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2023.06.18
【2024春夏展示会レポート ピッティウォモ】カジュアル&スポーティ傾向続く 「フェンディ」は自社ファクトリーでショーを開催
第104回ピッティ・ウオモが2023年6月13日から16日まで、フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。今の時期のイタリアは本来なら完全な夏日で、これまでは6月のピッティといえば、30度越えは当たり前だったが、今年は涼しめにスタート。雨もほとんど降らないのだが、2日目には大雨も。
ピッティ協会の報告によると、出展ブランド数 825 社、 総来場者数は 17,000 人以上。 特に海外バイヤーが 24%増だったそうで、コロナ禍からの完全復活が感じられる。終盤に大きなイベントがあったせいか、最後まで盛り上がりを維持していたようだ。
さて、今回のテーマは「PITTIGAME」。「バルーンミュージアム」とのコラボで、風船のプールのインスタレーションを行った「ハスキー」や、テントを張って会場内の中庭で本格的キャンプを行った「スノーピーク」、本格的にバスケットコートをプレーするパフォーマンスを行った「レドゥ」など、遊びやレジャー感覚あふれる展示が各所に見られた。
紳士服の殿堂「ピッティウォモ」 出展ブランドの商品トレンドは?
全体的なムードは、依然としてカジュアル&スポーティ傾向で、フォーマルなアイテムを新作として提案するところはますます減っている感じだ。会場内では新旧(?)交代が見られ、クラシック系のブランドや、新進気鋭のブランドやこれまでのピッティとはテイストが違ったブランドが増えたように見える。ジャケットはますます軽量重視で、しわにならずに洗濯機でも洗えるような、移動時も快適で手入れが楽な素材や作りになっている。このような機能性の追求のために、これまで続いていた天然素材崇拝から、高級なテクニカル素材への傾倒も見られる。テーラードスーツの代わりになるような、アンコンジャケットとイージーパンツのセットアップの提案もよく見られた。
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写真:ショーツや半袖ダウンなど、モダンなアイテムが登場した「ヘルノ」
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写真:「L.B.M.1911」はジャケットにデニムを合わせたコーディネートをメイン展示に
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写真:通気性にもこだわったタウンユースとして、セットアップで着られる提案も多い「ヘルノ」のラミナー
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軽くてソフトな作りで、柔らかいトーンの写真:スーツが揃った「サンタネッロ」
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写真:「ブリリア」は機能性を追求し、上質テクニカル素材も使用して軽くて快適に。
一方、シャツで多くみられたのが、開襟シャツ。プリントやヴィンテージ加工など、自由でリラックスした雰囲気が漂う。ニット人気も依然として強く、サマーニットには目の粗いタイプなどモードな雰囲気が加わっている。
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写真:「ブルネロ クチネリ」は開襟シャツを一押しで、キューバ襟のシャツをジャケットの上に出してコーディネート
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写真:「セッテフィーリ カシミア」のサマーニットは、柔らかいトーンで、肌触りのよい素材を揃えた
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写真:サファリがテーマのひとつとなっている「ジャンネット」の開襟プリントシャツ
色使いはベージュやサンド、オフホワイトなどの優しいニュアンストーンやスモーキートーンをメインに、ピンクやレモンイエロー、オレンジやターコイズなどの差し色を入れているところが多かった。またはモダンさを強調するブラックか、白×黒の提案も。
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写真:差し色にイエローや薄いターコイズを使った 「デュノ」
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写真:ブラック@ホワイトのラインを提案した「ジャンネット」
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写真:「ブルネロ クチネリ」はピンクを差し色に、淡いグレー系とのコーディネート
「フェンディ(FENDI)」が同社ファクトリーでショーを開催
今回のスペシャルゲストは「フェンディ」。6月15日に、フィレンツェから40分ほどのバーニョ・ア・リーポリにあるファクトリー内でショーを発表。
ガラスのパーテーション越しに、工場で実際に作業中の職人たちが見渡せ、CAD操作のレザーカッティングマシンの間を抜けるように作られたランウェイ。これはそんな雰囲気とダイレクトにつながる職人たちに捧げるオマージュ的ショーだ。ユニフォームのようなひざ丈のワークコート、リブのタンクトップ、ハイウエストのジップアップスーツパンツ、パッチポケットがたくさんついたワークパンクやクロップトパンツ、オーバーオールなど大工、配管工、庭師など様々な職人のワークウェアをラグジュアリーに仕上げた。ハンマー、ドライバー、レンチ、ペンチなど工具のプリントが施されたシルクシャツもあり、パターン上の指示がモチーフになっていたり、仕付け糸がそのまま残っているようなプリントのコートやスーツも登場する。
そして多くのルックに作業用のレザーのエプロンをコーディネートし、手には「フェンディ」の代表作であるバゲットやピーカブーだけでなく、コーヒーカップをデリバリーするようなバッグや、段ボールのバッグを持っているモデルも。メジャーを首からかけたり、工具用ベルトをしていたり、胸には「FENDI」と書かれたネームバッジをつけていたりと、遊び心いっぱいのディテールも見られた。色は焦土から森林の緑まで、トスカーナの風景を思わせるナチュラルカラーが多用された。
最後に、シルヴィア・フェンディと工場で働く職人たちが一斉に登場してランウェイを歩き、感動的なフィナーレを飾った。
ERL(イーアールエル)
ゲストデザイナーとしてカリフォルニア出身のデザイナー、イーライ・ラッセル・リネッツのレーベル「ERL」のショーがコルシーニ宮で発表された。蛍光グリーンのランウェイに、ハリウッド映画、カリフォルニアのサーファー、SF、オペラ、ルネッサンスなどの様々な要素が、ラメやスパンコールを多用して煌びやかにミックス。ブロケードやダマスク生地など高級感漂う生地も登場し、ロックとラグジュアリーの交差するコレクションとなった。
デザイナープロジェクトとしてコレクションを発表したタイ出身、南アフリカのデザイナー、チュー・スワンナパによる「チュラープ」はカラフルでグラフィカルなプリントを駆使した楽しいコレクションを発表した。
日本の優れたクラフトマンシップを紹介するプロジェクト「J QUALITY」
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写真:小山氏デザインによる「サンライン」のアイテム
また、 日本の優れたクラフトマンシップを紹介するプロジェクト「J QUALITY」が再登場したことも付記したい。「ニュークラシック」をキーワードにモダンでクオリティの高い製品を披露した。今回は前回出展したメーカーの中から、強圧縮バランサーキュラーツイルで軽く立体的に作られた丸和ニット株式会社、多くの手仕事を駆使したテーラードメーカーの「サンライン」など5社が出展。今回は「ユーゲ(Heugn)」の小山雅人氏がデザインディレクターを務め、各メーカーに小山氏がデザイン提供したラインと、それぞれのメーカーのオリジナルデザインのものと両方を展示した。
取材・文:田中美貴
Courtesy of Pitti Imagine Uomo
田中 美貴 大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。apparel-web.comでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。 |