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2015.04.15

改装が相次ぐ、大阪の商業施設まとめ

 今春、大阪市内の商業施設で改装が相次いで実施されている。一般化した定期借地契約が満期を迎えた事例もあるようだが、やはり施設間の競合が激しくなっていることが一番の理由だと感じる。商業施設は不易流行、コンセプトなど変わらない部分も大事だが、トレンドに合わせ変わっていく必要がある。4月の最も大きな話題と言える、梅田地区に開業した「LUCUA 1100」(ルクア イーレ)を中心に、春の大阪の改装状況をまとめてみた。

機能を強化した「ルクア イーレ」

グランドオープンした「ルクア イーレ」(2階フロア)

 4月2日にグランドオープンした「ルクア イーレ」。既存の本館「ルクア大阪」の機能を補完・強化する目的で開発された物件だ。JR大阪三越伊勢丹の売り場だった建物を居抜きで改装し、30-40代を主軸にした商業施設に作り替えた。伊勢丹が「isetan」の屋号でメーンテナントとして入居する珍しい形態の売り場である。

 

 その評価は業界で分かれているように感じる。期待する声がある半面、厳しい意見も散見される。商業施設は売上実績――つまり結果で判断されるものと考えているので、現時点では褒めることもないし批判することもしない。が、同施設を運営するJR西日本SC開発の山口正人社長の「ルクア イーレ」の役割を「本館とは異なる新しい客層を取り込む」ことと説明している点は理解できる(新規客を取り込むことができる・できないは別として)。

 

 4月16日に改装グランドオープンを迎えるのが、前回ご紹介した「イーマ」だ。阪神梅田本店の南側にあるファッションビルで、前述の「ルクア イーレ」や複合商業施設の「グランフロント大阪」などと同じ商圏に存在する。個性派ブランドを集めることで、こうした規模の大きい施設と住み分けを図ろうとしている。

「なんばパークス」も大規模改装を実施した

 一足早く、3月20日に改装オープンしたのが、難波地区にある「なんばパークス」だ。開業以来、最大規模の100店舗を改装・新規導入した。リピーターは足元商圏や南側の私鉄沿線の住民が多いというが、複合型商業施設という点では、「ルクア イーレ」「グランフロント大阪」などと競合する個所が多い。

 

 「グランフロント大阪」では、開業からののべ来館者数が1億人を突破したという。ほぼ2年間での数値だが、“街”を作るというコンセプトの下、健闘していると言えるのではないか。完全に新しい導線が、梅田の北側に出来上がった。「ルクア イーレ」に入居するテナントの中には、「グランフロント大阪」に店舗を構えるアパレル関連企業も多数ある。そうした企業は住み分けを考えて、別業態や新業態などを出店している。新規出店の際、必ず対比すべき商業施設になっている。

新規施設も開業予定

 既存施設の改装だけでなく、新しく開業する商業施設もある。市内のまだ出店していない間隙を縫って、地域密着型の施設を開発している。しかし、取材する側から見れば、ネタが増えるので有難いのだが、本当に過剰供給ではないのか? と心配してしまうことも事実だ。

 

 4月27日にオープンするのが、「もりのみやキューズモールBASE」。東急不動産が開発する複合商業施設で、JR環状線の森ノ宮駅が最寄り駅、徒歩数分の距離である。阿倍野地区に展開する「キューズモール」も同社の開発・運営だ。テナント数は49店舗と少な目だが、延べ床面積は約2万5,000平方メートルと小さくない。施設を囲むように設けられた“屋上ランニング通路”「エアトラック」(1週300メートル)が特徴。物販だけではなく、「コト」提案を盛り込んで住み分けを図ろうという算段である。

 

 大阪市内の商業施設を取材すると、「梅田=キタと、なんば=ミナミは利用する公共機関が別で原則、住み分けができている」とよく耳にする。もちろん、競合はゼロではないが、売り上げのベースになるリピーターにおいては住み分けができているようだ。もっと小さな事例では、住宅地にSSM(スーパースーパーマーケット。スーパーマーケットの大型版。ドラッグストアを包含するケースも多い)業態の食品スーパーを出店するケースも増えている。同一商圏を細かく選別して、それぞれに適した業態店舗を出店しているようだ。

 

 したがって、前述の「もりのみやキューズモールBASE」も勝算があってのことと推察できる。すぐ近くが大阪城で、そのお堀はランニングスポットになっている。「エアトラック」の設置はそうした地区の特性を多分に意識している。競合が激しくなるのは容易に想像できるが、これだけ同商圏内で多種多様な業態の店舗が出て、しかも共存できるのであれば、それも興味深いことだなと感じた次第である。さて、今後の推移はどうなることだろう。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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