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2024.09.14

【2025春夏ニューヨークハイライト1】ヨーロッパ勢も含め98のブランドが参加

写真左から「コーチ」「マイケル・コース」「トリー バーチ」「オフ-ホワイト」

 

 ニューヨークでは、2024年9月6日から11日まで、ニューヨークファッションウィークが開催された。98におよぶデザイナーたちが参加して、市内のさまざまなヴェニューで行われ、ブルックリンで行われたショーも少なくない。

 

 大きな話題としては、まず選挙。今年は4年に一度の大統領選に当たるため、9月6日、アメリカファッションデザイナー協議会(CFDA)は、投票を呼びかけるデモ行進を行った。
大統領夫人であるジル・バイデン博士から、トム・ブラウンやマイケル・コース、トリー・バーチといったデザイナーたち、エディター、モデルまでが1,000人以上が参加し、投票の重要性を訴えた。

 

 またパブリックビューイングも初の試みとして行われた。ロックフェラーセンターのスケートリンクに、巨大なモニターを設置して、ファッションショーを映し出すパブリックビューイングで、一般の人たちもショーを楽しめる試みだ。今後も続くことを期待したい。

 

 ニューヨークが初となるデザイナーとしては、ピーター・ミュリエが手がける「アライア(ALAÏA)」、そしてイブラヒム・カマラが手がける「オフ-ホワイト(Off-White™️)」がランウェイを開催。そしてパリを拠点にする「ロナルド・ファン・デル・ケンプ(RVDK RONALD VAN DER KEMP)」、スウェーデン拠点の「トーテム(TOTEME)」、ブダペスト発の「ナヌーシュカ(NANUSHKA)」などのヨーロッパ勢も参加した。

 

 2025春夏の流れとしては、まずカラーが柔らかく明るい、ニュアンスカラーが目についた。それに合わせて、エアリーな素材で、スカートやドレスが軽やかに翻る、リラックス感あるスタイルが多く登場した。一方で、強い肩を持つジャケットや、トップスには体にフィットしたコルセットやマッスルTシャツ、バンドゥのようなアイテムも目立つ。女神のような柔らかさと、アスレチックな強さを同時に併せもつ女性像が描けそうだ。

 

 ハイライトで、まずはインターナショナルなブランドからピックアップして紹介しよう。

 

オフ-ホワイト(Off-White™️)

Courtesy of Off-White™️

 

 ヴァージル・アブローから受け継いで、アート&イメージディレクターに就任したイブラヒム・カマラが手がける「オフ-ホワイト」が、8日、ニューヨークで初のコレクション発表を行った。場所はブルックリン橋パークにある波止場で、対岸にはマンハッタンの摩天楼が見えるという絶景のロケーションだ。

 

 今回のコレクションに先立ち、カマラ(シェア・レオネ出身)は、ヴァージルの出身地であるガーナを訪れたといい、そこから得られたインスピレーションが生かされた。

 

 広いバスケットボールコートを使ったランウェイに飛びだしてきたのは、アスレチック、かつセクシーなスタイルだ。ファーストルックは、白のトラックジャケットとシアーなスカートの組み合わせ。トラックジャケットはダーツを取ってコルセットのようにボディぴったりとフィットしており、スカートは軽やかにひるがえる。

 

 続くスタイルも、体にフィットしたトラックジャケットや、胸元をV字にヘソまで深くあけた赤のジャンプスーツなど、スリムなシルエットで、攻めるセクシーを提案した。ボトムはパネル式の太いベルトに、シアー素材のスカートが多く登場して、ひるがえる裾に動きがある。星のモチーフもそこかしこにちりばめられた。

 

 メンズでは、マッスルTシャツや、ジップアップのトップス、体にぴったりとフィットするフード付きのジャージートップスなど、筋肉のついた体を強調するアスレチックなスタイルが、ランウェイを飾った。ベストやジャケットの裾、ズボンの前身頃にパネルを付けるスタイルが特徴的だ。

 

 ガーナ人アーティストのナナ・ダンソによるアートがあしらわれたコラボレーションアイテムが登場し、また後半には、アフリカの模様やモチーフを取りいれたデザインがいくつも登場。アスレチックとアフリカを融合したコレクションとなった。

 

トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)

Courtesy of TOMMY HILFIGER

 

 今季は“ノーティカル(航海)”をテーマにしたという「トミー ヒルフィガー」は、まさにぴったりの会場として船上を選んだ。以前はスタテン・アイランド・フェリーと呼ばれ、退役したジョン・F・ケネディ号(コメディアンのピート・デヴィッドソンとコリン・ジョストが所有)をサウスストリートシーポートに繋留させて、その船上でランウェイを打つという大がかりなショーだ。

 

 そこで披露されたのは、「トミー ヒルフィガー」の本領であるプレッピー、キャンパス、スポーツを中心としたスタイルだ。ファーストルックは、赤のチェックのシャツに、ネイビーのチェックのトラウザー、白のテイラードブレザーで、ブランドのシグネチャーである、レッド、ホワイト、ブルーのマリンコードを貫いていく。

 

 メンズでは、ゆったりとしたルーズゲージのセーター、ストライプのパッチワークシャツ、リネンとレザーを織り交ぜたバーシティジャケット、ダブルタックのヨットショーツなど、フレッシュなプレッピースタイルを提案。アーカイブから取られたレガッタジャケットとユーティリティパンツはセイルクロス・ナイロンとシワ加工が施されたコットンで仕上げられた。プリントでは、セーリングの伝統的なスタイルから取られた横縞のブルトンストライプと、縦縞のイサカストライプ、そしてチェックが特徴的だ。

 

 ウィメンズで目を引いたのは、チェックのカプリパンツ。チルデンニットをロングニットドレスにしたり、超クロップ丈のカーディガンでミッドリフを出しながらローライズのパンツを合わせたりする着こなしもキャッチーだ。そして新しいチャンキーロープのTH モノグラムがあしらわれ、アイビーを基調にした「トミー ヒルフィガー」らしい爽やかなスタイルが繰り広げられた。

 

 ランウェイの最後には、スタテンアイランド出身である伝説的なラッパー、ウータン・クランが登場して、ラップを披露し、観客を盛りあげた。

 

コーチ(COACH)

Courtesy of Coach/Photo by Isidore Montag

 

 「コーチ」は空中庭園であるハイラインで2025春夏コレクションのランウェイを開催。ちょうどコーチ本社のお膝元にあるロケーションで、秋晴れの天候にも恵まれた。

 

 「コーチ」のクリエイティブ・ディレクター、スチュアート・ヴィヴァースが披露したのは、アメリカンクラシックを新しい世代的に解釈したスタイルだ。ファーストルックは、「I LOVE NY」のTシャツに、ネイビーのブレザー、チノパンツというアメリカントラッドの王道で、それをわざと着古したディストレス加工をしている。

 

 続くルックもコート、デニム、レザー、カーキ、Tシャツ、スウェットといったアメリカンクラシックだが、皺があったり、穴やほつれなどを作ったり、イタズラ描き風の文字や絵を施したりして、使い古した風合いを演出してみせた。

 

 デニムパンツ、モトスカート、アビエータージャケットは、ポストコンシューマーガーメントを再利用したものだ。再生されたレザーのジャケットや、あるいはショート丈にクロップされた革ジャンなど、こなれた風合いあるレザーが魅力的だ。またアップサイクルレザーやスエードで仕立てたカーディガンジャケットなども登場。

 

 ウィメンズでは、60年代を彷彿とさせるサテンのマイクロミニドレスが登場して、アシッドイエローやピンク、ラベンダーなどのキャンディカラーで展開。

 

 ことに目を奪ったのは、小脇に抱えた巨大なバッグで、初代リードデザイナーであるボニー・カシンがデザインしたアイコニックなハードウェアである「コーチフレーム」が使用されている。この特徴的なガマ口は、恐竜型やテディベア型の巨大バッグにも使われていた。

 

 足もとのスニーカーも、イタズラ書きのディストレス加工が施されていて、タクシー、カセットテープなどのチャームで飾られているのも、かわいい。自分だけの個性と自己表現をなにより大事にすることが伝わるショーだった。

 

トリー バーチ(Tory Burch)

Courtesy of Tory Burch

 

 「トリー バーチ」は、2025春夏コレクションの会場として、ドミノパークにあるリファイナリーのルーフトップを選んだ。イーストリバーを見下ろす会場には、グリーンのタイル模様が張られていて、プールを彷彿とさせ、涼しげな印象だ。

 

 今季「トリー バーチ」は、“動きと、フォルムのシンクロニシティ”をテーマにして、「このコレクションはスポーツパワーと優美さ、精密さと自由さから始まりました」と述べていて、相反するイメージを盛りこんだ。

 

 ファーストルックは、ボディに密着する袖なしの白のトップスと、ジャガードのスカート。ウエスト部分は、ボディにフィットしないシルエットだ。襟のないジャケットは、袖口が広がるデザインで、直線的なシルエットを描く。コートもボクシーで直線的だ。

 

 スポーツのモチーフが色濃く出ていたのは、きらきらと光るスイムスーツにトラックパンツを合わせたルック。ニットも体にフィットするスリムなラインで、カラーブロックが施されている。

 

 後半では、柔らかなジャージーシフォンを使ったフリルのスカートに、ぴったりとフィットするトップス、あるいはフリルのトップスにストレートパンツを合わせて、相反するイメージを統合してみせた。足もとは、ヒールが曲線を描く 「ツイスト 」ヒールと、バレエシューズを打ち出した。

 

 今季は初めて「トリー バーチ」のランウェイに、スポーツラインである「トリースポーツ(Tory Sport)」も含まれたランウェイとなり、あらためてアメリカンスポーツウェアを基盤とする「トリー バーチ」の世界を見せた。

 

マイケル・コース(MICHAEL KORS)

Courtesy of MICHAEL KORS

 

 「マイケル・コース」2025春夏ランウェイショーはハドソンヤードにある THE SHED で開催された。テーマは“地中海のロマンス”。これまでイタリアの職人やテーラーたちと創り上げてきたクワイエットラグジュアリーを謳ったという。

 

 「デザイナーにとって最も素晴らしいことは、自分のアイデアに命を吹き込んでくれるパートナーを見つけること。イタリアの職人たちはそれを 35 年に渡って私たちの為にしてくれてきているのです」「このコレクションにおける二面性は、私にとって非常に地中海的です。のんびりしているけれど贅沢で、素朴だけれど豪奢で、都会の洗練さとリゾートのムードやアティチュードが共存しているように感じられます」 とマイケル・コースは語った。

 

 コレクションでは、1950 年代のロマンティシズムと 1990 年代の洗練されたシンプルさを融合させた。ファーストルックは、コルセットのようなボディスに、大きくスリットが入ったスカートのドレスで、エレガントかつセンシャルだ。

 

 丈はミディやマキシが主流。贅沢な総レースのスカートやドレス、数シーズン続いているブラトップとスカートの組み合わせはAラインのソフトなスカートで披露して、エレガントなセンシャルさを出した。白いタートルネックには、透け感のあるオーガンジーのスカートを合わせて、軽やかな動きを出す。シャツの襟元をぬいて、ウエストを絞った着こなしは、50年代の女優を彷彿とさせるし、ローブデコルテのように襟元を広げたドレスもロマンチックだ。

 

 キーモチーフとなるのが、ラフィア。ラフィアのフリンジを裾にあしらったり、あるいはスカートそのものに仕立てたり、バッグやサンダルにあしらってみせ、リラックスしたリゾート感を醸し出す。そしてもうひとつのモチーフが花の立体的なアップリケで、高度な職人技とリュクスを感じさせる。

 

 カラーはブラックとホワイトを主調にしながら、チョコレート、ブルーやグリーンなどのアースカラーで展開された。

 

 今回のランウェイでは、TWICEのダヒョンもモデルとして登場して、チョコレート色のミニドレスでランウェイを闊歩。声高ではないラグジュリアス、エレガントで品のよいスタイルが、「マイケル・コース」の本領を発揮したコレクションだった。

 

ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)

Photo by Neil Rasmu

  • ヴルシャ・シャーマ/Photo by Neil Rasmu

  • マルサイ・マーティン/Photo by Neil Rasmu

  • ソフィア・ワイリー/Photo by Neil Rasmu

  • シモーネ・バイルズ/Photo by Neil Rasmu

  • タラジ・P・ヘンソン/Photo by Taylor Hill

  • マルサイ・マーティン/Photo by Neil Rasmu

  • オーロラ・ジェームズ/Photo by Neil Rasmu

  • モリー・ロジャース/Photo by Neil Rasmu

  • ソフィア・ワイリー/Photo by Neil Rasmu

Courtesy of kate spade new york

 

 「ケイト・スペード ニューヨーク」は、9月5日に、第3回目となる女性のメンタルヘルスに関するグローバルサミットを開催。これは従来、国連総会の時期にあわせて行われていたのだが、今季は特にファッション業界にもアウェアネスをより広げる目的で、ニューヨークファッションウィークの時期に合わせたという。

 

 サミットには、シモーネ・バイルズ、タラジ・P・ヘンソン、マルサイ・マーティン、ソフィア・ワイリーらが登壇して、「ケイト・スペード ニューヨーク」のソーシャルインパクト担当エグゼクティブ・ディレクターのタリン・バードが総合司会を務めた。

 

 内容は、若者のメンタルヘルスから、更年期の女性のメンタルヘルス、女性起業家、トラウマから立ち治る方法など、幅広いトピックを提示。そしてメンタルヘルスについて気づく種を撒き、影響を拡大し、回復力を高め、Joy(喜び)を育んでいく大切さを訴えた。

 

 

 

取材・文:黒部エリ
画像:各ブランド提供
>>>2025春夏ニューヨークコレクション

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