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2015.06.17
年商444億円達成 3年目「グランフロント大阪」のビジョン ルクア イーレ開業、インバウンドも追い風に
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol.18
3年目に突入した「グランフロント大阪」
2013年4月26日に開業した大阪・梅田の複合商業施設「グランフロント大阪」が3年目に突入した。2年目(14年4月1日~15年3月31日)の売上高は444億円だった。初年度は436億円(2013年4月26日~2014年3月末まで)の約11カ月。物販・飲食の合計。当初目標は400億円)だった。同期間の比較ができないため参考数値になるが、オープン景気のない2年目は健闘したと言えるのではないか。2年目の総括と、3年目に向けた抱負を取材した。
4月6日に入館者数が累計1億人を突破
今年4月6日、入館者数の累計が1億人を突破した。1日の平均来館者数を10万人と想定していたそうで、単純に1年間で3,650万人が来館すると計算すると、前倒しで達成したことになる。初年度は広域からの観光客も多く、売上推移などはイレギュラーな動きも多かったという。2年目はオフィスワーカーも増え始め、売り上げも安定していったようだ。1年目の来館者数は5,300万人(13年4月26日~14年4月25日までの1年間)だった。2年目は4,930万人(14年4月26日~15年4月25日までの1年間)で、高水準を保った。
2年目の上期(2014年)は、オープン景気の反動減もありマイナスの推移だった。下期に入った10月以降はプラスに転じたという。「どのポイントで昨年対比を超えるかがポイントだった」(阪急阪神ビルマネジメント PM事業本部 うめきた営業部、山下正人 SC運営事務所 副支配人 兼 うめきた営業部 部長)というが、2年目の下期からという“見立て”は想定通りだったようだ。同グループの商業施設「阪急西宮ガーデンズ」(阪急電鉄沿線の西宮駅と連絡しているショッピングモール)も同様に、開業から1年半を経過して昨年対比を超えたという。2年目の売上推移を見る上で、この1年半という期間は1つの指標になりそうだ。
ちなみに「グランフロント大阪」はこのほど、日本ショッピングセンター協会が主催する第6回日本SC大賞のニューフェイス賞を受賞した。こうした実績が評価された結果であることは想像に難くない。
世界観を持ったテナントを中心に好調を持続
順調な集客を続けている。写真は南館の2階入り口付近
好調なテナントは、ブランドの世界観をしっかり持ったセレクトショップが多い。関西初のショップは優劣がはっきり出たという。初出店や新業態よりも、既存の知名度が高いショップの、世界観を重視した売り場が支持を集めたようである。ファッション系の主な好調テナントは「クロムハーツ」「ロンハーマン」「スタニングルアー」「ドゥーズィエム クラス」「エディション」「鎌倉シャツ」「モンベル」など。「着実に顧客を開拓できているテナント」(山下 副支配人)が健闘している。
客単価は物販が約4,000円、飲食が約2,000円で大きな変化はないようだ。客層は30-40代の女性が最も多いというが、時間消費型の商業施設であるため、老若男女、かなり幅広い客層を取り込めていることは間違いない。滞在時間は調査していないが、かなり長いことは容易に想像がつく。
好調なテナントはセールの時も好調だ。定価品、プロパー商戦も良いし、セールも良い、というのが共通した傾向だという。「マークダウンする時期とプロパーで売っていく時期にメリハリを付けること」(山下 副支配人)が今後の課題である。「梅田で必ず利用してもらえる施設になること」(同)も3年目の目標である。
「ルクア イーレ」の相乗効果も
3年目の推移は、前年実績を超えているという。インバウンド需要の貢献も少なくない。免税対応の店舗も70を超えた(開業時は15)。4月2日に開業した「ルクア イーレ」の相乗効果も大きい。旧JR大阪三越伊勢丹を居抜きで全面改装した商業施設で、「グランフロント大阪」とはペデストリアンデッキ(歩行者通路)で連絡している。両施設の入り口までは徒歩で1分程度の距離にある。…というか、すぐそこに見えているほどの至近距離にある。
興味深いのは、グランフロント大阪の来館のピーク時間が後ろへずれたこと。物販も飲食店も同様らしく、「ルクア イーレ」へ立ち寄ったお客さんがその後、グランフロント大阪へ寄って帰る流れが出来ているというのである。「イーレ」が強化した雑貨類で多少、競合があるようだが、梅田地区への集客力は確実に増しているようで、現時点ではむしろメリットの方が多いようだ。ちなみに、現在の梅田地区におけるセール時の買い回りの王道は、「グランフロント大阪→ルクア→阪急うめだ本店」だという。たいへん興味深い調査結果である。
「ルクア イーレ」の開業で相乗効果が表れた点がもう1つある。地階フロアである。ルクアとグランフロント大阪と行き来できる連絡通路があり、「ルクア イーレ」の開業により、地階からの流入が増えた。また、グランフロント大阪6階にある「紀伊國屋書店」の売り上げも落ちていないという。「ルクア イーレ」9階に5月開業した「梅田 蔦屋書店」とは競合していないようだ。
というわけで、3年目もますます面白くなりそうなグランフロント大阪である。これからも地道に、その推移を追い掛けてまいりましょう。
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樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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