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2016.03.09

ヴィクトリアズシークレットのシェアを狙う新進企業「Adore Me 」

 IBIS WORLD社の調べによると、ヴィクトリアズシークレット(以下VS)社は米国$9b(90億ドル)と言われるランジェリー市場のうち、62%を占めているそうですが、最近では水着の売り上げが前年比10%増、数年前スタートしたばかりのスポーツウエアのラインが$250M(2億5,000万ドル)に達するなど、ランジェリー以外のカテゴリーの好調が伝えられています。そんな中、VS社を脅かす新進のランジェリー企業が登場しているのですが、その中でも、2012年に創業したNYベースのオンラインリテイラー「Adore Me(アドア ミー)」は、インク誌が選出する「米国の急成長中の非公開企業5000社」で、小売り部門で2位、全体でも14位に選出。ランジェリーに特化したオンラインストアとして大注目されています。2014の年商は$16.2M(1,620万ドル)、2015年には$43M(4,300万ドル)へと急成長した理由と最近の動きをレポートしたいと思います。

「Adore Me」の基本コンセプト

 「ザラ」や「H&M」のようにランジェリーのファストファッション化をコンセプトに、値ごろ感のある豊富なデザインを提供。プチからカービーまで、豊富なサイズセレクションをカバー。毎月、値ごろ感のある新コレクションが、30~40型登場します。平均のブラとパンティーのセットは、39.95ドル。サイズセレクションは、30AA~46DD。ちなみにVSでは、上下セット平均が55ドル以上、サイズ展開は、40まで展開している商品もありますが、平均は32A~38DDD。問題となっているプラスサイズ(ぽっちゃりさん市場)の商品や、逆にスリム女性の為の商品が不足しています。

adoreme.com よりパーソナライズしたMy Showroom

スーパー・パーソナライズ・Eコマース

 時代はパーソナライズがキーワードとなっていますが、「Adore Me」のオンラインでは、8種類の質問に答え、最後のページ「スタイルプロファイル」で普段身につけているカップサイズや年齢等を選択すると、「My Showroom」という、それぞれの消費者の好みにあったランジェリースタイルが提案されたページに行き着きます。商品をクリックしてみると、すでに自分のサイズが選択されているので、サイズ切れ商品を選んでしまったり、好みでないデザインの商品まで目にする無駄がなく、自分専用のEコマースが出来上がっているのが、効率的。

デジタル世代への戦略

 大きな宣伝費はかけていませんが、インターネットに精通したミレニアル世代に向け、インスタグラム、ピンタレスト、スマートフォンアプリはもちろん、YouTubeやHulu内で宣伝動画を流しています。

45分間・完全アポイント制のカウンセリングストア

adoreme の質問リスト、最後の「スタイルプロファイル」

 「ワービーパーカー」「ボノボノ」「ギルト」同様、トレンドのEコマースとして、オンラインのみの販売でしたが、今年4月5日に初の小売り店鋪をニューヨークにオープンする予定。自分のサイズは分かっていても、実際に正しくフィットするかどうか自信のない女性は多いと思いますが、この店舗ではランジェリーのエキスパートによるカウンセリングが45分間行われ、オンライン販売では行き届かなかった、それぞれの消費者にパーフェクトフィットする商品のアドバイスが行われるのです。商品の購入は店舗ではなく、ipadで行われ、お客様の自宅に送られます。このカウンセリングは完全に無料、自分にあうサイズが分かれば、次回からはオンラインでの購入も迅速化へと繋がります。リアル店舗オープンに先駆け、マンハッタンホテルでのポップアップストアをアナウンスしたところ、3日間で50件のアポイントとかなりの好評だったようです。

ヴィクトリアズシークレットが出来ない盲点をカバー

▼幅広いサイズ展開
 米国で大きな課題となっているプラスサイズの導入は、VSのシェアを奪う大きな引き金となりそう。「Plus Size」のセクションを見てみると、大きなサイズの売り切れが目立ち、よく売れていることが伺えます。ビッグサイズ需要に隠れて、あまりメディアに出てきませんが、プチサイズもまた、ニッチ市場の1つ。「アンソロポロジー」などの専門店では、ビッグサイズは展開していませんが、数年前からプチサイズのコーナーを設置しています。

 

▼幅広い年齢層
 若々しくセクシーな女性モデルを起用しているVSに対し、「Adore Me」では自分の好みを種分けする質問の最後のページ「Style Profile」で、対象年齢が18歳から65歳+となっており、リアル店舗ではあり得ないターゲット層。

 

▼リアル店舗での不満を解消
 カラフルでキュートなディスプレイに目を奪われるリアル店舗があっても、自分に必要な商品は限られており、実際にその中から自分の好みやサイズにフィットする商品を探すのは困難。VS社の店員さんも、トップとアンダーのサイズを図るサービスが精一杯ではないでしょうか。質問により、好みを絞り込んで行くビジネススタイルは、靴やスポーツウエアの定期購入サービスに類似した手法と思えます。

 

 実際、同社のVIP会員向けのサービスには、定期購入のオプションもあり、会員登録解除や返金が受けにくい、などのクレームもあり、改善しつつ進めているようです。売り上げ規模も、まだまだVS社と比較になりませんが、ファッション業界がこれだけ注目するこの企業の最大の特徴は、商品の価格やデザインの他に、オンラインのパーソナライズドに始まる圧倒的な「買い物のしやすさ」があると思います。

 

  ヴィクトリアズシークレットは、スーパーモデルによる圧倒的なブランデイング力があるものの、ランジェリーの買い物がしやすいかと言われれば、そうでもありません。種類、色、サイズ、好みと、個人にあった買い物のしやすさを、Eコマースや実店舗に反映して行くことは、競合店にとって課題となるのではないでしょうか。


 

 

マックスリー・コーポレーション
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