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2020.03.02
【2020秋冬ミラノコレ ハイライト4】新たな才能や奇才が手がける注目のショー
(写真左から)エミリオ・プッチ、モスキーノ、トッズ
今シーズンのミラノコレクションでは、新クリエイティブ・ディレクターやゲストデザイナーを迎えたショーなどが注目された。また、毎回話題となる奇才ジェレミー・スコットによる「モスキーノ(MOSCHINO)」もそのフォトジェニックさによりSNSなどでも話題を呼んだ。
トッズ(TOD’S)
新クリエイティブ・ディレクター、ヴァルター・キアッポーニによるデビューショーを発表した「トッズ」。コレクションテーマを“ITALIAN ESSENCE”とし、彼らしいトッズのイタリアンエレガンスを打ち出した。それはフェミニンさをマスキュリンなデザインの中に浮かび上がらせ、「トッズ」の象徴であるレザーも、これまでは全身に使うことが多かったのを、布帛を混ぜながらリアルなスタイルで提案する。
マスキュリンな要素はテーラードジャケットやチェスターコート、ビッグシルエットのMA-1やボリューミーなパデッドジャケット、そして太うねのコーデュロイやグレンチェック、ツィードなどメンズライクな素材など様々なところにみられるが、ビスチェやマイクロミニドレスやショーツなどのフェミニンを象徴するアイテムや、細いベルトでウエストマークしたり、コートをドレスのように着るコーディネートでみせることで女性らしさやセクシーさが盛り込まれる。
そのあたりのパンチの効いたテイストは、彼が愛する70年代後半がインスピレーションになっているが、イタリアを基本テーマとするトッズにおいては、世界的に元気だったその時代についてはあくまでイタリアらしい上品さを入れながら描いている様子。ブランドのDNAを十分リスペクトしつつも自分センスを巧みに入れ込んだキアッポーニ。ドラスティックに変えたわけではないのに俄然よくなったこのコレクションで、その才能を見せつけた。
モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)
「モンクレール ジーニアス」はサードエディションを発表。「ONE HOUSE, DIFFERENT VOICES(1つのメゾン、異なるボイス)」と謳い、12のアーティストがそれぞれのコンセプトで作ったコレクションをインスタレーション形式で見せる。ドットとスパイクを装飾に使用し、マットとシャイニーのコントラストでカントリーサイドと都会的な装いを融合した「1モンクレール JW アンダーソン(1 MONCLER JW ANDERSON)」。
ヴェロニカ・レオーニがウィメンズを、セルジオ・ザンボンがメンズを担当した「2 モンクレール1952(2 MONCLER 1952)」、真っ白な世界をモデルが壁面を歩くようなインパクトのあるインスタレーションでマウンテンギアとしての機能性を強調した「3 モンクレール グルノーブル – サンドロ・マンドリーノ(3 MONCLER GRENOBLE – SANDRO MANDRINO)」。
そしてエンブロイダリー、エンボス、プリントなどで表現したフラワーモチーフやチュールのフリル使いでロマンティックなコレクションとミステリアスなムービーが流れる劇場風のインスタレーションが対照的だった「4 モンクレール シモーン・ロシャ(4 MONCLER SIMONE ROCHA)」。
さらにトランスペアレンシー、セキュリティ、プロテクションの概念に焦点をあて、実用性を見つめ直した「5 モンクレール クレイグ・グリーン(5 MONCLER CRAIG GREEN)」、ガーメントダイの研究を進化させ、濁らせたカラーパレットとブラックを調和、テクニカルなオーガニックファブリックでマットとシャイニーを表現した「6 モンクレール 1017 アリックス 9SM(6 MONCLER 1017 ALYX 9SM)」。
またLewis Leather、ポケモンやKool & the Gang のプリント、コンバースとのコラボレーションなどユニークな取り組みを行った「7 モンクレール フラグメント ヒロシ・フジワラ(7 MONCLER FRAGMENT HIROSHI FUJIWARA)」、60 年代と宇宙時代のダイナミックな感覚を融合したという「8 モンクレール リチャード・クイン(8 MONCLER RICHARD QUINN)」。
そこに犬用コレクション、リモワとのコラボ、バイクコレクションが加わる。また会場外のバスでは「モンクレール+リック・オウエンス(MONCLER+RICK OWENS)」も発表された。
エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)
今後はシーズンごとにゲストデザイナーによるコレクションを発表する方針の「エミリオ・プッチ」。今回はクリステル・コーシェを迎え、ジェンダーレス感とストリートテイストの漂うコレクションを発表した。
1957年にエミリオ・プッチがデザインしたパリオコレクションのジオメトリックなパターンはコーシェがデザインするモダンなテイストにマッチ。ルーパとセルヴァのディオプリントもそれに花を添える。フーディやボクサーショーツ、ランジェリードレス、ジャンプスーツ、またはブラックデニムやボディとコーディネートするなど意外なアイテムが続々登場。
現在は教会としての機能は持たないサン・パオロ・コンヴェルソという16世紀の旧教会の荘厳な雰囲気とモダンなストリートテイストがコントラストをなすパンチの効いたコレクションで、「エミリオ・プッチ」はまた新しいステージの幕を開けた。
モスキーノ(MOSCHINO)
いつもユニークかつアイロニーのあるテーマを掲げる「モスキーノ」。今回のコレクションでクリエイティブ・ディレクター、ジェレミー・スコットがイメージしたのは、“アニメのマリー・アントワネット”。豪華絢爛の世界に生きたフランス女王が現代にやってきて、コスプレをしているようなイメージだそう。
ライダーズジャケットやトレンチからデニムなどの意外なマッチングも含めた様々なスタイルがフープスカートで再現されているのが目を引く。またはバルーンスカートやパニエのはいったドレス、燕尾服やトレーン付きのジャケットなど中世の宮廷衣装のようなアイテムが登場。ディテールには大きなコサージュやフラワーモチーフ、パフスリーブやフリル、リボン使いなどが各所に使われる。
そしてケーキが描かれたインビテーションにも連動する、まさにケーキそのもののようなドレスも後半に登場。カラーパレットもケーキのアイシングのようなパステルカラーが多用されている。ケーキと言えば、ホイップクリームのように結い上げられたヘアのモデル達も印象的だ。もうひとつ目を引くのは日本のアニメに登場するお姫様のようなプリント。ジェレミーはかつて、日本と日本の漫画が大好きで、観光地以外のマイナーな場所も積極的に訪れていると言っていたが、そんな経験も盛り込まれているのかも。
ヴェルサイユ宮殿から東京のストリート?という全く関連性のないタイムトリップで、今回もかなり飛ばしたショーだったが、そんな中にもトレンド的要素がきちんと押さえられているのはお見事。
取材・文:田中美貴
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