PICK UP

2016.09.21

大阪・梅田「ルクア」2年目の改装――ファッション&カフェの共生進む

 大阪・梅田の複合商業施設「ルクア大阪」が今秋、21店舗の新規テナントを導入した(一部店舗は10-11月の開業予定)。昨春(4-5月)にグランドオープンした「ルクア イーレ」が12店舗と多い。「ルクア」(旧東館)は7店舗だ(残り2店は10階の飲食店)。2館体制で再スタートを切って2年目に突入している「ルクア」。改装の目的と現状をまとめた。

「ルクア」は新規客取り込み、「イーレ」はMD精度をアップ

 今回の改装は、2館体制で1年が経過し、分かってきた売れ筋傾向を基に実施されたようだ。より精度の高いMD(マーチャンダイジング)の構築を目的にしている。「ルクア」の方は、新しい客層――ファッション感度の高い層や、ライフスタイルを重視する層の獲得を意識したという。1階のバッグ・ファッション雑貨の「カービング トライブス」や2階のレディス「エミ」や「ブレンヘイム」がその一例だ。そのほかファッション系では、5階に「ナノ・ユニバース グラウンドフロアー」「ドゥドゥ」を導入した。

 

 「イーレ」は定番ブランドや、需要が高い“カフェ”をファッションフロアに採り入れ、「快適なショッピングを楽しんでいただくことを意識した」という。新しいもの――Newや初ものだけでは売れない市況を考慮した。最も大規模に改装を実施したのは5階フロアで、計8テナント。レディスの「バビロン」や「ガルシア」「アンデミュウ」をオープンした。カフェでは「スラッピーケークス」を10月にオープン予定だ。米国で人気のカフェ&ダイナー業態で、西日本初出店だという。そのほか、レディスインナーの新業態「アモスタイル バイ トリンプ プライム」が全国初出店している。

 そのほか「イーレ」では、3階に「ステュディオス シティ」が西日本初出店。2階にはスポーツスニーカーを主体にしたレディスシューズショップの新業態「エフ アトモス」が出店した。新業態から馴染みのブランドまで、幅広いテナントを導入した。これも2館で約360店舗という規模感がなせる技だろう。

進むファッションとカフェの共生

 実際、これだけ店舗面積が大きいと、定点観測も大変である。2館で5万3000平方メートルと中規模の百貨店並みの広さなので、ざっと各フロアを見て回るだけでも、いい運動になる。しかし、これがターミナル立地の商業施設の特徴なのだろうとも感じる。商材の幅も多岐に渡るので、現場で新しい発見をすることも少なくない。

 

 閑話休題。以前、運営会社のJR西日本SC開発の山口正人社長にインタビューした際、今後の強化点に「カフェなど非アパレルのテナントも必要だ」ということを指摘されていた。ひと昔に比べると、アパレル系ブランドも多様化しており、雑貨やシューズ、果ては観葉植物まで店頭に並べられていることは珍しくなくなった。それでも、アパレルショップと隣接してカフェ=飲食店舗が出店するというフロア構成は少ない。飲食に必要な設備が整いにくい、匂いがフロアに広がるといった課題があったのだろうけれど。5階に10月オープン予定の「スラッピーケークス」は、周囲がアパレル系テナントである。

 

 前出の山口社長のコメント通り、今秋はファッションとカフェの共生が少し進む。まだまだ規模は大きくないが、興味深い試みである。思った以上にカフェ需要が多いという背景があるのだが、それだけ滞留時間も長いということである。

勝負の2年目 オープン景気の反動減にどう立ち向かう?

 2館体制でスタートを切って、2年目に突入した「ルクア大阪」。昨年春夏のオープン景気の影響もあり、16年春夏はやや低調な推移だった。売り上げは4月が82.5%、5月87.9%と下がった。しかし6月以降は回復傾向にある。6月95.9%、7月97.0%、8月95.0%といった具合だ。

 

 ちなみに入館客数は、4月77.8%、5月84.1%、6月95.3%、7月98.0%、8月94.0%の推移。セール時期に該当する7月は入館数・売り上げともに健闘した。今月9月以降は、徐々に前年同様の推移に戻せるように注力するという。

 

  新規テナントはオープン後、概ね順調に推移しているという。一寸先は闇の“流行り廃り”を正確に読み切ることは難しい(名前は伏せるが、今春新規オープンし、1シーズンで撤退したブランドも存在する)。規模の小さい商業施設とはまた異なる苦労があると察する――日本撤退を決めている「OLD NAVY」(イーレに出店中)の処遇も残っている。まだまだ暑い大阪の初秋だが、今シーズンはどのような推移になるだろうか。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

アパレルウェブ ブログ

メールマガジン登録