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2018.08.08

米アバクロンビー&フィッチ 回復基調に見る米大手アパレルの戦略

 バック・トゥ・スクール商戦も半ばとなりましたが、店舗の大量閉鎖をし、苦戦を強いられてきたアバクロンビー&フィッチ(A&F)社が、2018年に入り回復基調を見せています。第1四半期の売り上げは、姉妹店ホリスターが好調であることと、インターネットでの販売が14%増となり、グループ全体では11%増加、既存店は5%の増加を見せました。セール品を縮小したことでグロスマージンがアップ。消費者の信頼度が回復したほか、様々な戦略が機能しはじめ、売り上げの回復に繋がっているようです。

ヴィクトリアズシークレットに対抗 「ギリー ヒックス」のインパクト

 アバクロの姉妹ブランドでランジェリー&インナーウエアの「ギリー ヒックス(Gilly Hicks)」は、2008年にスタートし28店舗を展開していましたが、2013年に閉鎖。2017年にホリスターの店舗内で地味に復活したのですが、ヴィクトリアズシークレット(VS)が低迷する一方で、新たな客層を獲得しているようです。また、VS社が撤退した水着の展開も売り上げに貢献しています。

ストアの大量閉鎖&減床 ダウンサイズで売り上げアップ

 「アバクロンビー&フィッチ」は2010年以降、当時のトータル店舗数の約3分の1となる400店舗を閉鎖しました。2017年には39店舗、2018年には60店舗を閉鎖。そのうち50店舗をホリスターに、13店舗はスモールフォーマットの新アバクロ店舗に改装したのです。オンラインビジネスの増加に対応し、2019年末までに60%の店舗がリース切れとなるタイミングで改装と減床を行う計画です。ダウンサイズにより、一坪あたりの売り上げの増加を謀(たばか)るというわけです。

 現在モバイルによる売り上げがオンラインビジネスの70%と急成長を遂げています。

4億米ドルを投資 デジタル・セールス拡大も寄与

 2010年からデジタル事業に4億米ドル(約400億円)を投資。その結果、A&F社の現在の売り上げの27%がオンラインビジネスによるもので、昨年の売り上げは10億米ドル(約1,000億円)に成長しました。ウェブで購入し、ストアで商品を受け取れるサービスを取り入れたことで、ストアへのトラフィックが向上したのです。また、リザーブした商品を店舗で試着し、ストアで購入。それをシッピングすることもでき、そういったオプションが、売り上げ全体を押し上げています。

海外ビジネスに商機 欧州や中国で成長中

 北米では店舗縮小や、従来の売り場を減床した新店舗にフォーカスする一方、ヨーロッパでは、117店舗・10億米ドル(約1,000億円)の売り上げ規模に成長しています。英国の「エーソス(ASOS)」や「ネクスト(NEXT)、「ザランド(ZALANDO)」などとパートナーシップを組み、卸売りも拡大。中国では現在28店舗展開ですが、アリババとの提携もあり、5億米ドル(約500億円)の売り上げを見込んでいます。

ロサンジェルスのSBEホテルで開催された「Do it in denim」イベント

“新体験”を提供 人気ホテルとのクロス・マーケティング

 今年7月には、ライフスタイル&ホスピタルカンパニー「SBEグループ」とのパートナーシップを発表しました。「SBE」は、LAやニューヨーク、マイアミ、ラスベガスなど25のブティックホテルのほか、170のレストランやナイトクラブなどを運営。若年層を対象に、パーティーや音楽イベントなどユニークなライフスタイル体験を提供するグループとして知られています。

 

 アバクロとのタイアップでは、ホテル内でポップアップショップやイベントを開催していく予定で、「A&F CLUB」の会員は、ホテル内のレストランやエンターテイメントを通して様々な特典を受けることができます。LAのモンダリアンで行われた初のイベント「Do it in denim」では、ニューデニムコレクションのショーが開催されました。

 

 先日、サンフランシスコ国際空港にあるユニクロの自販機で、69.50ドル(約6,900円)のダウンベストの売り上げが月平均1万ドル(約100万円)だということが話題になりました。ワールドトラベル&ツーリズムカウンシルによると、小売り&旅行業界は全世界で2.3兆ドル(約230兆円)産業であり、109億もの職を創出している一大産業となっています。ギフトショップやカフェなど、ホテルでの小売りは珍しくはありませんが、ホテルや空港など、トラベル業界とのタイアップは新たなビジネスチャネルとして面白いかもしれません。


 

 

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