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2020.02.28
【2020秋冬ミラノコレ ハイライト3】センシャル、ロマンチック、ミニマル、ピュアネス・・・ミラノの才能が描く女性像
(写真左から)フェンディ、ドルチェ&ガッバーナ、ジル・サンダー
「マスキュリンとフェミニンの融合」は新たな女性像を描くためのアプローチ。女性性をどのように捉えるかは各メゾン様々であるが、マスキュリン&フェミニンの他に、ジェネラルトレンドであるピュアネス、ミニマルやロマンチック、ミラノ本来の魅力であるセンシャル、などがキーワードとなりそうだ。またトレンド追随から脱却し、タイムレスなラグジュアリーを提案するブランドやデザイナーも増えている。
「マスキュリンとフェミニンの融合」がメイントレンド
フェンディ(FENDI)
今シーズンの「フェンディ」のコレクションでは女性らしい曲線美を大胆に強調することでパワフルさを打ち出す「ソフトパワー」がベースに。肉体美をボリューミーに見せつつ、大胆なスリットを入れたり、ミリタリー、または制服的な強くシャープなイメージも加えたり。例えばドローショルダーで大きくボリュームを強調した袖のディテールが多くのアイテムに登場し、ウエスト部分を絞ったシェイプや、ニットやジャケットでも細いベルトでウエストマークするなどして構築的なラインを作る。ループニットやボンデッドレザーなどボリュームを強調するような素材も多用される。
それを印象付けるのが、カーヴィモデルやカレン・エルソンなど往年のスーパーモデルたちの起用。ダイバーシティというのは少々言い過ぎかもしれないが、これまで登場してきたような華奢なモデル達が着たのでは説得力がでない、どんな人でも美しく着られるフェンディ、という新しい提案なのかもしれない。
もちろん往年のカール・ラガーフェルドによる「フェンディ」が素晴らしかったことに異を唱える人はいないだろうが、今回のコレクションに関しては女性であるシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディが作ったからこそ生まれた、独特の女らしさがあるような気がする。
エンポリオ・アルマーニ(EMPORIO ARMANI)
今シーズンの「エンポリオ・アルマーニ」はマスキュリンとフェミニンが両極で交差するコレクション。テーラードスーツやブルゾン、ワイドシルエットなトラウザー、またはヘリンボーンやグレンチェックなどメンズ服で使われる素材、そしてタキシードやアスコットタイ、カフスなどメンズのイブニングウェアの要素もふんだんに入っているかと思えば、その一方ではレイヤードフリルが多用され、大きなフラワーモチーフやリボンのついたドレスやミニスカート、レースやフェザー、ビジューやラメのキラキラ素材など、ロマンティックでフェミニンな要素も。
またショーの冒頭では、1月のメンズコレクションに続き、再生ウール、オーガニックコットン、リサイクルナイロンなど、地球環境にやさしい素材のみを使用したカプセルコレクション「R-EA」が発表されたことも付記したい。
マックスマ―ラ(MAXMARA)
今回の「マックスマーラ」がイメージするのは冬の大海原、そして大海を航海する冒険者。過去のコレクションでも「マックスマーラ」が海をテーマにマリンルックを大々的に打ち出したことはあったが、今回はどちらかと言うとそれは隠れテーマ。マリンの象徴であるボーダーモチーフがメンズライクなスーツやコートドレス、テディベアコートやポンチョなどに登場するが、ボーダー幅の間隔が不均等だったり、かなり太めだったりとひねりを入れた感じ。またはロープ風のモチーフが、ベルトやバッグなどのディテールにさりげなく使われている。
それよりもロングコートやキャバン、ケープやあるいはトグルやタッセルが付いたダッフルコートなど重役感漂うどっしりとしたアウターやナイロン加工のボリューミーなパッテッドアウターなど冒険者的なアイテムが象徴的。
その一方でテーラード風のスーツやコートまたはMA-1などミリタリーアイテムの袖の部分だけレイヤードフリルを施したディテールや、メンズライクなジャケットやナイロンパーカにフリルやプリーツスカートをコーディネートするなど、マスキュリンとフェミニンのミックスチャーも効いている。
テーマとして強い女性像を掲げつつ、上品さやフェミニンさを入れ込むマックスマーラらしい上手さが、今シーズンもぶれることなく発揮されている。
サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)
クリエイティブ・ディレクターのポール・アンドリューが今シーズンの「サルヴァトーレ フェラガモ」のコレクションで訴えたかったのは、現代の女性の多様性や柔軟性。イギリスの小説家、ヴァージニア・ウルフやアメリカ合衆国の歌手でピアニスト、ニーナ・シモンからアメリカ合衆国下院議長ナンシー・ペロシやミシェル・オバマにいたるまで、現代を象徴し活躍する女性たちを考察することで様々なタイプの女性らしさを自由に表現。
そこには登場するのはテーラード風ワイドピークトラペルのジャケットやチェックのスーツ、マキシキャメルコート、ショルダーを強調したレザーコートやライダースジャケットなどのマスキュリンなイメージ。またはフルヴィア・フェラガモがインスピレーション源として集めていた植物の画集をモチーフにしたニットやシャツ、または透け素材やフリンジのディテールなどフェミニンで優しいイメージ。そしてキュロットやレザーのワークパンツ、キルティング素材のライナージャケットなどの実用的なイメージ。
老舗ブランドの高級感と品は漂わせつつ、モダンさやエネルギッシュな感じが前面にでたコレクションとなった。
エルマンノ シェルヴィーノ(Ermanno Scervino)
マスキュリンとフェミニンのミックスと言うのは今シーズンの流れだが、それをバランスよく上品に仕上げた「エルマンノ シェルヴィーノ」。チェスターコートはウエストをシェイプさせ、部分的な刺繍やフリンジをあしらってフェミニンさをプラス。ボリューミーなダウンジャケットにはフラワーモチーフのプリントがなされたり、煌びやかなラメスカートにはローゲージニットを合わせたりと、スポーティアイテムに品や艶やかさを添える。
一方ランジェリードレスがブラックレザーで仕上げられていたり、透け素材はハイネックシャツになっていたり、レースのドレスはグレンチェックのメンズライクなコートとコーディネーションされるなど、セクシー過ぎないための引き算が。
職人技をふんだんに活かし、ほどよくクチュール感が漂うシェルヴィーノらしいうまさが活きていた。
ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)
今シーズンの「ファビアナ フィリッピ」は自然と都会の二面性がテーマ。完全主義と自然体でいることが調和される。メンズライクなテーラースタイルやチェスターコートなどが登場する一方でチュールスカートやシフォンドレス、ファー効果のあるアウターなどのフェミニンなアイテムも盛りだくさんで、バリエーションに溢れたコレクションを展開する。