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2015.01.21
大阪「ルクア イーレ」4月開業 専門店を軸にした新戦略 JR西日本SC開発が施設概要を発表
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol.13
2館体制で生まれ変わる「ルクア」。左の建物が「ルクア大阪」(東館)、右手が「ルクア イーレ」
「ルクア大阪」を管理・運営するJR西日本SC開発(大阪市北区)が1月19日、旧JR大阪三越伊勢丹を居抜き改装して開業を目指す西館「LUCUA 1100(ルクア イーレ)」の概要を発表した。核テナントとして捲土重来を期す三越伊勢丹がどんな売り場を提案するのかとても興味があったが、こぢんまりとした面積で得意分野に特化した印象を受けた。発表会見に出席した感想を基に、「ルクア イーレ」の特徴を書いてみる。
主要顧客はファッション感度の高い30-40代
会見当日、大阪市内の会場にはざっと見ただけで、100人を超える報道陣が集まった。中には東京から来阪した媒体も見受けられた。やはり、報道機関の関心が高いのだなと再認識した次第である。三越伊勢丹が再デビューを果たすという一点が、多くの報道機関――特に東京方面――の興味をそそるのだろうか? 質疑応答の時、JR西日本SC開発の山口正人社長が登壇したのだが、発表者の席に座っているジェイアール西日本伊勢丹の瀬良知也社長に質問を投げかける媒体も結構、多かった。会見はJR西日本SC開発が主体になって進められた。途中、ジェイアール西日本伊勢丹の瀬良知也社長も自社の売り場説明のため登壇したが、終始控えめの印象を受けた。
既存の「ルクア大阪」(東館)を補完する形で開業する「ルクア イーレ」(西館)の主要顧客層はファッション感度の高い30-40代の女性と男性。サブターゲットには、20代半ばから30代前半のファッション好きな女性と男性・10代後半から20代前半の女性と男性・大阪駅の利用者を据えた。30-40代を中心にしているが、50代以上は受け付けないということではない。「ルクア大阪」の主要顧客は20-30代前半なので、重なっている部分はあるが、駅利用者をターゲットにしているし、全方位型で攻めていくことは間違いないだろう。役割を2館で分担すると言った方が正しいだろうか。
「ルクア イーレ」の店舗面積は約3万3000平方メートルで、地下2階、地上10階の12層で構成される。店舗数は158店舗で、「ルクア大阪」と併せると5万3000平方メートル、360店舗の規模になる『駅型商業施設』としては国内最大級だという。3万3000平方メートルのうち、専門店部分が約2万平方メートル、三越伊勢丹部分は1万3000平方メートルとコンパクトである。屋号は小文字の「isetan」とし、三越の名前は外れる。得意分野のデパ地下の飲食、ギフト、雑貨類、20-40代向けのレディス・メンズファッションにおいて、8つの「isetan」ショップを出店する。展開売り場を「isetan」に集約した理由について、瀬良社長は「伊勢丹の方が『ルクア』のコンセプトに合っていたため」と説明した。年間売上高目標は2館併せて770億円。東館の「ルクア大阪」が340-350億円だというから、残りの420-430億円を西館の「イーレ」で稼ぐ計算だ。ちなみに2011年5月の開業時の売り場面積は約5万平方メートルで、年間売上高目標は550億円だった。
「ルクア大阪」と旧「JR大阪三越伊勢丹」は別棟の館だが、2011年5月の開業時から実に8つのフロアに連絡通路が設けられている。北側には2階のペデストリアンデッキで「グランフロント大阪」につながっているし、南側の大丸梅田店とも複数のフロアで連絡している。地上10階の飲食店街は完全につながっていて、1つのフロアになっている。「ルクア大阪」と「ルクア イーレ」は歩いても数秒、文字通り『指呼の間』にある。回遊性という点では特に問題はないと考えられる。肝心なことは、『2館で回遊してもらえる売り場を作れるかどうか』だ。「ルクア イーレ」が「ルクア大阪」を補完する館に位置付けられているのは、こうした一体感を出して回遊性を高める目的もある。
百貨店がテナントとして入居する珍しいケース
今回の「ルクア イーレ」はファッションビルがデベロッパーとなり、その核テナントとして百貨店が入居する珍しいケースである。JR西日本SC開発の山口社長は「百貨店に馴染の方もルクアに馴染の方も満足してもらえる館」と説明する。ジェイアール西日本伊勢丹の瀬良社長は「条件が合えば、今後このような形での新規出店もあり得る」と語った。百貨店の新しい業態として定着するかどうか、今回の店舗がその試金石になる。
「isetan」の8つのショップは、大阪・梅田の地で「3年間、勉強させていただいたことを参考にした」(瀬良社長)。周辺の百貨店やファッションビル、「グランフロント大阪」のような複合商業施設などのコンペティターとの住み分けを考慮したという。8つのショップとは、地下2階のデパ地下、地下1階(一部)のアクセサリー、1階の雑貨・ギフト、2階(一部)のファッション雑貨・化粧品、4階のレディス&メンズファッション、8階(一部)のメンズファッションである。それ以外は専門店がカバーしている。主要顧客は前述の通り30-40代を中心とした年齢層。従来の「フラッグシップ戦略」から、「強みにフォーカスし、優位性を磨き上げる戦略」に転換する。
一方の専門店は、全国初が27店、西日本初が34店、関西初が10店、大阪初が11店、梅田初が22店と、初物を多く揃えた。価格帯も広範で、この辺りは「グランフロント大阪」と共通している。「アーバンリサーチ」や「シップス」などが新業態を出店するし、「フォーエバー21」や「オールドネイビー」も出店する。…会見で配られたテナントの一覧表をぺらぺらとめくっているのだが、正直ここまでテナント数が多くなると頭の中の収拾がつかなくなる…。しかし「isetan」のショップにしても、専門店部分にしても、『初出店』のテナントを意識して導入している点はよく分かる。この辺りで差別化、住み分けを図っていくのだろう。もちろん、梅田の既存店舗と被っているブランドも数多く存在する。この辺は顧客の取り合いになるのだろう、おそらく。
『五十貨店』が現実のものに
会見後、感じたことは、至極当たり前のことだが、実際に現場を見てみないとどこまで百貨店と専門店が融合した売り場になるのか分からないということだった。伊勢丹の編集力には期待したいし、「ルクア」のリーシング力にも期待したい。そういえば少し前、「百貨店は『五十貨店』でも構わない」といった意見をよく耳にしたものだが、それがいよいよ現実になってくるのだなと感じた次第である。
オープン直前に開催される内覧会で売り場を拝見し、また意見を述べてみたいと思う(疲れました…)。
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樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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