PICK UP

2023.12.11

Fashion-Ryoku Vol.61 ファッションの裏技拝見「TOKYO BRAND PICK UP」BED j.w. FORD(ベッドフォード)デザイナー/山岸 慎平さん

なぜそれを作るのか、意味がない服は後世に残らない

 

 

 6月に開催されたパリ・メンズコレクションの公式スケジュールで、2024年春夏コレクションを発表したメンズブランド「BED j.w. FORD (ベッドフォード)」。8月には東京・神宮前に旗艦店をオープンするなど、その勢いは止まらない。デザイナーの山岸慎平さんに会うため、ショールームを訪ねた。

<PROFILE>

Shinpei Yamagishi
石川県出身。高校卒業後上京し、古着屋に勤務。その後「マウンテンリサーチ」でキャリアを積み、2010年に「ベッドフォード」を立ち上げる。16年、東京ファッションアワード受賞。17年春夏、東京でランウェイデビュー。24年春夏、パリ・ファッションウィークでランウェイショーを開催。23年8月、直営店をオープン。
Website:https://bedjudewillford.com
Instagram:@bed_j.w._ford

 

■ファッションに興味を持ったきっかけは?

 

 地元は石川県の田舎町で、情報源は専ら雑誌でしたね。初めて手に取ったファッション誌は『アサヤン』で、大ファンのベンジーこと浅井健一さんが表紙を飾っていました。その号に「ジェネラルリサーチ」の特集があって、森の中で半裸の男性がムートンジャケットを着ている写真が載っていました。それを見た瞬間、音楽を聴いているような感覚に包まれて、それから少しずつファッションの世界に興味を抱くようになりました。

 

 中学〜高校時代は上京を夢見て、学校を辞めたいと親に訴えるほどでした。服装や髪型が自由で免許がいらない洋服屋で働く考えで、部屋だけは親が借りてくれましたが、高三の冬に上京。卒業証書は郵送してもらいました。とにかく上京すれば、何者かになれると信じていたんです。

 

■どんな東京生活でしたか?

 

 原宿の古着屋でバイトを始めるんですが、夕方になると同い年くらいの学生たちが店に来て、楽しそうに服の話で盛り上がるんです。上京後しばらく会社の上下関係だけで友達が居なかったから、すごく羨ましかった。でも、一人の期間が自分にとっては大きな時間で、いろんなブランドの洋服を見に行ったり、雑誌のスタイリングを見たりして、「これはゼロから始まっていない気がする」「これのアイデアソースは何だろう」と考察するのが好きで、それが物作りへの関心に結びつきました。

 

 上京して3〜4年経った頃、中学時代に感銘を受けたジェネラルリサーチの後身「マウンテンリサーチ」がスタートして、デビューシーズンを見に行きました。新しいプロダクトなのに、物作りの姿勢は何も変わっていなかった。その強さに感動して、この人から何か学びたいと素直に思いました。履歴書をポケットに入れて店を訪ねると、すぐに面接の日が決まりました。デザイナーの小林節正さんとの面接は雑談のようでしたが、帰り際に僕の足元を見て「いい靴を履いてるやつは信頼できる」と言ってくれました。それから小林さんの元で働いた4年間は、僕にとって学校のようでした。物事に対する姿勢はすべて小林さんから学びました。

 

■その後、ブランドを立ち上げるまでの道のりは?

 

 独立のきっかけは、憧れのブランド「ナンバーナイン」が終了すると知った時。自意識過剰なんですけど、僕の出番だって思っちゃったんです。裏原でもなくモードでもない新しい時代のエレガント、「ナルシスト」をキーワードに都会で生きる人たちのための洋服を作ろうと、2010年にベッドフォードを立ち上げました。最初はブランドと称するのもおこがましい型数で、基盤が出来上がるまで5年はかかりましたね。

 

  • BED j.w. FORD 2024 S/S Collection "last morning"

 

■ブランドスタートから13年。24年春夏コレクションはパリで発表しました。

 

 たくさんの人に見てもらえて、仕事にも繋がり嬉しい反面、「こんなもんじゃないぞ」という気持ちもあります。「日本のブランド」と呼ばれるのではなく、「ベッドフォード」として早くパリで名を馳せたい。

 

パリで発表した2024年春夏コレクションのテーマは「last morning」。繰り返しのようだけど同じ朝は二度と来ない、そんな意味が込められている。「エンドロールの向こう側を見に行く気持ちで、新しい朝をパリで迎えたけど、やっていることは今までと何一つ変わらない」と山岸さん。前シーズンから継続して扱っているシルク素材は、春夏仕様に手法を変えて展開。定番アイテムとして作ったシャツ地は、風合いに毛羽立ちを持たせるため、コットンにシルクを混紡した。素材やディテールから垣間見る、気張らないエレガンスが小気味良い。

 

 

 

■デザインはどうやって考えていますか?

 

 機屋さんや縫製工場へ行って、自分の中で辻褄(つじつま)を合わせていきます。例えば、どんな生地があるか、どんな糸が余っているか、工場の動きを把握した上で、自分は何を表現すべきか考えます。そこで手札を集めているような状態というか。かっこいいからこんなデザインのものを作ろうという発想はないですね。もちろん素敵に仕上げようというのはありますけど、なぜそれを作るのか、ちゃんと意味があって強くないと後世に残っていかない。意味は大事です。

 

■若者へメッセージを。

 

 最後まで突き進める人は、自分の中に強い信念や正義を持っている人だと思う。他人の意見に関係なく「これだけは」と思える価値観があると、後々役立ちます。もちろん上司の言うことも聞かなきゃいけないけど、自分の正義を守ることも大事です。

 

 

 

SHOP

外苑西通りにオープンしたフラッグシップショップでは、ベッドフォードのフルコレクションはもちろん、直営店限定商品やコラボレーションアイテム、山岸さんによるセレクト品など、ここでしか出会えない特別なラインナップを楽しめる。
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-9-11 営業時間:12:00-20:00 定休日:水曜日
Instagram:@bedjwford_tokyo

 

 

Interview : Masahiro Kubo, Sakura Tsuchiya

■「ファッション力 (Fashion Ryoku)」

杉野学園出版部が発行しているフリーマガジン。2008 年 6 月より、毎回パリ プレタポルテ、オートクチュール終了時を目安に年 4 回発行。
デザイナーインタビュー、コレクション報告、スナップ、座談会などを掲載している。

 

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