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2018.05.16

売り上げは2ケタ増に 駅利用客を取り込んだ「京阪モール」の改装

 大阪のJR環状線には、東京の山手線と同様に、いくつか乗換拠点のターミナル立地の駅が存在する。大阪駅から10分足らずの場所にある「京橋」駅もその1つだ。JRと私鉄の京阪電車、大阪市営地下鉄が交差している。その駅前にある商業施設が「京阪モール」である。デベロッパー事業を担うグループ会社、京阪流通システムズが管理・運営する施設だ。

“ぶらっと寄れる30分” 京橋駅の乗降客を取り込む

 

館内の壁紙など内装も一新した

 

 京阪流通システムズは「京阪モール」のほか、沿線を中心に複数の商業施設を開発している。京阪モールはその中でも歴史があり、知名度も高い存在だ。京阪電車およびJRの改札からすぐの場所という恵まれた立地にある。昨年春、大掛かりな改装を実施し、MDの精度をアップしたほか、新規客である乗降客の取り込みに力を入れた。

 

 改装前に220億円だった年間売上高は改装後、目標だった250億円を超えて260億円に達した。売り場面積(1万8000平方メートル)は変わっていないため、純粋な底上げが図れたわけだ。改装のポイントは、1日およそ50万人の京橋駅の乗降客を取り込むことだった。既存顧客は地元のミセス層が多く、乗降客が新しく設定した客層だった。

 

 キーテナントの一部を配置換えし、館内の流動性を高めた。コンセプトは「価値ある寄り道」。「ぶらっと寄れる30分」(京阪流通システムズ、取締役増田高陸 営業本部担当部長くずは事業部長)がサブテーマである。重点的に強化したテナントは、飲食やコスメ、ヘルスケア関連。アパレルの比率を減らし、サービスの側面を強化した。館全体のデザイン――壁紙などを改装に合わせて刷新した。週末は30-50代の利用が18%から23%に増加した。平日のOL層の利用が従来の18%から30%に増加したという。

 

 「限られた売り場面積なので、特色を出すべきだと考えた」(増田取締役)。大阪市内には多くの商業施設があり、過剰供給だと言われている一面もある。基本は足元商圏で、最寄りの駅を利用する乗降客が多い同施設。顧客ニーズに合致するかどうか不安も有ったと言うが、2ケタの売上増という成果が出た。SNSで発信できるポイントを複数、設けた点も後押しになったようだ。

ねらいは京橋エリア全体の活性化 今後も改装を継続

 好調テナントはやはりコスメ系が多いようだ。「アルビオン」「ロクシタン」「オルビス」などのほか、「マーコート」「ストベリーフィールズ」などアパレル系のテナントも健闘している。新業態や西日本初といったテナントではなく、顧客ニーズに合った実績のあるショップを集積したことがプラスに働いた。

 

 来館数が増えるのは平日の午後6時以降と、週末の昼下がり。顧客数は平日1に対して週末が1.5-2倍の比率。高架下という制約のある売り場構造をキーテナントの再配置などにより、回遊性を高めることに成功した。

 

 そのほか、マンネリ化を防ぐために、ポップアップショップを積極的に導入している。これは系列の沿線施設「くずはモール」「京阪シティモール」と共同で取り組んでいる施策である。昨今、商業施設でよく見かける期間限定のポップアップだが、テナントとしても出店のハードルが下がるメリットがある。

 

 今後も改装は継続して実施することが基本方針。「ポップアップを本格化するほか、厳しいテナントのテコ入れなども行う。また攻めきれていない沿線地域や近隣の新規顧客の開拓も課題」(増田取締役)だ。中期的には、「京橋エリアの活性化」(同)を視野に入れている。

 

「京阪モール」公式サイト


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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