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2023.06.12
ファッション力Vol.59 ファッションの裏技拝見 FEATURING A KEY PERSON 「リリー ブラウン ランジェリー」デザイナー/細淵 和気さん
” 見えないからこそ、なりたい自分に挑戦できる ”
ファッション業界のさまざまな職種で活躍するキーパーソンを紹介する連載Vol.27は、マッシュスタイルラボが展開するレディスブランド「リリー ブラウン」のランジェリーライン「リリー ブラウン ランジェリー」でデザイナーを務める細淵和気さんにインタビュー。細淵さんにランジェリーデザインの魅力を聞くため、オフィスを訪ねた。
<PROFILE>
細淵 和気 Waki Hosobuchi
服飾系大学を卒業後、ランジェリーの小売り、卸企業へ入社しデザイナーとして経験を積む。2018年、オリジナル商品を企画するランジェリー企業へ転職し、年間40型以上の商品を担当。2022年、マッシュスタイルラボに入社。リリー ブラウン ランジェリーの立ち上げから、デザインに携わる。
HP https://lily-brw.com/lingerie / Instagram @lily_brown_official
■細淵さんの仕事内容を教えてください。
年4回実施される展示会に向けてシーズンテーマを決め、アイテムを制作していきます。まずはリリー ブラウンのウェアチームと打ち合わせをして、テーマが決まるとビジュアルマップ作り。それからMDが作成したMDマップも踏まえてアイテムを決め、実際に絵型を描いていきます。
■ウェアチームと一緒に打ち合わせするのですね。
はい。ただウェアとランジェリーでは生産時期が異なり、ウェアチームが秋服を制作している頃にランジェリーチームは次の春夏の商品を作らなければいけません。ランジェリー制作において、洋服との大きな違いは、使用するパーツが1着につき20種類以上と圧倒的に多いこと。色や素材もパーツの分だけ指定しなければならないし、サイズ展開も幅広い。大きさによって若干パターンを変えていることもありますし、細かい分だけ形にこだわって作っています。刺繍のレースなども実際に絵を描いてオリジナルで作っているので、街中で散歩中に草花を見るとランジェリーのデザインにならないかなと頭の中で自然とイメージしています。
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【LILY BROWN Lingerie】コルセッタブラ / オリエンタルポピー
■なぜランジェリーデザイナーになろうと思ったのですか?
大学生の頃、ビビッとくるランジェリーに出会ったことがきっかけです。正直それまでは見えない部分だし、こだわりもそこまでなかったのですが、その商品だけはどうしても欲しくて自分のお小遣いで買いました。大学は服飾系の学校に通っていましたが、卒業後はランジェリーの会社へ就職。デザイナーとしての経験を積み、転職して現在に至ります。リリー ブラウン ランジェリーで働く魅力は、洋服と連動してデザインを考えられること。もともと洋服も大好きなので、たとえば背中のあいたワンピースから見えてもお洒落なランジェリーなど、洋服のことも考えながらデザインできることにやりがいを感じています。
■現在発売している商品について教えてください。
今夏シーズンは「Vibrant Vacation」がテーマです。旅先で見つけたエッセンスをもとに、貝殻のようなモチーフのブラや、オリエンタルな配色のランジェリーなどが登場します。
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【LILY BROWN Lingerie】コルセッタブラ / リリーマーメイド
■最近のランジェリーのトレンドは?
何年か前までは、ノンワイヤーで楽な着け心地のブラがトレンドになっていましたが、最近は厚みがあるカップで、程よいボリュームメイクができる商品が増えていますね。フェムテック系の商品など、機能面に特化した商品の開発も進んでいるので、今後はリリー ブラウンでも挑戦していけたらいいなと思っています。
■今後の目標などありますか?
今はウェアの一角にランジェリーコーナーを設けて販売していますが、行く行くはランジェリーの単独店も出店できるくらい商品の幅が広がると嬉しいです。
■ランジェリーデザイナーになるためにやっておくと良いことは?
自分のことを振り返ってみると、最初は手描きでデザインしていましたが、現在はデザインソフトを使ってシミュレーションを作成したり、刺繍の図案を描いたり、効率的にできるようになったので、イラストレーターやエクセルなど、コンピューターのソフトのスキルを早めに身につけておいたら良かったなと思います。あとは、服飾の学校に通っていてもなかなか下着の素材を触ったり裁縫する機会がなかったですし、企業やブランドが独自で開発している素材も多いので、そういった素材に早めに触れられる機会があるといいですね。
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【LILY BROWN Lingerie】コルセッタブラ / オリエンタルポピー
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細淵さんがデザインした刺繍の図案
■細淵さんが感じる、ランジェリーの魅力は?
見えないからこそ、さまざまな自分に挑戦できるところが大きな魅力です。私自身、身体にコンプレックスがありましたし、多くの女性は何かしらの悩みや理想があるのではないかと思います。胸の大きい人も小さい人も、スタイルが良く見えるように洋服の内側からサポートしてあげられるのがランジェリーです。朝出かける前に身につけると気分をあげてくれる、そんな一着を作れたら嬉しいです。
Interview:Utako Amino Interview Photo:Sakura Tsuchiya
■「ファッション力 (Fashion Ryoku)」
杉野学園出版部が発行しているフリーマガジン。2008 年 6 月より、毎回パリ プレタポルテ、オートクチュール終了時を目安に年 4 回発行。
デザイナーインタビュー、コレクション報告、スナップ、座談会などを掲載している。