PICK UP
2024.03.28
「TOKYO BRAND PICK UP」MURRAL(ミューラル)デザイナー/村松 祐輔さん
日常の中で得た感情から生まれるドラマチックな服作り
繊細なタッチの花刺しゅうや、シャープなディテールを取り入れたラインナップで、女性たちに愛されるブランド「MURRAL(ミューラル)」。3月の秋冬コレクション発表を控えるデザイナーの村松祐輔さんに話を聞いた。
MURRAL(ミューラル)デザイナー/村松 祐輔さん
杉野学園ドレスメーカー学院卒業後、同級生の関口愛弓と共に「MURRAL」をスタート。2013年、年2回のコレクション発表形式へ移行。2017年、TOKYO新人デザイナーファッション大賞受賞。同年、東京コレクション初参加。
Website:https://murral.jp/
Instagram:@murralofficial
■ブランド設立から10数年。転機はありましたか?
一つ目の転機は、初めて東コレのランウェイに参加した17年春夏シーズン。ショーをやって、洋服をキレイに見せるだけでなく、「伝える」「届ける」ことがいかに大切か気付かされました。卸先が増えてきたタイミングでショーにステップアップできたのも良かった。
二つ目の転機は、自社EC直販を強化した2019年。ショーでは見せられない細かいディテールやセールスポイントを意識して作り込むようになって、価格帯も見直しました。ローンチ後、良くも悪くもコロナになって、売り上げがぐんと伸びた。今もECは強いです。
■SNSも活発ですよね。
今はSNSが名刺代わりなので手が抜けません。僕らはブランドを通してモノを売っているけど、同時にコトも提供しなくてはいけない。ショーもその一環です。メディアやバイヤーに取り上げてもらうばかりでなく、顧客イベントとしてショーがある。最近はショップスタッフさんにも見に来てもらっています。
■ミューラルといえば花の刺しゅうやレースを取り入れたアイテムが魅力的です。
自分たちが好きなもの、やってきたことを体現するために必要なテクスチャーです。もともと関口は刺しゅうやビジューを扱う手仕事が得意で、僕はレース素材をアレンジするのが得意。テイストは、二人ともゴシックでファンタジックなものが好きなので、花のモチーフなら、優雅だけど退廃的で少し毒気のある雰囲気を意識します。
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MURRAL 2024 S/S Collection "EUPHORIA"
■昨今、展開しているボディージュエリーも気になります。
毎シーズン定評のあるドレスを、単体ではなくスタイリング提案で見せたかった。ひとつ身に付けるだけで、スタイルアップになるし、ムードがぐっとあがります。もちろん全部手作業です。
■繊細でしとやかなイメージですが、服作りはストイックでロックですよね。
今の時代感からすると古いのかもしれないけど、プライベートの時間まで服作りに没頭しちゃいます。でも仕事に代わる趣味もないし、服が一番の興味だからこそ突き詰められる。
■ミューラルはデュオデザイナーですが、デザインはどうやって考えていますか。
自分たちの身の上に起こった感情や感覚からインスピレーションを受けて作っています。洋服の細かいディテールは男性である僕の視点で、それを女性である関口がリアルに着られるデザインに起こして、「ああしよう、こうしよう」を繰り返す。男女デュオの強みを生かしたプロセスなのかなと思います。
■24年春夏コレクションについて。
テーマとモチーフが直結するようなロジカルな作り方をしないこと、ショーでインパクトを残すことを意識したシーズンです。誰もが体験する「夢」を題材に、現実と非現実が交差する想像世界をコレクションで表現しました。
■海外進出の予定は?
そのためのきっかけをどうつかむか探っている段階です。常にアンテナを張りつつ、チャンスがあれば乗っかりたい。
■若者へメッセージを。
大事なのは、自分のテリトリーの外で何かを「続ける」ことです。どんなにささいな興味でもひかれるものがあるなら、まずは飛び込んでみてください。
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1.24年春夏コレクションのイメージソースとなった今敏監督映画『パプリカ』と、アメリカの写真家、アーヴィング・ペンによる写真集『Flowers』。いずれも「カラーリングやいびつな作風が非現実の解釈に近い」と村松さん。
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2.石川県七尾市の工場で手掛けるフリンジ刺しゅう。ただれる花の図案は美しくも、もろい。
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3.ばら園で撮影した景色をコラージュしたきらびやかなプリント柄。テキスタイルにはラメ糸が織り込まれている。
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4.独特なシャリ感と透け感のあるニットは、ウェーブ状の和紙混糸とレーヨン、コットンで編み上げた。
Interview & Photo : Sakura Tsuchiya
■「ファッション力 (Fashion Ryoku)」
杉野学園出版部が発行しているフリーマガジン。2008 年 6 月より、毎回パリ プレタポルテ、オートクチュール終了時を目安に年 4 回発行。
デザイナーインタビュー、コレクション報告、スナップ、座談会などを掲載している。