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2015.11.25

手頃な価格で人気急上昇 「ザ タイ バー」に見るオンラインリテールのポップアップ戦略

 最近ではオンラインリテールがブリック&モルタルを持つという形は、珍しくなくなってきたアメリカですが、ブリック&モルタルの出店の前には必ずと言っていいほど行われるのが、期間限定で開催する「ポップアップショップ」。ポップアップショップを開催することで、その都市で自分たちのブランドが受け入れられるのか、どういう商品展開をすれば喜ばれるのかなどをマーケットリサーチするわけです。今回紹介するのは、シカゴを拠点として始まったネックウェアビジネスの「ザ タイ バー(THE TIE BAR)」。

元弁護士が創設したネックウェアビジネス

 夫婦ともに元は弁護士だったグレッグ・シュガー(Greg Shugar)とジーナ・シュガー(Gina Shugar)は、毎日仕事に行くのに着けるネクタイの値段について不満を感じていたと言います。そこでもっと手頃な価格でネクタイを買える方法はないかと思ったのが、「ザ タイ バー」の始まりでした。ユニークなのは、2人ともファッションのビジネスの経験は特にないというところ。そこでグレッグはデザインを、一方のジーナはリテールビジネスについて学んだそうです。ビジネスをスタートした当初は周囲からいろいろな事も言われたようで、たくさんの失敗を繰り返したといいます。

雑誌の影響力

 いよいよEコマースが開設されると、弁護士夫婦が立ち上げた、しかも手頃な価格帯のネックウェアビジネスに注目が集まりました。メンズファッション雑誌の中では最も影響力がある「GQ」に取り上げられ、その後も度々紹介されています。

 こうした人気雑誌での掲載をきっかけに、「ザ タイ バー」というブランドは、瞬く間に名前が知られることとなったのです。

セレブリティーとのコラボレーション

 「ザ タイ バー」はその後、米人気ドラマ「モダンファミリー(Modern Family)」に出演中の俳優ジェシー・タイラー・ファーガソン(Jesse Tyler Ferguson)が創設したNPO団体「タイ・ザ・ノット(TIE THE KNOT)」とコラボレート。「タイ・ザ・ノット」は同性結婚も平等に認められるよう活動する団体で、ユニークでファッショナブルなボウタイ(蝶ネクタイ)を販売しています。「ザ タイ バー」で展開されるスペシャル企画「タイ ザ ノウ フォーザ タイ バー(TIE THE KNOW for THE TIE BAR)」のボウタイは、1本25ドル。ボウタイの売り上げから20ドルが「タイ・ザ・ノット」へ寄付され、その活動をサポートしているそうです。

 

 1本25ドルという手頃な価格で展開されるコレクションの中には、アメリカファッション協議会が毎年ファッション業界において貢献したデザイナーを称える「CFDAファッションアワード」を受賞したデザイナーでもあるビリー・リード(Billy Reid)とともに手がけた限定スタイル「ザ ビリー リード(THE BILLY REID)」などもあります。

 

 この他にも、NBAプレイヤーのドウェイン・ウェイド(Dwyane Wade)とコラボレートしたボウタイのコレクションも人気のようです。普段からファッションに意識の高いアスリートとコラボレートすることで、そのアスリートを通じて新たなファンを開拓することも可能とするのです。

ホリデーポップアップショップ

 「ザ タイ バー」は今年春に引き続き、顧客の多くが住むニューヨークでホリデーシーズンのポップアップショップを開催(2015年10月9日~2016年1月5日)。春はマンハッタンのノリータで開催しましたが、今回は、ウエストヴィレッジのなかでも、「マーク ジェイコブス(Marc Jacobs)」や「ジェイムズ パース(James Perse)」などのストアが集まるブリーカーストリートを出店場所に選びました。

手頃な価格帯がキー

 「ザ タイ バー」ではポップアップショップを開催する場合、その街に適した商品を改めてキュレートして展開すると聞きました。

 

 ネクタイは19ドルから25ドルと、ニューヨークならばちょっと豪華なランチを食べた時に払うような安価なプライス。素材はコットンやシルク、シルクニット、ウール、ウールニットなど様々。ネクタイの幅も、通常の物から細身のスキニーまで展開されています。ボウタイの価格も同じく19ドルから25ドル。ポケットスクエアは10ドルから15ドルと、懐にリスクのない価格が人気となっています。

ホリデーポップアップショップはエンゲージの大切な場所

 オンラインリテールにとって「ポップアップショプ」とは、顧客と直接会ってブランドについて伝えることができ、またお客様のブランドに対するメッセージを聞くことができる大切なエンゲージの場所。時にそれは、お客様からのサービスに対する不満の声かもしれません。しかしそうしたお客様からの生の声は、次のサービス導入へのきっかけとなることがほとんどと言っていいでしょう。

 

 今年のホリデーシーズンで「ザ タイ バー」は、ニューヨークのほか、今月からはワシントンでもホリデーポップアップショップを開催しています(2016年1月まで)。創業地であるシカゴには、すでにブリック&モルタルをオープンしていますが、今回再びニューヨークでのポップアップを開催したということは、将来的にストアを出店する方向で考えており、こうしたイベントを繰り返しながら、そのニーズを再確認しているのでしょう。

 

「ザ タイ バー」ポップアップショップ(NY)
411 Bleecker stree, NYC
Open till January 3rd, 2016
https://www.thetiebar.com/ 


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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