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2018.05.23

リテールはまだまだ面白い! グッチの新店舗「グッチ ウースター」を体感してきた

リテールの面白さを改めて感じる 「グッチ ウースター」の魅力

 

 日本でも今月上旬に一斉にメディアで取り上げられていた「グッチ ウースター(Gucci Wooster)」。NYソーホー地区に新たにオープンしたラグジュアリーブランドのグッチ(Gucci)の新店舗だ。オープン前から話題となっていたこの「グッチ ウースター」はその名の通り、ウースター通りに立地。かつて鉛筆工場だったという築155年の建物に開店しました。

 

 この店舗の魅力は、そのような建物の歴史を感じるとともに、一瞬にしてグッチの世界に惹きつけられてしまうということ。天井が高いこともあり、900平方メートルを超える空間の迫力にまず圧倒されます。そして、ヴィンテージ感とトレンドの最前線の両方を備えたこの空間は、まるでグッチの美術館のよう。どこから見てまわろうと迷ってしまうくらいなのです。

 商品やクリエイティブ・ディレクションが素晴らしいことは言うまでもないのですが、この店舗を訪れると、リテールというのは、まだまだ人をわくわくさせ、面白いことができる場所なのだなと勇気づけられるのです。

 

 開店してから何度か足を運んでみましたが、この場所に店舗がオープンしたことを知った上で来たと思われる人、ソーホーを歩いていてたまたま立ち寄ったと思われる人、また、年齢や性別に関係なく、色々な人たちがこの空間に惹きつけられているのが印象的でした。今後NYに訪れる機会がある方には、ぜひ立ち寄ってもらいたいリテールのひとつと言えます。

 

 

 もちろん私がチェックしたかったのは、DIYプログラムの部分。それは豊富に取り揃うファブリックやカラーの中からアルファベットを自由に組み合わせてカスタムオーダーが出来るというサービス。

 DIYのテーブルには「オフィディア ソフトGGスプリーム」のトートバッグ、トレイの上にはタブレットとモノグラムに使用するレザーのサンプルが用意されていました。

 

 DIYができるのかしら?と、タブレットの画面を見ながら写真を撮りながら試していると、ストアスタッフがARのサービスの楽しみ方を丁寧に教えてくれました。「私がタブレットを持っていてあげるから、写真を撮ったら?」とまで気づかってくれる親切な接客。

 

 こうしたちょっとした店舗での接客(エンゲージメント)にグッときます。

 

 また、「グッチ コネクター」と言われるアンバサダー役のスタッフが、ストーリーを通じてブランドと訪れたお客様を繋げてくれるサービスは、特別なエクスペリエンスだなと感じました。

 

 「グッチ」の魅力ある商品がずらりと並び、そのほかにも3D映像や、空間を仕切った映写室があったりと、とにかく視覚と物欲が刺激されまくるのです。

 リテールという存在の変化をまじまじと感じるこの1、2年。

 

 お店というのは、“買い物したい”と思う場所でもなければ、“面白さ”さえ感じられない場所になってしまったのか?その答えは、イエス&ノー。「あそこのお店に行ってみたい」と思わせるような場所でなければ行く機会は減るでしょう。また、スムーズに買い物ができるよう、サービスにも進化が感じられなければ、わざわざお店に行ってまで買わなくてもいいかな?ってなるのが今の時代でしょう。

 

 ECを開設していることは今や基本中の基本ですから、その結果、お客様がオンラインで商品を買ってくれれば、それを良しとすることもあります。しかし、せっかく店舗というリアルな場所があるのに、そこが生き生きしていないのは、“新鮮だったらばなお美味しいのに…”って感じる食品のように残念なことですよね。

 

 私たちは今、多くの情報に接しなければならず、時間に対する価値がますます高くなっています。「無駄な時間だったな」と思わせてしまうサービスは、ネガティブなイメージを与えかねません。必ずしもインパクトのあることを行う必要はないと思います。イノベーションをし続けることで、新鮮な体験をしてもらう姿勢が、お客様の心に響くのだと思います。

 

 「グッチ ウースター」は、エクスペリエンス(体験)が中心となることで、よりお客様の心に存在を残し、それが明日、明後日でなくてもグッチで買い物をしたいと思わせるきっかけとなっていくのだなと思います。

 

 まだまだリテールは面白い!

 


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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