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2018.11.07

新たなデスティネーションストアを探せ!アンカーストア(核店舗)を失った米国ショッピングモール事情

JCペニーが撤退した「ガーデン ステート プラザ モール」(ニュージャージ州)

 今年10月、米国を代表する老舗デパートのシアーズがチャプター11を適用し、倒産申請を行いました。時間の問題だと思っていたので驚きはありませんでしたが、アパレルの観点から見ると、世の中、若年層ばかりに焦点を当て過ぎているので、年配の人達が購入できるような店舗がまた消えるな、という印象です。その後のショピングモールのあり方について様々な議論がなされていますが、撤退はモールの未来の姿を変えるターニングポイントといえます。

 

 私の自宅から車で20分程度(22キロ)圏内には、ショッピングモールが3つに、オフプライス店やJクルーやナイキなどのアウトレットを集めたモール「バーゲン タウン センター(BERGEN TOWN CENTER)」があり、モールの激選区となっています。オンラインショッピングが増加するなか、店舗へいかに足を運んでもらうか。それぞれの特徴を強化しながら、各社トランスフォーメーションを重ねています。シアーズをはじめとする“アンカーストア(集客の中核となるストア、通常はデパートを指す)”の撤退に伴い、どのような変化があるのかレポートしたいと思います。

シアーズの後はディズニーランド的スーパーが入店 ――「パノラマス パーク モール」

撤退したシアーズ横にオープン予定のユニクロ(パラマスパークモール・ニュージャージ州)

   キッズブランドが充実した、子連れでもゆったりしたショッピングが可能なファミリー向けショッピングモール。手作りぬいぐるみで人気の「ビルド・ア・ベア・ワークショップ(BUILD-A-BEAR WORKSHOP)」や、女子向けサロン「グリッターズ&グラム(GLITTERS&GLAM)」などのサービスに、アウトドアブランド「L.L.ビーン」なども入っています。アンカーストアのシアーズは電化製品を取扱い、ランズエンドではファミリー向けのMD展開をしていましたが、今年2月に撤退。その後、1万5,700平米(約4,750坪)のスペースには、コネチカットを拠点とするスーパーマーケットチェーン「スチュー・レオナルド(STEW LEONARD’S)」が来年オープンすることが発表されました。

 

 「スチュー・レオナルド」は、エンターテイメント性の高い内装と、ファーマーズマーケット的なローカル食品の品揃えで人気があり、日本企業の視察もよく行われています。米国では、モール内に食品店が隣接するのははまだまだ珍しいケースですが、デイズニーランド的な要素を持った「スチュー・レオナルド」は、ファミリー層にマッチしており、ファッションとは別の目的を創出することでモールの活性化も期待できます。そして、気になるのが、工事中のこのスーパーに隣接する形で、来春オープン予定のユニクロ。食品買いのついでに寄れるショップとして、最適なロケーションをキープしています。このモールからわずか車で6~7分のところにある「ガーデンステートプラザモール」にもユニクロがありますが、荷物の多いファミリー層の行動を考えると、このモールへの出店は、かなり期待が持てるのではないでしょうか。

 

パラマス パーク モール

 

高級ダイニングと一格上のラグジュアリー感で差別化!――「リバーサイド スクエア モール」

サックスフィフスアベニューの撤退後にオープンしたラグジュアリームービーシアター

  サイモン・プロパティグループが運営するリバーサイドスクエアパークは、中高所得者層が中心のラグジュアリーモール。「エルメス」や「ルイ ヴィトン」などのハイブランドに加え、シカゴの老舗ステーキ店「モートンズ(MORTONS)」や、人気シーフードレストラン「THE OCEANNIRE SEAFOOD ROOM(ザ・オセアニア・シーフードルーム)」などアップスケールな高級レストランが充実しており、ディナーーやランチにも多くの人が訪れます。このモールに、長年アンカーストアとして君臨していた「サックス フィフス」が2015年に撤退しました。

 

 これは、車で5分ほどの場所にある「バーゲンタウンセンター(BERGEN TOWN CENTER)」にある「サックス フィフス」のオフプライス店「オフ フィフス(OFF 5TH)」の存在が影響したのではと思われます。撤退後は、ラグジュアリー映画館「THE AMC Dine-in」がオープンしました。9つのスクリーンを備えた同施設では、1,040席すべてがリクライニングシート。食事やお酒も楽しむことができます。近隣モールの競合や、ガーデンステートプラザの高級化に対抗すべく、さらにラグジュアリー感をプラスしたサービスや内装に注力しています。

 

リバーサイド スクエア モール

 

60年の歴史に幕 JCペニー撤退でさらなる改革を模索――「ウエストフィールド ガーデン ステート プラザ」

ノードストローム内で販売されている「アンソロポロジー」のホームグッズ(ガーデン ステート プラザ)

 グッチ、フェラガモ、テイファニーなどのハイブランドや、有名グルメレストランやバーを次々と誘致して高級化。スタイリッシュなフードコートへの改装や、急成長を遂げているブロー専門美容室「ドライバー(DRYBAR)」などの美容系にも力を入れており、昨今の客層に合わせた大改造を重ねています。今年は、アマゾンブックスや、女優ケイト・ハドソンがスタートしたヨガウエアの定期購入ブランド「ファブレティックス」の実店舗をオープン。10月には、眼鏡ブランド「ワービー パーカー」も誘致し、賑わっています。アンカーストアの1つ「ノードストローム」内では、Jクルー運営の「メイドウェル」や「アンソロポロジー」とのパートナーシップでホームグッズを販売をスタートしました。モール内では、両ブランドともに存在するのですが、異なる客層へのアピール協業という感じでしょうか。

 

 また1958年から、このモールのアンカーとして存在していた「JCペニー」」が今年3月に撤退しました(ペニーは昨年、140店舗の縮小を発表)。その後、60社もの小売り店が入居を希望していると噂されていますが、未定。モールの敷地内の独立店舗として運営していた電化チェーンの「ベストバイ(BEST BUY)」も別のモールへ移転しました。競合モールは、スーパーマーケットやムービーシアターを導入するなど、ターゲットに合わせた変革を行っていますが、大きなスペースだけに、この後どのような店舗あるいはサービスを誘致するかが、モールのあり方自体に大きく影響しそうです。

 

ガーデン ステート  プラザ モール

トレジャーハント”に特化して復活 「バーゲンタウンセンター」

オフプライス店が集結したバーゲンタウンセンター・ニュージャージ州

 改装を重ねるショッピングモール最大の競合となっているのが、オフプライス店を集結させ、見事な復活劇を遂げた「バーゲンタウンモール」です。もともとはあまりパッとしないロードサイドモールだったのが、当初から入っていたTJマックスグループの「マーシャル」に加え、次々とオフプライス店を誘致。そのほかにも、「バナナリパブリック」や「J・クルー」を導入するなど、アウトレットに特化した特殊なモールへのトランスフォーメーションを行いました。

 

 その結果、今や、モール激選区のこのエリアで、1番の集客を誇る変貌ぶりを見せました。最近は、高級感のあるインテリアへの改装や、人気のカジュアルダイニング・レストランを導入、駐車場の拡張も行っています。来年は、オフプライス店の「バーリントン」が入るようです。ちなみに、このモールには、アンカーストア的なストアはありませんが、デイスカウンターの「ターゲット」、アマゾン傘下の「ホールフーズ」、急成長中のコスメチェーン「アルタ」、月額15ドル~のジムチェーン「ブリンクフィットネス」や、アウトドアストアの「REI コープ」など、ミレニアル層に人気の店舗を揃えています。近隣モールに比べると売り場スペースは劣るものの、ファッションではトレジャーハント感覚を提供。そのほかにも、若年層に人気の店舗を取り揃えた多目的ミックス戦略がうまくワークしているようです。

 

バーゲン タウン センター

 ショッピングモールには必ず存在してきた、アンカーストアを失う米国ショッピングモールが、今後どう変化を遂げるのか、生死を分けるターニングポイントを迎えています。シアーズ、JCペニーなどの撤退後の状況に引き続き注目したいと思います。


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

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