ロンドンコレクション レポート
高嶋一行（写真・文）

　9月16日から5日間に渡ってロンドンを賑わせた「ロンドンファッションウィーク春夏2017シーズン」が全ての日程を終えて閉幕しました。キャットウォークショーやプレゼンテーションなどがぎっしりとスケジュールに詰め込まれた期間は、まさに段取り命。折り返しの3日目に1時間の大幅な遅れがあったものの大きな問題は無く、たくさんの最新コレクションがお披露目されました。

　ただ、コレクションに注目が集まる中、あまり詳しく紹介されないのが舞台裏。みなさんが目にしているファッションショーはどのように作り上げられているのでしょうか。今回、ロンドンファッションウィークのトップバッターとして9月16日の午前11時にショーを行った「ティータム ジョーンズ」に密着。本番が行われるまでの一部始終を覗いてみましょう。

ティータム ジョーンズ（teatum jones）：キャサリン・ティータム氏とロブ・ジョーンズ氏の2人が手がけるデザイナーズブランド。 ロンドンを拠点とし、ロンドンファッションウィークに参加するバイヤーやメディアが注目するブランドのひとつです。 また、その活動はロンドンに留まらず、ニューヨークファッションウィーク中のイベントとして行われた「インターナショナル・ウールマーク・プライズ」にて 2016年ウィメンズウェア部門で優勝。 世界的ブランドとして成長する、ファッション界でも目が離せないほどの多彩なコレクションデザインが魅力。 カラーの配色や柄、プリントテキスタイルなど、明るいカラーリングで独自の世界観を生む、ロンドンらしいクリエイションを行うデュオブランドです。

■公式サイト：http://teatumjones.com

【ショー開始2時間前】モデルが続々と到着！とにかくメイクとヘアーから

集合時間に到着したモデルを待ち構えているのは、メイク担当とヘアー担当のスタッフ。モデルは到着して一息つく間もなく、ヘアメイクのブースへと案内されていきます。スタッフ総動員で行われるヘアメイクはバッグステージの中でも迫力のある場所です

多数スタッフで人海戦術　とにかく時間との勝負です

　会場入りしてショーが始まるまでの時間は約2時間程度。この間に、全てのモデルのメイクとヘアスタイルのセットを行う必要があります。事前に決められたメイクの仕様を元に、たくさんのヘアメイクスタッフが動き回ります。バッグステージで最も活気があり、テキパキと仕事を進める姿は迫力満点です。

間違えると大変！各モデルのスタイリングは写真で細かく指示

　最新のコレクションはすでにスタイリングが決められ、どのモデルにどのようにコーディネートをするかが共有されています。どの服を重ね着するのか。シャツはパンツにインするのか。など細かく指示されており、モデルと共にスタッフがマンツーマンで着替えを手伝います。

美しく歩く重要なところ　シューズのチェックは慎重に

　シューズのサイズが合っていないと美しいウォーキングができず、ショーを台無しにしてしまうことも。特にヒールがあるレディースのシューズは念入りにサイズや歩き心地をチェックします。ちなみに、「ティータムジョーンズ」で発表された新作のシューズは、「アトリビュート」と呼ばれるロンドンの新鋭シューズブランドとのコラボレーションアイテムです。

【本番1時間前】緊張感あるリハーサル開始

本番が近づく中、一般的にリハーサルを1～2回程度行います。関係者が見守る中、演出家の指示のもとで本番さながらにウォーキングを開始。モデルは私服でリハーサルを行っていますが、皆さんオシャレな方が多いです。

空き時間も有効活用　モデルは自分の順番を細かくチェック

　ヘアメイクが終わったモデルや、順番待ちのモデルなどが真剣な表情で眺めているのが、ショーに出るモデルのラインナップ。自分が誰の次に、何回ウォーキングするのかを確かめます。さらにスタイリング方法も写真にて確認。モデル同士で「あなたの次に私」、「私の次にあなた」などの会話が聞こえてきます。ひとりのモデルにつき、早着替えを行って2～3回出番があるのが一般的です。

ココがポイント！シューズのみ履き替えて感触を覚えること

　リハーサルは私服のままで行いますが、シューズだけは本番と同じものを履いて歩いた時の感触をつかみます。また、ロングドレスなどウォーキングの難易度が高いスタイリングを担当するモデルは、リハーサルからコレクションアイテムを着て歩き方をチェック。あまりにも歩きにくい場合は、この時点で修正が入ります。

歩くだけじゃない！ウォーキングポジションなど演出をチェック

　ファッションショーのモデルの仕事は、“歩くこと”ですが、ただ歩くだけではなく、ブランドのイメージに合った演出しなければなりません。オーバーなアクションで元気よく歩くのか、クールにエレガントに歩くのか。演出家が指示する通り、音楽に合わせてウォーキングを行います。またカメラマンが集まるランウェイの先では、どの程度まで近づくのかが細かく伝えられています。おしゃべりをしているモデルも、この時だけは真剣です。

【ショー開始30分前】最後まで入念確認　フィッティングにメイクの仕上げ作業

一度仕上がったメイクでも、微調整は頻繁に行います。ピンクのキャップをかぶった彼が、メイクアップアーティストのアンドリュー・ガリモア氏。アシスタントなどのスタッフが行ったメイクの最終チェックも彼が行います。

次第にたくさん集まるカメラマン　裏側が一番混雑するタイミング

　リハーサルが終わり、モデルのヘアメイクが済めば、コレクションに着替えて準備を進めます。この時ショー開始まで15分～30分前程度。徐々にショー本番が近づいてくる雰囲気と比例して、バッグステージを撮影するカメラマンも増加。スタイリングが完成したモデルに集まるカメラマンに、動き回るスタッフ。バッグステージが一番忙しくなる時間が、このタイミングです。

ココがポイント！シューズのスタイリングは最後、ショー開始前に

　スタイリングが完成したモデルが集まってポージング。本番を待つ間、モデルはたくさんのカメラマンからの撮影に協力します。ただし、シューズを履くのは本番直前。カッコよくキマった最新コレクションのコーディネートも、足元を見れば裸足に靴下姿の少しシュールな絵となってしまいます。

【ショー開始10分前】セレブ登場！続々と集まるギャラリーと本番目前のバックステージ

開始15分頃からポツポツと来場者が姿を現し、5分前には満席の状態に。ロンドンファッションウィークでは、10分程度の遅れが通常。席への誘導やエントランスでの入場さばきなど、オーガナイズ側の腕が試される瞬間です。

客席にはプレスリリースなど　綺麗に並べてしっかりとお出迎え

　ファッションショーの会場は長いシートが基本スタイル。前列からフロントロー、セカンドローと名前が付けられ、最前列のフロントローにはブランドの大切なお客さんが座ることが一般的です。セレブや重要なバイヤー、有名ファッション誌、VIP顧客などが座ることになります。席には、プレスリリースと呼ばれるシーズンのテーマなどを紹介した資料が並べられている真っ最中。こうしてお出迎えを行います。

ゴージャスに着飾ったセレブの来場！撮影会が始まります

　ファッションショーに欠かせないもうひとつの楽しみが、セレブの来場です。綺麗にドレスアップしたモデルが来場すれば、カメラマンから撮影オファーが殺到。一時、会場はセレブの撮影会となります。写真は、イギリスのテレビドラマなどで活躍する女優のナタリー・アンダーソン氏。ティータム ジョーンズのドレスを優雅に着こなして登場です。セレブの遅刻でショーが遅れることも多いロンドンファッションウィークですが、彼女はしっかり時間通りに到着しました。

直前まで手直し　バックステージのモデルは終始リラックス

　ヘアメイクのスタッフは、本番が始まるギリギリまで気を抜きません。少しでも髪型が乱れたら手直しし、メイクも入念に一人一人チェック。本番直前の時間でも手直しを行います。一方で手直しされるモデルは、本番前でもリラックスムード。カメラを向けると変顔をするなど、ムードメーカー的な役割も果たしています。

【11：00AM】ショースタート！全ての準備はこの瞬間のために

バッグステージでは和やかなムードだったモデルも、本番となれば顔つきが変わり美しくウォーキング。エレガントなデザインアイテムをベストな状態でお披露目しています。歩くスピードに止まる位置、ウォーキングの演出など、リハーサル通りの要望をこなしていきます。

最新コレクションお披露目　シャッターの嵐が続きます

　コレクションの中で、特に創作的なデザインやゴージャス感がある見た目のスタイリングには、自然とシャッターの数も倍増。今回のティータム ジョーンズのコレクションでは、ピンクやブルーの鮮やかなカラーをベースにフラワーモチーフのプリントが印象的。レースなども組み合わせた大人のラグジュアリーなフェミニンスタイルを提案しています。

フィナーレこそショーの醍醐味　デザイナーの集大成がココに

　そしてクライマックスであるフィナーレは、お約束のモデル全員が並んでウォーキング。デザイナーの半年間に渡るクリエイションが全て詰まった瞬間でもあります。ギャラリーもみんながカメラを向ける見どころあるタイミングです。最近ではスマートフォンでフィナーレのショートムービーを撮って、その場でSNSにアップする投稿が増えているようです。

【祝福ムードで終了】記念撮影＆モデルは次の現場へ

ショーが終わればホッと一息。バッグステージではモデルも関係者も笑顔が絶えません。もちろん、まだまだカメラマンからのモデルへの撮影は続くので、モデルもしっかりポージング。

表情から分かる解放感　終了後モデルとパシャリ

　モデルに囲まれている二人がデザイナーのロブ・ジョーンズ氏とキャサリン・ティータム氏。ショーを終えて一安心のところに、モデルも交えて記念撮影を行っています。ショーが終わると祝福ムードとなるなか、すぐに撤収作業も開始。タイトなスケジュールのロンドンファッションウィーク公式会場では、次のブランドの準備が控えています。

休む間もない忙しさ　モデルは次の現場へ

　バッグステージがショーの成功を祝って盛り上がっている中で、最初に会場を後にするのはモデル達。人気のあるモデルなら、ロンドンファッションウィーク期間中にたくさんのショーに参加することとなります。そのため、ショーが終わればすぐに次のブランドのショーの現場へ移動。普段の移動は地下鉄ですが、間に合わない時は渋滞にも強いバイクの送迎で次の現場へと向かいます。

【合計45以上のショーが5日間に凝縮】裏側は常に大忙し

　今回、ティータム ジョーンズのショーに密着して、ファッションショーが行われるまでを取材しました。ロンドンファッションウィークではショーが45以上。プレゼンテーションを合わせると75以上のブランドが新作コレクションを発表しています。それぞれの会場のバッグステージでも、同じように限られた時間の中で準備が進められています。普段、何気なく目にするわずか15分程度のファッションショーも、裏側の世界を知れば違った視点で楽しめるはずです。