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2014.08.20

JR西日本SC開発 「ルクア大阪」 開業以来、最大規模の改装を実施

 大阪・梅田のファッションビル「ルクア大阪」が8月28日、開業以来最大規模のテナント入れ替えを実施して改装オープンする。2011年5月にグランドオープンした同施設は初年度から好調に推移。2013年4月の「グランフロント大阪」がオープンした後はその影響を受けたが(お決まりのパターンで、グランフロント大阪にルクア大阪が客を取られた、不調だ、といったマスメディアの報道も見られたが)、それでも開業から3年間は健闘したと言っていいと思う。オープンを来週に控えたこのタイミングで、その内容と目的をわたくしなりに考えてみた。

20歳前半の新規ターゲットを取り込む

  「ルクア大阪」を運営するJR西日本SC開発株式会社(大阪市北区梅田)はニュースリリースの中で、今回の改装目的についてこう書いている。少し長いが、全文を引用する。

 

 ――ルクア開業以来のコアターゲットである25歳~30歳代のトレンドに敏感な女性に加え、20歳代前半の方々にとっても、より魅力的な店舗を取り揃えました。これにより開業以来のコンセプトである「日常生活における手の届く贅沢、高感度で洗練されたライフスタイルを提案。ここにしかない価値を提供する梅田地区でNo.1のファッションビル」をさらに追求し、より多くのお客様にご利用いただける商業施設を目指します。(終)  

 過去3年間で顧客になったコアターゲットに加え、次世代顧客になり得る若い世代の男女を取り込もうという目的が明確で分かりやすい。元々、男女融合したフロア構成・テナント構成が特徴の「ルクア大阪」。カップル客の利用を強く意識しているので、こうした改装の方向性はごく自然と言えるだろう。

 

 改装の内容を簡単に列挙すると、新規導入あるいは改装オープンするテナントは全196店中58店で、約30%にのぼる。新店が44店、そのうち全国初出店が7店、西日本初が17店、関西初が3店、梅田初が8店。既存店舗の移転・改装組(14店)もいくつかある。すでにご存じの方も多いと思うので、詳しくは書かないが、レディスとメンズの複合ショップ、スポーツ系のスニーカーショップ、個性派の生活雑貨・飲食店など、不足していたカテゴリーのテナントを強化している。

ファッションビルの賞味期限は3年?

 ここまで書いてきて、ふと思いついたことがある。開業からちょうど3年目、定期借地契約(定借)がファッション系商業施設でも定着した観のある昨今、その契約満了に伴うタイミングで実施する意図もあったのではないか、という点である。以前、当コラムで紹介した「阪急西宮ガーデンズ」や「くずはモール」は定借の契約満了のタイミングを活用し、大規模改装を実施しているので、「ルクア大阪」もそうでは、と予測したわけである。

 

 思い立ったが吉日、早速、JR西日本SC開発に問い合わせてみた。営業部の担当者は、「定借満了のタイミングが改装理由のすべてではないが、そういった一面もある」と丁寧に説明してくれた(ありがとうございました)。昨今、ファッション系商業施設は3年ほどで陳腐化するということなのだろうか。あるいは以前から3年が大規模改装の目安と業界で認識されていたのかも知れない。この辺りは不勉強なので後日、専門家の意見を仰ぐことにする。 

JR大阪三越伊勢丹に面した「ルクア大阪」外観(西側)

 今回の「ルクア大阪」の改装は、来春に「ルクア」の「西館」として生まれ変わる「JR大阪三越伊勢丹」の閉店・改装を意識した面もあるだろうと思っていた(JR大阪三越伊勢丹は7月27日で、デパ地下や飲食街など一部を除き一旦、閉館)。しかし、オープン当初からルクアは三越伊勢丹と共存共栄を目指してきた商業施設である。今回の改装は純粋に既存売り場を強化するために実施される工事のようだ。

 

 それを裏付けるように、JR西日本SC開発から別途出されたリリースでは、来春をめどに「西館」(旧JR大阪三越伊勢丹)の9階フロアに、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社の「代官山 蔦屋書店」が出店する旨が発表された。より幅広い客層を対象にした「ライフスタイル提案型の店舗」にするという。

 

 余談だが、今月8月末まで、大阪・戎橋のほとりにあるCCCが運営する「TSUTAYA」(ツタヤ)内に、遊心クリエイションのファッション雑貨ショップ「ASOKO」(アソコ)が限定オープンしている。先日、「フィガロジャポン」や「PEN」などのファッション雑誌を出版する阪急コミュニケーションズの書籍事業をCCCが譲り受けるという一報があったところだが、ファッションシーンにも本格進出するのだろうか…。

 

 閑話休題。昔から、小売店は立地商売と言われる。わたくしも十数年前から、取材を通じて小売店関係者の口からそのフレーズを幾度となく聞いてきた。ターミナル立地という恵まれた場所では、小売店は成功するのは当たり前と思われがちだが、ここ数年の梅田地区の栄枯盛衰(と言っては大袈裟かもしれないが)を見ていると、エンドユーザーに支持される売り場を作らないとなかなか難しいのではないかと思うようになった。

 

 最初の3年間をうまく乗り切った「ルクア大阪」なので、今回の大規模改装には期待してしまう。初の大規模改装は、今後の3年間を生き抜くための“脱皮”みたいなものだろう。どういう姿に変貌を遂げるのだろうか。いずれ今後の方針についても、聞いてみたいと思う。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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