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2020.02.17

【2020秋冬NYコレ ハイライト1】非常事態宣言下のNYFW クラシック回帰が主流

(写真)マーク ジェイコブス

 「2020秋冬 ニューヨーク ファッションウィーク(以下NYFW)」が、2020年2月6日から米ニューヨーク・マンハッタンで開催された。

 

 本会場は、前回と同じくスプリングスタジオだが、今季はさらに規模が縮小された。スポンサーとなる企業も減り、長らくNYFWを必ず支えてきたグリーティングカード会社のパピルスが倒産して、会場から消えたのも淋しい限りだ。今季は大物デザイナーであるラルフ・ローレン、そしてトミー・ヒルフィガーもNYFWでの発表はなし。CFDA(アメリカファッション協議会)のトップであるトム・フォードも、アカデミー賞の時期に合わせてかロスでコレクションを発表した。「ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)」や、「3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)」はショーを止めて、展示会方式で発表。

 

 さらに今回は新型コロナウィルスに関連してアメリカ政府は「非常事態」を宣言し、中国滞在者の入国を禁止した。そのために中国のプレスやバイヤーも渡米できなくなるという事態になった。

 

 全体的にスケールダウンが否めないNYFWだが、一方で「ロダルテ(RODARTE)」がNYFWに戻ってきたという動きもある。また「ナイキ(NIKE)」が東京五輪に向けた新作発表会を開催して、急逝したコービー・ブライアントにトリビュートした場面もあった。

ブランケットやケープで柔らかく包むテーラードルックに注目

(写真左から)マイケル・コース、トリー バーチ、マーク ジェイコブス

 

 今季もっとも多く見られたのが、ブランケット、ケープ、ポンチョといったアウターだ。そうした柔らかに包みこむ秋冬のルックは、テーラードされたスーツやジャケットが目立ち、きれいなクラシックへと向かう流れを感じる。

ロンシャン(LONGCHAMP)

 「ロンシャン」はNYで4回目となるランウェイを、ハドソンコモンズの55階にある会場で打った。

 

 クリエイティブ・ディレクター、ソフィー・ドゥラフォンテーヌが今季、インスピレーション源としたのは70年代、ファッションアイコンであったカトリーヌ・ドヌーヴやロミー・シュナイダーのスタイルだという。その言葉通り、エフォートレスでシックなアンサンブルが登場した。シアリングの襟がついたボマージャケットに、膝丈のプリントスカートや、ライトウールに刺繍がほどこされた黒のシアードレスと組みあわせる。レザーのバミューダショーツには、模様をあしらったセーターやプリントのブラウスを合わせ、幾何学模様を施したニットにジャンパースカートを合わせるなど、こなれたアンサンブルを表現。テーラードジャケットに、薄く透けるスカートなどの軽やかでフェミニンなアイテムが加味される。

 

 色彩はブラウンを主調に、カーキ、モスグリーン、テラコッタなどの豊かなオータムカラーが展開される。赤いパテントレザーのロングコートや、レッドとレオパード柄を合わせたケープが目を奪った。またグリーン、イエロー、シルバーなどの明るいカラーで彩ったニーハイブーツはつま先革にボールとチェーンがついたデザインで、キーピースとなっていた。

トリー バーチ(Tory Burch)

 「トリーバーチ」は今季、オークションハウスであるサザビーズをランウェイの会場に選んだ。今回はアーティストのフランセスカ・ディマティオの彫刻作品がインスピレーション源となり、会場にはダイナミックな11作品が並べられた。

 

 ファーストルックは、小花模様のジャカード・パンツスーツで、立ち襟にくるみボタンが並び、パフスリーブの肩がかわいらしい。そこにオーバーニーレングスの花柄ブーツを合わせてみせた。テーラードされたスーツや、乗馬服のようなシャープなスタイルと、柔らかなスモックを施されたドレスや、ふんわりしたニットがやさしいフェミニンさを醸し出す。

 

 パフスリーブやティアードスカートは、ビクトリア調のロマンチックさを感じさせる。ディマティオのデザインによるプリントが施されたドレスやジャケットは、陶器を利用してアートを製作するアーティストらしく、中国やイギリスの陶器を彷彿させる。プリントと無地の生地をバイヤスカットしたパネルドレスには、ビーズの飾りが施されていて、クラシックな柄をモダンに再構築してみせた。

マイケル・コース(MICHAEL KORS)

 「マイケル・コース」は今季のテーマに“コージー・グラマー”を掲げ、カントリーサイドにある別荘で過ごすリラックスした雰囲気と、都会の洗練を合わせた世界観を打ち出した。

 

 ファーストルックからメルトンのケープコートが登場し、もっとも頻繁に表れたのはブランケット、ケープ、ポンチョといった包むアイテムだ。ブランケットはアウターのみならず、スカートにもドレスにも応用。カシミアのチャンキーなニットや、ダブルフェイスのカシミアアンゴラを使うなど、素材の贅沢さが際だつ。足元は、カントリーでの散歩を思わせるように、チェーンをポイントにしたブーツで決めている。

 

 ニットはややリラックスしたシルエットで、そこにフリンジのスカートをスタイリングしてみせた。シャープなテーラリングのスーツには、スラウチ−なパンツ、あるいは細身のライディングパンツを合わせる。ムートンやカウハイドといったカントリーな趣のアイテムも見られた。イヴニングドレスは、ガンメタルカラーの細かくプリーツ加工を施した生地に、手縫いで極小のスパンコールを縫いつけて、エレガントなラグジュリーを表現した。

 

 カラーパレットはベージュやグレーなどのニュートラルで、差し色にはオレンジやマスタードイエローのシャープな色合いが挟まれる。

 

 今回はよりサステナブルにも注意を払い、リサイクルされた素材も活用。ファストファッションではなく、長く使える服を提案した。またショーで使用した木材は、ショー終了後、ニューヨーク最大の再生利用センターへ寄付された。

セオリー(Theory)

 「セオリー」はメンズ、ウィメンズ合同のプレゼンテーションを行い、円形のステージにモデルが立つ形式で、コレクションを発表した。

 

 メンズ、ウィメンズともに、主力はテーラードスーツだが、サッシュベルトをしたジャケットとパンツや、ピンクのスラウチーなパンツスーツなど、ややリラックスしたソフトな雰囲気が立ちのぼる。色彩パレットもニュートラルが中心ながら、ブルー、モスグリーン、ピンクなどのソフトカラーが加味された。

 

 ウィメンズのレザーのパンツセットアップや、エナメルコーティングした革ジャケットなど、ビジネスからオフビジネスのシーンにスムーズにつながるような提案がされた。

マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)

 「マーク ジェイコブス」は最終日のクロージングに、パーク・アヴェニュー・アーモリーでコレクションを発表した。会場に入ると、舞台を前にして、カフェテーブルが40数卓配置されていて、それぞれに4脚ほどの椅子が配置されている。

 

 今季のテーマは“カオスとフォーム”。マーク自身の人生とキャリアを参照したものであり、アイコンやヒーローにインスパイアされたものだという。前回と打って変わって、今季は「抑制」「質のよい生地」「個性を忘れることなくシンプルさとタイムレスの価値を高めること」にフォーカスしている。

 

 ステージは、モダンダンスカンパニーを率いる振り付け師、キャロル・アーミテージが振り付けを担当。冒頭、キャロルが何かに怒っている様子で舞台の暗闇から現れる。それから54人のダンサーがダンスを踊り、その間を計88名のモデルたちがキャットウォークしていく。モデルの年齢は多岐にわたり、マイリー・サイラスもカメオ出演した。キャロルの1981年の作品である「ドラスティック・クラシシズム」は、このショーのエッセンスともなっている。

 オープンニングは60年代調が色濃い。ジャッキー・オナシスを彷彿させる、丸みを帯びたシルエットのセットアップスーツがいくつも現れる。色彩はイエロー、ピンク、ブルーと、甘いパステルカラーだ。足元は同色のタイツとパンプスが一体化したアイテムをスタイリング。カナリアイエローのフェイクファーのスーツとピルボックスハットのスタイリングがポップだ。シンプルなエンパイアウエストのドレスと同色のコート、メンズライクにテーラードジャケットにハーフ丈パンツのスーツといったミニマルなスタイルは、90年代を感じさせる。

 一方、バラの花の形にしたシルクをつなぎあわせた凝った作りのドレスが目を引く。白い襟を見せたクルーネックのセーターにストレートのパンツの組み合わせや、タータンチェックのジャンプスーツ、スパンコールのドレスといったピースは、マークのヒット作をアップデイトしたようだ。イヴニングドレスは、メタリックな生地で立体的なループをたくさん作ったドレスや、透けたレースのロングドレス、フリルで立体的な球体のように見えるケープなどがフィナーレを彩った。クラシックでありながら、同時に過激である世界観を提示してみせた。

 

 

取材・文:黒部エリ(Text by Eri Kurobe)

「ニューヨークコレクション」

 

 

 

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