PICK UP
2020.02.28
時代が求める「タイムレス」「ピュアネス」「ミニマル」
ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)
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「ジョルジオ アルマーニ」は、新型コロナウイルスの影響から、ショーを無観客で開催。23日に同ウイルスの感染によってイタリアで初めての死者が出たことを受けて下した苦渋の決断だ。ショーは公式ウェブサイトとインスタグラム、フェイスブックから発信された。
コレクションのテーマは“VELVET NOTES”。ジャケット、パンツ、またはパイピングやリボンなどのディテールとして黒のベルベット素材が全体に登場する。それが花と花びらの抽象的なプリントで出来たカモフラージュ柄や、ピンク、ティール、パールグレーとコーディネートがなされる。ニッカボッカパンツをブーツインしたり、裾の部分がゴム仕様がなされたスカートやコクーン袖、ビショップスリーブなどでボリュームの遊びも。
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ショーのエンディングでは、中国から強いインスピレーションを受けた「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVÉ)」の2009 年と2019 年のコレクションから、12ルックが登場。ジョルジオ・アルマーニが美学と文化の両面で特別な思いをもつ中国への愛のメッセージを送った。
ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)
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メンズコレクションでもテーラー、羊飼い、ニット職人、パスタ職人、陶芸家、靴職人等のイタリアの伝統的な職業からのインスピレーションで、ブランドの王道的なコレクションを発表した「ドルチェ&ガッバーナ」。ウィメンズでもその流れを汲み、イタリア語でハンドメイドを意味する“Fatto a Mano”というテーマを掲げた。メンズでは伝統的職業の作業着からのインピレーションや「クラフトマンシップ」にまつわるフレーズをあしらった割と具体的なアイテムも登場したが、ウィメンズはもうちょっと間接的な方向でその伝統的、古典的な部分を提案する。
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そこで焦点があてられたのがニット。ローゲージ、ハイゲージ、クロシェ編み、クロスステッチ、ラッシェル編みと言った様々な技法を使った手編み風のニットが満載。ディテールにはリボンやエンボワリー、ボリュームもオーバーなものからボディコンシャスなものまで様々に展開される。そこにタイドアップしたテーラードスタイルやスリーピース、タキシードなどのメンズライクなスタイルだったり、ランジェリーやコルセット、レースのドレスなどセクシーなスタイルだったり、またはレイヤードフリルやプリーツ使いのロマンティックなスタイルもミックスされる。
主役となるのはブラック。一部に白やグレー、ベージュ、差し色の赤が使われるが、ほとんどのピースが「ドルチェ&ガッバーナ」になじみの深い黒、という潔い色選びだ。
ピンポイントで絞り込んだテーマの下でバリエーションを作るにはデザイナーの手腕が問われるが、「ドルチェ&ガッバーナ」はこのチャレンジングな課題を見事にクリアした。
ジル・サンダー(JIL SANDER)
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今回は元火力発電所で、今後はインダストリアルデザイン関連のエキジビションホールとして使われる予定の建物をショー会場とした「ジル・サンダー」。客席には色々なヴィンテージチェアが置かれ、モデルもランウェイを一周して席に着く、と言う演出。
このように、歩いていたモデル達が全員椅子に座ってからまた一斉に立ち上がって退場・・・という“動→静→動”の流れは、コレクションのテーマでもある。相対する要素のミックスチャーテイストはクリエイティブ・ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤーが得意とするところだが、これは今回、特に「静と動」という形で表現される。イブニングドレスやロングコートなど、長めのシルエットを前面に出し、フレアやプリーツ、フリンジなどで流れるような動きをだす。ミニマルなデザインに、ギャザーやプリーツでボリュームを持たせた袖や裾のディテールも対照的だ。
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もちろんマスキュリンとフェミニンのミックスも健在。テーラード風ジャケットやコートを細めのベルトでハイウエストマークしたり、フレアやレイヤードフリルのスカートとコーディネ
ートしたり。または透け感のある素材や「ジル・サンダー」にはちょっと珍しい細身シルエットのフェミニンなアイテムに大きなボタンやパッチポケット、パイピングやエポーレットなどミリタリーやワークのテイストが使われている。一方で、これまでもよく見られた柔道着のようなテイストやエスニック風刺繍、マントやケープなど民族衣装のようなイメージも健在だ。
今回は構築的なシルエットよりも素材で動きを表し、着ることで美しさがわかる洋服を強くアピールしたルーシー&ルーク・メイヤー。回を重ねるごとにそのクリエーションはますます厚みを増す。
アニオナ(AGNONA)
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今シーズンは、20年ぶりとなるメンズコレクションを復活させて同時に発表し、混合ショーの形式をとった「アニオナ」。コレクションのインスピレーションはフリーズ(ロンドンのアートフェア)で見た、ジョーダン・ウォルフソンの作品に描かれていたジョン・F・ケネディ Jrと妻キャロリン・ベッセット・ケネディの作品。洗練されたアップタウンスタイルの中に最先端のデザインを活かしたキャロリンのスタイル、90年代半ばのエレガンスとミニマリズムをヒントにした。
アニオナは上質な素材を武器に、大きくトレンドには左右されないブランドではあるが、今シーズンはトレンドともいえるウエストマークやウエストシェイプのフォルムを多用しているのが印象的。
シアリングとスエードのダブルフェイスのピーコート、ダブルコットンギャバジンのトレンチコート、テディコートやショールカラーのキャメルコートなどアウター類が充実。そこにコクーンシェイプのデニムやワイドパンツを合わせてリラックスしたコーディネートを展開する。一方で、ミニマルなニットドレスやセットアップはスリムにフィットさせている。
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メンズコレクションではアイビールックのインスピレーションで、アメリカンプレッピーをヨーロッパの洗練さを入れて表現。テーラードテイストのジャケットやコートにタートルを合わせることでこちらもリラックス感が溢れる。
ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)
「ブルネロ・クチネリ」は今回もプレゼンテーション形式でコレクションを発表。テーマは“POISED FOR THE TIMES”。これは時代を先取る、というような意味だが、その観点からブルネロ・クチネリが考える“時代”の流れをファッションに落とし込んだ。それは余分なものを排除していこうというエコサステナブルな傾向の現代において、ミニマルでタイムレスなデザインを厳選し上質なものを長く使うことこそがその答えになるのではないかという視点から生まれたコレクションだ。
ゆえにレイヤードや装飾は少なめでミニマルなラインが基調。またタイムレスを象徴するテーラードのメンズスーツの要素から乗馬靴や英国調のストライプやチェックなどを多用。そんな中でブラウスの前を大きめに開けるセンシュアルなコーディネートやメタリック使いによる華やかさ、またはボウブラウスなど上品なものから、ループニットなどのソフトなイメージまで、女性らしいテイストを差し込んでいる
ミラノならではの魅力「センシャルな女性像」
ヴェルサーチェ(VERSACE)
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メンズとウィメンズの混合ショーを行うブランドは減る傾向にあるところを、あえてと言う感じで混合ショーを発表した「ヴェルサーチェ」。その理由としてドナテラ・ヴェルサーチェは「男性と女性のどちらも平等にパワフルな存在であり、ジェンダーと関係なく、セクシュアルなエネルギーやマインドが放つ別の類の自信から生まれるパワーが肝心」と述べている。そこにはどうやら、メンズウェアは男らしく、ウィメンズウェアは女らしく、という考えがあったようだ。
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今回のコレクションでは、ウィメンズとメンズは色やパターン、素材などにおいては基本的に呼応しているが、ウィメンズにおいては、スカート丈は全体的にかなり短めで、裂け目の入ったミニドレスやベアトップドレスが多く登場しセンシュアルな雰囲気を醸し出す。またハリのある素材やボンディング加工された生地を重ね使いによる構築的なフォルムでウエストはかなりシェイプされ、曲線的な女性らしいラインを強調する。カジュアルアイテムさえもデニムのマイクロミニスカートをパッチワークしたり、パーカーはマイクロ丈やダブルジップの下の部分を空けておへそを見せるコーディネートで、二度見してしまうようなセクシーなディテールを入れ込んでいる。
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一方メンズはトラックスーツ、メッシュやナイロン素材のアイテムが多く登場し、スポーティさを前面に出している。テーラードジャケットはヴェルサーチェらしいショルダーを強調しウエストをシェイプした男性的なフォルムだ。
「ヴェルサーチェ」らしくエネルギーとパワーにあふれ、独自の路線を行くコレクション。会場セットではショーの開始前、席に座っている観客たちがスクリーンに映し出される仕掛けがなされていたが、それは主役は自分、ということなのかも。
エリザベッタ・フランキ(ELISABETTA FRANCHI)
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今シーズンの「エリザベッタ・フランキ」のテーマは“The Color of Women”。女性らしさを表す象徴的な色であり、女性の魅力や官能性をアピールする最大の武器としてピンクを主役にした。登場するのはサーモンピンクやアプリコット、ヌードカラー、そしてキャメルやブラウン、白などにまで広がるが、いずれも優しいニュアンスカラーだ。それをシャイニー素材からマットでソリッドな素材まで、またはラメやスパンコールなどのきらきらした装飾やチュールなどの透け素材など様々なマテリアルで表現する。
例年は様々なスタイルの要素が盛り込まれ、比較的独自の路線で行っていたエリザベッタ・フランキだが、今回はフリンジやレイヤードフリルやプリーツ、ジャケットとフェミニンなスカートのコーディネートなど、今シーズンらしいトレンド要素が満載されていた。
取材・文:田中美貴
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