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2016.09.28
食も文化もファッションも!続々とNYに進出する日本ブランド
9月7日にオフィシャルキックオフしたニューヨークファッションウィーク。2017年春夏のニューヨークコレクションは、昨シーズン特に話題となった、ランウェイで見た物をすぐに買うことができる「See Now, Buy Now」を取り入れたブランドがさらに多く見られました。また編集長レベルやトップバイヤーのみを集めた極小のショーを開催するブランドなど、デザイナーはそれぞれの形式で最新のコレクションを発表しました。
個人的な感想としては、ショーの形式が統一されていないと、取材する側からすればやや取り組みにくい部分も感じます。しかし消費者の買い物の仕方がめまぐるしく変化する中で、ブランドはどう自分たちの顧客やターゲット層にアプローチ出来るのかを優先せざるをえないように感じました。
今月開催されたニューヨークコレクション期間中、「FASHION x IT」では、よりリアルに、ファッションやアート、フードにまつわるイベントを取材して回りました。
五感を刺激 岐阜県が行ったNYでのフードプロモーション
岐阜県は2009年からタイ・香港を皮切りに、これまで14カ国・地域において、岐阜県が持つ観光資源、農産物(食)、地産品(モノ)を集め、「岐阜ブランド」として民間連携のプロモーションを展開。その海を越えたプロモーションが今年、いよいよ米国でも行われました。ニューヨークファッションウィークに先駆け、「観光・食・モノ」のプロモーションイベントをニューヨーク各所で開催したのです。
私が取材させて頂いたのは、ニューヨークにラーメン旋風を巻き起こしたきっかけとも言ってもいい「一風堂 ニューヨーク(IPPUDO NY)」とのコラボレーション。
「一風堂 ニューヨーク」といえば、人気メンズブランド「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」がユニフォームを製作したことでも話題を集めるなど、味のみならず、オシャレなラーメンレストランとしてニューヨーカーに定評のあるお店です。今回、岐阜県と一風堂ニューヨークがコラボレートすることにより、日本の伝統工芸である岐阜県発祥の美濃焼と岐阜の食材を取り入れた期間限定のラーメンを頂くことができました。
25名のデザイナーズ美濃焼どんぶりには、醤油ベースの絶品ラーメンが。私が頂いたどんぶりは、グラフィックデザイナーの服部一成さんが手がけたデザイン。世界地図を広げて、ここでラーメン食べたいな、という7都市をどんぶりの柄のモチーフにしたそうです。
一風堂 ニューヨークとのコラボレートの他にも、日本食レストラン「エン・ジャパニーズ・ブラッセリー( EN Japanese Brasserie)」は岐阜県の地酒や飛騨牛のフェア、マンハッタン屈指の豊富な品揃えで人気のワイン&リカー店「アストア ワインズ&スピリッツ(ASTOR Wines & Spirits)」は地酒フェアを開催。キッチン雑貨のお店「ウィスク (Whisk)」や、日本の伝統工芸品を販売する「ザ カバー ニッポン ニューヨーク(THE COVER NIPPON NEW YORK)」では、キッチン用品などのポップアップショップを開きました。
これまでにもニューヨークで数多く行われてきた日本にちなんだイベント。その中でも今回のプロモーションは、現地サイドでの関わった人たちが、岐阜県が持つ「観光・食・モノ」の素晴らしさに芯から魅力を感じ、完成度の高い内容だったと感じました。
エンフォルド、マウジーがNYに路面店出店
「エンフォルド(ENFOLD)」と「マウジー(MOUSSY)」がNYに出店すると最初にリリースを読んだ際、すぐに出店場所を確認しに行きました。工事中の段階ではあまりピンときませんでしたが、いざストアがオープンしてみると、それぞれのブランドが選んだロケーションに、なるほどね、と納得。
エンフォルドが出店した場所は、マークジェイコブスやマイケルコース、ジェイムズパースなど日本でも馴染みのあるブランドが並ぶブリーカーストリート。NYのライフスタイルを象徴したドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」 で一躍人気となったカップケーキ・ショップ「マグノリアベーカリー」もあります。エリアでいうと閑静な住宅街として知られるウエストヴィレッです。
ストアの向かいには、ローカルの親子が集まる公園も。緑も多いこのエリアを意識し、ストアのインスタレーションは、ニューヨークでのビジネス3年目を迎えるプラントアーティスト・川本諭氏によるグリーンフィンガーズとコラボレーション。その美しいウィンドウに足を止める人を多く見かけました。セレブリティーも住むこのエリア。この通りに出店するストアの方によれば、女優のジュリアン・ムーアもその1人だそうで、近い将来彼女がエンフォルドを着た姿が見られるかもと期待が高まります。
一方のマウジーが出店したのは、ソーホーの中でもラグジュアリーブランドとコンテンポラリーブランド両方が出店するブルームストリートです。マウジーがオープンした並びには2013年にオープンした「パドカレ(pas de calais)」や、2014年にNYに上陸した「トゥモローランド(Tomorrowland)」があります。デニムをコアアイテムとするマウジーは大きなキャビネットを設置し、よりそのデニムの存在に光を当てました。白木の様なナチュラルなベージュのキャビネットに並ぶデニム。共に設置されたモニターには、あえてEコマース機能ではなく、マウジーこだわりのデニムがどのようにして作られているのか、そのストーリーが流れていました。
ツイッターでは、ニューヨーク出店のニュースを知ったブランドのファンによる祝福の言葉や、NYのお店に行ってみたいというつぶやきが多数見られ、顧客とのエンゲージ力の高さを感じさせました。
ファッションやアートとはまた違った部分では、飲食店の「つるとんたん」がマンハッタンにお店をオープン。
現地のフードサイトや、ソーシャルメディアでも人気の食通たちもこぞって訪れています。また、つるとんたんのトレードマークである大きなどんぶりは、インスタグラムせずにはいられぬ存在感。広告投資をしなくとも、デジタルマーケティングを中心にしっかりと取り組めば、ラーメン店の様に2店舗、3店舗と出店も可能な気がします。海外進出というとどうしてもアジアンマーケットへの進出が目立ちましたが、今後は「食」「文化」「ファッション」共に米国への進出がじわじわと増えてくるのかもしれません。まずはじっくりとリサーチを。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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