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2015.11.18

初の40代女性向けの自主編集売り場を展開 「イオンモール四条畷」の挑戦

 イオンモールが開発した郊外型ショッピングセンター「イオンモール四条畷」(大阪府四条畷市砂)が10月23日オープンした。四条畷(しじょうなわて)は南北朝時代に足利方と楠木方が戦った合戦場としても有名だが、今回はショッピングセンター(SC)がメーンテーマ。風光明媚な場所に建設された典型的な郊外型SCである。初の40代女性向けの自主編集売り場を展開している点が特徴だ。

「Re COLLECT」で新しい商品構成を模索

 イオンモールのSCは国内で140カ所を超える数まで増えている。過去15年余で、SCは流通の主役になった。過剰供給は前から指摘されているが、今後も新規SCの開発が予定されており、増加する傾向は続きそうだ。「イオンモール四条畷」は延床面積が約15万3,500平方メートル、総賃貸面積(売り場面積に相当)が約7万5,000平方メートルで、既存施設の中では中規模のSCである。平均的な名の知れ渡ったテナントを中心にリーシングするなど、特筆すべき点は少ないが、前述した初の40代女性向けの自主編集売り場がセールスポイントである。

40代女性を対象にした自主編集売り場「Re COLLECT」

 40代女性向けの自主編集売り場の名称は「Re COLLECT」(リ コレクト)。“オトナの女性に向けた心地良い空間”を標榜し、「オトナの女性が、自分らしい装い、暮らしのために、自らの目でセレクトし、コーディネートできる場所。」がコンセプトだ。売り場の“環境コンセプト”は「Mediterranean Style」(メディテラニアン スタイル=地中海スタイル)。アーチ状の入り口や、壁の幾何学模様など、地中海文化を意識した内装に仕上げている。

 

 「Re COLLECT」は計12店舗で構成し、売り場面積は約4,000平方メートル。12店舗中、7店舗が新業態だ。取り扱う商材は靴、化粧品、インナー、雑貨、カフェ・レストラン。新業態は、靴のセレクトショップ「MoNA」(モナ)、服飾雑貨「Arch&Coach Goods」(アーチアンドコーチ グッズ)、ライフスタイル雑貨「Arch&Coach Living」(アーチアンドコーチ リビング)、コスメ&エステ「orAnd」(オーアンド)、ギフト雑貨「champs de ruban」(シャン ド リュバン)、鞄の「MAISON de SAC’S BAR」(メゾン ド サックス バー)、カフェレストラン「サンドイッチカフェ クラブハウス」の7テナントだ。そのほか、インナーの「WACOAL The Store」、女性用かつら・ウィッグの「ルネオブパリスbyフォンテーヌ」などのテナントが集まっている。

「Re COLLECT」のコスメコーナー。高感度提案に挑戦した

 SCにおいて、可能な限り感度を高め、目の肥えた40代女性を取り込もうとする意図が感じられる。細かく品揃えを見ていくと、廉価なものも多いのだが、コスメ商材などは感度や上代など百貨店向けのアイテムも多数あった。…かつてセレクトショップが拡大した頃、郊外型路面店を展開していた紳士服専門店や一般量販店がこぞって、高感度を狙った自主編集のセレクトショップを開発したことがあった。今も営業を続けている業態はいくつかあるが、既存のセレクトショップと肩を並べるまでには至っていない。…今回の「Re COLLECT」も、そうしたなかなかハードルの高い業態への挑戦である。

ほぼ完成の域に達したSCのコンテンツ

 一方、「イオンモール四条畷」の施設全体を見ると、なるほどイオンモールが開発するSCは、ほぼ完成の域に達成しつつあるのだなと感じた。“金太郎飴”のように、どこへ行っても同じ造りで、開発もかなり効率化されてきたと思った(新しいSCが開業する際、ニュースリリースのテナントの面々を見れば、大体のフロアのイメージを思い浮かべることができる。これをSCの進化と呼ぶか、同質化と呼ぶかは、個々の判断だろうが…)。

 

 アパレル関連のテナントでは、約6,000平方メートルのスペースを割いて、「H&M」「ZARA」「OLD NAVY」「ユニクロ」「American Eagle Outfitters」を誘致している。「American Eagle Outfitters」はまだ関西では数の少ないテナントなので、出店する意義はあると感じた。日本へ進出した頃と違い、「H&M」はいよいよ“マス市場”への提案を強めてきたと感じる。日本における年間売上高は約450億円(1スウェーデンクローネ=14円で換算)で、同社の連結決算では、地域別の売り上げランキングのベスト10に入っていない。まだまだ、日本で出店していく必要性があると考えられる。

 

 閑話休題。アパレル関連のテナントも、ほぼほぼ出店の常連が固定されてきた。特定のアパレルメーカーによる寡占化が進んでいる証左である。百貨店を地盤にしてきたブランド達は、百貨店の苦戦に伴い、苦戦傾向が続いているし、SCを主体に勢力を伸ばしてきた新興のアパレルメーカーは、SCの出店数の増加とともにその業容を拡大しつつある。イオンモール、SCの事を書こうとしていたのだが、“SCの現場”を訪れると、こうしたテナントの栄枯盛衰にも、思いを馳せずにはいられない。平家物語ではないが、盛者必衰のことわりをあらわしているようだ。

耐震構造が新しい試み

 最後に1つ。物販や商品構成など商業的な面ではないが、新しい試みがなされている個所がある。天井内側の装飾をなくして、地震が発生した時、天井板などが落下して来館者の危険にならないよう工夫している点だ。

 

 生活弱者に考慮した「ハートビル法」を適用した物件は当たり前になったが、今後はこうした災害対策型SCも増えてくるのだろう。そういえば、以前取材した「イオンモール大阪ドームシティ」が、防災対応型SCだった。ソーラーパネルの設置など、既存の電力源に頼らないSCが売りである。こうした点も、今後のSCのトレンドになっていくのだろう。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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