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2017.12.27
「マリークレール」誌が未来の店舗を大予想? 最新技術が体験できる「ザ・ネクスト・ビッグ・シングス」開催
ニューヨークでは今秋、ファッションとテクノロジーの関わりを紹介する期間限定のコンセプトショップが、マンハッタンのソーホーで開催されました。ファッション雑誌の米マリークレールが、マスターカードとパートナーを組んだ「ザ・ネクスト・ビッグ・シングス(The Next Big Thing)」です。ファッションやビューティー、エンターテイメント、テクノロジー、そしてウェルネスに関わる最新のイノベーションを、一般の人たちに体験してもらうものでした。
“ファッションとテクノロジー”を感じさせるポップアップショップは、これまでもニューヨークで度々見てきましたが、今回の「ザ・ネクスト・ビッグ・シングス」のように、テクノロジーの要素を強く感じさせる企画は、私の知る限りなかったように思えます。
店内は「マリークレール」誌で人気の3つのテーマをポップアップの売り場に作りました。「@Work」では、キャリア、スタイル、サクセスをテーマにしたファッション、「@Play」では、プライベートで出かけるときのおすすめの最新デザイナーズファッション、「@Peak」では、ウェルネスをテーマにしたアスレチック・アスレジャーウエアを揃えました。売り場では米百貨店ニーマンマーカスのスタイリストが常駐し、スタイルアドバイスを受けることもできます。
フィッティングルームには、Oak Labs社のスマートミラーを設置。フィッティングルームで試着しながら、おすすめの商品や、サイズ・カラーの在庫確認などを表示、それをリクエストすれば、店員が商品を試着室まで持ってきてくれるなど、最新の技術を備えた体験もできました。
ビューティーの部分では、クラランスとMemomi社の提供する「センサーミラープロ」がコラボレーション。スマートミラーの前に立ち肌診断を受けると、その人の肌状態に合ったおすすめのアイテムをクラランスのスキンケア商品の中から選んでくれるというものです。
また、サングラス売り場に設置したスマートミラーでは、好みのサングラスを試すと、その姿を撮影し保存してくれるため、再びその写真を確認することができます。その商品を繰り返しかけて試す必要がないので便利というわけです。
これだけではありません。サンフランシスコを拠点とし、様々なイノベーション商品を紹介する小売り店「ベータ(b8ta)」もコンセプトショップに参加。なかなか体験する機会が少ない優れた最新テクノロジー商品で、来店客の目をひいていました。
私たち消費者は、これまで以上にリテールという場所に、“エクスペリエンス(体験)”を求めています。考え抜かれたビジュアルマーチャンダイジングだけでなく、店舗内でウェブやアプリ、SNSが活用できたり、このポップアップで紹介されていたようなテクノロジーを違和感なく活用できる時代もそう遠くはないでしょう。
そうした時代を意識した今回のコンセプトショップ。ポップアップ専用のアプリをリリースしたことで、フィッティングルームでの決済やニーマンマーカスのファッションスタイリストとの1対1の予約など、すべてをスムーズに行うことができました。こうしたサービスを実際に提供するリテールは米国でもまだ多くはありません。ですが、リテール関係者を含め、一般の消費者にとって、“体験する”機会を作ってくれたこのポップアップショップを高く評価したいと思います。
“最新テクノロジー”とか“時代はこうなる!”と言われても、なかなか最初はピンとこないのは当然ですよね。やはり手に取ってみたり、体験してみたりしなければ、なるほどね、とはいかないものです。
日本のファッション雑誌でも、 米マリークレール誌 のように、ファッションのトレンドだけでなく、IT企業とも積極的にコラボレートし、普段とは異なる角度で業界を盛り上げ、買い物する人々が何かわくわくしてしまうようなポップアップショップを開催してくれたらいいなと期待しています。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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