてくれている。
前12月期は「8.9%の増収(1兆948億2500万円)、34.7%の営業増益(1083億5000万円)」と連続増収営業増益。売上高に占める海外事業比率は58.4%。うち中国事業が前年比32.3%増、構成比率で欧米を上回る17.4%。売上高営業利益率でも22.6%を占め国内事業に次いで高い。
視界のアナリストは「少子高齢化という流れの中で国内の売り上げは頭打ちが避けられない。海外部門、とりわけ中国市場の拡充がカギを握る。その意味で今回のアリババとの提携は意義深い」とする。
アリババは「マーケティングプロモーション」に強い。その背景には「ビッグデータ」がある。資生堂の従来品だけでなく、新ブランドを提案することも視野に入れている。言い換えれば資生堂にとっては、新商品投入のサイクルの短縮化が可能になる。
「ステップ:アリババとの提携」効果が、「少子高齢化時代の資生堂の成長力」のカギとなろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)