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2016.12.14
550億ドル市場に拡大 過熱するスニーカー転売ゲーム
11月にNYで開催された、スニーカーコンの様子
スニーカーとエコノミーを合わせた造語「スニーカーノミクス(Sneakernomics)」が一般化し、世界規模で550億ドルの市場といわれているスニーカービジネス。2004年以降40%もの成長を見せ、2015年のアスレチックシューズ市場は、米国だけでも前年比8%アップの172億ドル規模となっています。そして、この業界で最もホットなトレンドが、ナイキのジョーダンや、アディダスのスタンスミスに代表される「レトロ」と「クラシック」モデルのムーブメント。マーケティング調査会社のNPDグループによると、レトロモデルは、今年の10月までの統計で29%増と、昨年よりも5%高い成長率を示し、「レトロ・テニス」や「レトロ・ランニングシューズ」もブームに乗り急成長しています。また、感謝祭までの期間で売れたトップ5カテゴリーの中にも、「クラシックスニーカー」がランクイン。バック・トゥ・スクール商戦でも、最も売れたシューズのトップ6がすべてレトロモデルとなっているのです。この一大ブームを増長させているスニーカーのリセールビジネスについてお伝えしたいと思います。
どこまで伸びる!?スニーカーの転売市場
スニーカーのリセール(転売)マーケットは現在、12億ドル規模にリーチし、さらに成長を続けています。スニーカーヘッズ(スニーカーの熱狂的コレクター)のためのデータサイト「StockX」によると、米国だけで900万足、60億ドル分のスニーカーが転売されています。クラシックモデルだけでなく、スポーツブランドとセレブとのコラボ商品など限定モデルという限られた状況を作ることで、熱狂的なファンが生まれ、争奪戦となっているのです。 元値の何倍にはね上がっても手に入れたいという熱狂的ファンやコレクターが存在するため、利幅が大きく、計り知れないビジネスに育っています。
熱狂的ファン2万人が来場 レトロ・ブームが生んだ「スニーカーコン」
展示会の縮小や合併が相次ぐなか、際立って賑わっているマーケットプレイスがあります。限定版のスニーカーを売買する場として2009年にスタートした「スニーカーコン(Sneakercon)」です。創始者は、NYのダウンタウンに2店舗を構えるプレミアムスニーカーストア「スタジアム・グッズ(STADIUM GOODS)」のパートナーのユーミン・ウー氏。彼のインスタグラムのフォロワー数は27万人を超えています。スタート当初は、NYの教会のベースメントで行われ、参加者は600人ほどでしたが、今ではNYのコンベンションセンターを会場に、来場者数は2日で2万人を超える人気ぶりです。ちなみに、入場には25ドルのチケット購入が必要。会場では、イーベイ(eBay)のブースも登場したり、バスケットの試合が行われるなど、大変な盛り上がりを見せています。
11月5日に開催されたNYの会場では10万足以上のスニーカーが集まり、2日間で300万ドルの商品が、売買もしくはトレードされました。現在はNYだけでなく、ワシントンD.Cやアトランタ、シカゴ、LA、オハイオ州クリーブランドなど、年間を通じて各地で開催され、拡大しています。以下は、その会場の様子をまとめた動画です。
SNEAKERCON NEW YORK 2016 RECAP!
顧客はセレブリティー 年間100万ドルを稼ぐ弱冠16歳の起業家
写真:Complexの記事より。セレブリティにレアものスニーカーを販売するベンジャミン・キックス16歳
様々なメデイアで取り上げられているフロリダ出身の16歳・ベンジャミン・キックス(Benjamin Kickz)君が若手起業家として注目されているのも、スニーカーのリセール(転売)商売。ネットでスニーカービジネスをリサーチした彼は、母親に400ドルで買ってもらったナイキの「レブロンXMVP」というモデルが4,000ドルでの転売に成功。これをきっかけに、さらに高額でレアなスニーカーをまとめ買いしてビジネスを始めたのです。彼のビジネスがユニークなのは、顧客が、有名DJや世界的に有名なラッパー達だということ。音楽プロデューサーのパフ・ダディことショーン・コムズ(Sean Combs)にいたっては、ベンジャミンから20足以上も購入しているのです。2015年にはECサイト「Sneakerdon.com」を創設し、インターネット上で販売をスタート。今までで最も高額で売れたシューズは2万ドル。通常ミニマム40%のマージンを得ているのです。
お目当てはナイキのジョーダン 転売サイトも続々登場
スニーカーのリセールECまたは店舗・トップ10
Flight Club | ロレックスやタグ・ホイヤー等の高級時計が、低価格の物で1日7ドル、1カ月168ドルからレンタル |
Stadium Goods | グッチやラグ&ボーンなど、75ブランドのネクタイや蝶タイ、カフリンクなど、メンズのアクセサリーのレンタル。ブランドの種類により、1カ月20~55ドルで1回に3本まで借り放題 |
Rifla | カスタムメイドのウィッグ(かつら)を販売する小売り店のレンタルプログラム。特別なイベント時のウィッグが、通常8日間のレンタル料が送料込みで60ドル |
Sole Supremacy | 2010年、トップeBayセラーに選出され、自社サイトをスタート。 |
Project Blitz | 2012年スタート。eBayのサイトでは19,000以上の高評価。 |
Soled Out NYC | NYベースで2012年にスタート。2013年、初の実店舗をニュージャージー州にオープン。 |
Index | ポートランドベースのプレミアムスニーカーの委託ショップ。2005年にeBayで販売をスタート。 |
Corgishoe | ECではフェイク商品が氾濫しているとのことで店舗のみで販売。 |
23Penny | 2011年スタート。比較的リーズナブルなスニーカーを扱う。 |
The Collection Miami | マイアミベースの委託販売ショップ。 |
2014年のデータで、イーベイが販売したスニーカーの96%が、ナイキとジョーダンだったというデータがありますが、今年のブラックフライデー後、多くのメディアで取り上げられて話題となったのが下の写真。シアトルのナイキアウトレットで、木曜の夜10時から金曜の夜10時の間に2万人が来店。争奪戦が行われ、店内は、この世の終わりのようだったそうです。
ここまでひどくはありませんが、セール時期のナイキのアウトレットはかなりこれに近い状況で圧倒的人気を誇っています。レトロスニーカーブームをけん引しているのは、ミレニアル世代と言われています。各社がクラシックモデルを限定販売で仕掛けているように、アパレル業界も、通り一遍のトレンドを追いかけるより、1970年代や1980年代のモデルを限定で販売してみるというのも1つのアイディアかもしれません。
写真:JOADANSDAILYより。ブラックフライデー後のシアトルのナイキアウトレット
マックスリー・コーポレーション
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