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2022.09.18

【2023春夏NYコレ ハイライト】ますます拡大 エココンシャス、ダイバーシティ、ジェンダーレス

写真左から「トリー  バーチ」「トミー ヒルフィガー」「マルニ」「コーチ」

 ニューヨークでは2022年9月9日から14日にかけて、ニューヨークファッションウィーク(NYFW)が開催されたが、今季はコロナ禍の影響を完璧に脱した形で、リアルなランウェイや展示会を打ったブランドが出揃った。

 

 ニューヨークのマスク着用義務は病院や介護施設を除いてなくなっており、公共交通機関でも義務ではなくなっている。会場入り口でのワクチン接種証明書提示やマスク着用を求められることはなく、会場内でマスクをしている観客もほぼいない。

 

 NYFWの会場であるスプリングスタジオで規模は縮小しており、多くのブランドは屋外やオープンエアの会場でランウェイを打った。今季は「フェンディ(FENDI)」と「マルニ(MARNI)」がミラノコレクションではなく、NYFYに参加したのも話題だ。

 

 全体的に素材に再生利用生地が多く使われてエコにコンシャスなブランドが増え、またスタイルのダイバーシティとジェンダーレスがますます拡大しているのを感じる。いくつかのブランドを取りあげて、ハイライトをレポートしよう。

 

 

 

ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)

「ケイト・スペード ニューヨーク」2023春夏コレクション

 

 

 「ケイト・スペード ニューヨーク」はパンデミック以来、NYFWに初のカムバックをして、展示会を開催。会場は3ワールドトレードセンターの78階だ。会場には雲を思わせる白いバルーンと、緑の植物が飾りつけられていて、ピクニックに訪れたかのようなムードが漂う。

 

 今季はトム・モラとジェニファー・リューがヘッド・プロダクトディレクターに就任した初のコレクションとなる。色彩パレットは鮮やかで、デザインは明るくかわいく、遊び心があってフェミニンなスタイルと、まさに「ケイト・スペード」の本領を発揮した。

 

 ブラックとホワイトの縦縞のシャツに、ピンクとホワイトの横縞で裾にフリルを施したスカートの組み合わせ、花柄のライムグリーンのクロップド丈トップとタイトスカート、パッチワークのサンドレスなど、フェミニンなアメリカンスポーツウェアを提案。3Dの花型アップリケを施したバッグやメタルで出来た雲の形のバッグなど、スペシャルな新作バッグも目を奪った。

オーバーコート(OVERCOAT)

「オーバーコート」2023春夏コレクション

 

 大丸製作所が手がけるブランド「オーバーコート」は9月9日に、現代美術家リクリット・ティラヴァーニャとコラボレーションした作品展を開催した。タイトルは“COME TOGETHER”。会場はマンハッタンのチャイナタウン路上で、パブリックに見られるプレゼンテーションを行った。

 

 “COME TOGETHER”は12ルックからなる作品で、すべてにスラッシュが施されたユニークなピースであり、背後にはティラヴァーニャのメッセージがあしらわれている。素材はオーバーコートのルーツであるオーニング素材(商業建築のひさしなどに使われる布地)の他、非営利団体、「ザ・オーアール・ファウンデーション(The OR Foundation)」がアメリカ国内で手配した衣料廃棄物のコートも利用。この団体はアフリカに送られる廃棄衣料が多すぎることを防ぐ団体として活動している。

 

 なお同コレクションは、日本では9月30日〜11月27日の2ヶ月間、国際現代美術展「岡山芸術交流 2022」にて展示をされる。

 

マルニ(MARNI)

「マルニ」2023春夏コレクション

 

 

 「マルニ」は2023春夏コレクションの発表の場をミラノから移し、初のNYFWでのランウェイを打った。会場に選んだのは、ブルックリン区ダンボにあるマンハッタンブリッジだ。トンネル内に設置されたランウェイでは、管弦楽のオーケストラによる生演奏で、デヴ・ハインズがパフォーマンスを披露。フロントローにはマドンナやドージャ・キャットも姿を見せた。

 

 クリエイティブディレクターのフランチェスコ・リッソが披露したのは、体にぴったりと張りつくスキンタイトなシルエットだ。ボディに沿ったクロップド丈トップに、スリットを入れたリーンなスカート、あるいはマイクロ丈のパンツ、バイクショーツ、ローライズのワイドパンツが組み合わせられる。

 

 一方、ジャケットやコートはボクシーで、オーバーサイズのパッチワークコートが目を奪う。カラーパレットはファーストルックからレッド、オレンジ、イエローといったブライトな色彩が登場して、その後パープル、ブルーと強い色が登場した。

 

 胸のところにサークルのモチーフを施したデザインが目につき、スーパーロングな袖、透けたニット、ビーズでつないだ裸が見えるトップス、さまざまなところに穴が空けられたデザインなど、グランジやロックのエッジがかかっている。どこかグラムロックの頃のデヴィッド・ボウイを彷彿させるが、パロマ・エルセッサーなどプラスサイズのモデルも登場して、今の時代らしいダイバーシティを打ち出した。

 

 メンズとレディースでのデザインの差はなく、メンズもクロップ丈のトップスや、ブリーフと変わらない丈のマイクロパンツ、ポインテッドトゥのフラットシューズ、ジェンダーレスでボーダーレスなスタイルを提案してみせた。スポーティブでありながら、ミステリアスで、ジェンダーの境目がない世界観が印象的だ。

 

 

 

トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)

「トミー ヒルフィガー」2022秋冬コレクション

 

 

 「トミー ヒルフィガー」は久しぶりにNYFWに戻り、シーナウ・バイナウの2022秋冬コレクションをランウェイで披露した。会場はブルックリンにあるドライブインシアターで、大がかりな屋外ステージが組まれた。今季のインスピレーション源は「アンディ・ウォーホールのファクトリー」。イギリス人デザイナーのリチャード・クインとのコラボレーションによる限定コレクションも含まれている。

 

 コレクションはカレッジなモチーフが強く、ラガーシャツ、ニットマフラー、レタードカーディガン、チルデンセーター、スタジアムジャンパー、タータンチェック、レジメンタルタイなど、プレッピーなアイテムが数多く登場する。それでいてセーターやラガーシャツは極端にビッグサイズだったり、チノパンが極端なバギーであったり、あるいはトップスがクロップ丈だったりと、プロポーションを変えて作られ、ヒップホップ色の強いスタイリングを披露した。

 

 さらにハーネスのスタイリング、スパイクのついた革のバイカージャケット、他に大きなカウボーイハットなど、クリーンなイメージに留まらない、ダークなサイドも見せた。THのロゴを組みあわせたアイテムが強く打ち出され、スーツやジャンプスーツで展開された。

 

 今季のもうひとつの特徴としては、モデルのダイバーシティがさらに進んだことで、プラスサイズのモデルは女性のみならず男性にも登場、また白斑症の男性モデル、シニア世代のモデルも闊歩して、すべての人をインクルーシブするインターナショナルブランドであることをアピールした。

アディアム(ADEAM)

「アディアム」2023春夏コレクション

 

 前田華子が手がける「アディアム」は2023春夏コレクションで、リアルなランウェイにカムバックした。今季のインスピレーション源は「祭」。そのフェスティブな雰囲気を反映して、たっぷりとフリルを施し、ボリュームあるシルエット、アシメントリーなデザインなど、華やいだスタイルが登場した。フラワープリントは伝統的な和柄を採用している。

 カラーパレットはピンクやブルー、イエローなど、パステルトーンが美しい。オーガンジーの透ける素材も多く、軽やかなイメージだ。また着物にインスパイアされたというレイア−ドのスタイリングも多く見せ、帯ベルトなど、和のモチーフも取りいれながら、フェミニンなスタイルを披露した。

 

トリー バーチ(Tory Burch)

「トリー バーチ」2023春夏コレクション

 

 

 「トリー バーチ」が選んだのは、ハドソン川に面した埠頭で、川と暮れゆく夕陽を背景にした壮大なランウェイを展開した。今回トリー・バーチは90年代に自身がニューヨークにやってきた頃のスケッチがインスピレーション源といい、90年代調のミニマリズムを蘇らせてみせた。

 

 ストレッチ素材でボディに張りついた、リーンでロングなシルエットが数多く登場して、ボディコンシャスなミニにレギンスを合わせたり、マキシスカートにミニを帯のように重ねたりしてみせる。素材は軽やかで、エアリーだ。透明フィルムのようなテックタフタのオーバーレイなど透け素材がキーとなっている。そしてシアーなトップスの下にバンドゥやブラを透けて見せて、セクシーさを演出する。

 

 一方、羽織るジャケットやコートはボクシーで、アップルグリーンのコットンサテンコート、ゴールドのフォイルドレザーコート、シルクタフタのトレンチコートを合わせてみせた。足もとはフラットなスリングバックかミュールで、90年代調だ。ミラーの刺繍を施したり、シルクラメのスカートで光を集めたり、きらきらと輝きをまき散らし、夜の外出にも映えるスタイルを提案してみせた。

ヴィヴィアン タム(VIVIENNE TAM)

「ヴィヴィアン タム」2023春夏コレクション

 

 

 「ヴィヴィアン タム」ヴィヴィアン・タムは今季久しぶりにNYFWのランウェイに戻ってきた。NFTのアバターであるサイバーコングズ、NFTアートのクリプトパンクス、ブロックチェーンに存在するNFTであるボアード・エイプ・ヨット・クラブとコラボレーションして、それらのモチーフをファッションに落とし込んでみせた。

 

 絵文字がそのままアップリケになっているドレスや、大きくエイプスがプリントされたシャツやパンツ、山ほど立体のアップリケでNFTアートを縫いつけたドレス、あるいは胸の部分がエイプスになっているロングドレスなど、非常にボールドなスタイルで表現。また「ヴィヴィアン タム」らしい、エイプのモチーフをカットワークレースに落とし込んだスーツなど、技巧が凝らされたアイテムも登場。ボトムスは極端にフレアになったパンツを多く打ち出した。アイテムの多くはジェンダーレスで着られるものであり、Z世代のムードが漂う。今までとは違うマーケットに向けたシフトを明確に示してみせた。

 

 

3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)

「3.1 フィリップ リム」2023春夏コレクション

 

 

 「3.1 フィリップ リム」は2023春夏コレクションを、フラッグシップストアで展示発表した。今季のテーマは“オフデューティ”。NYで働く女性たちがオフのシーンで着るようなリアルで、フィリップ・リムらしいミックス&マッチ感があるコレクションを披露。

 

 なかでも目を引くのがデニムを使ったウェアで、ボリュームあるシルエットのデニムジャケットをウエストで絞り、ジョガー風のデニムパンツと組みあわせてみせた。またデニムにレースをあしらったランジェリードレス、クロップト丈のキャンプシャツなど、さまざまなシーンで活用できそうなアイテムが揃っている。再生リボンで作ったバッグや、ショルダーでもトートでも使える多機能のプリズムトートも魅力的だ。

 

取材・文:黒部エリ

画像:各ブランド提供(ショー開催順に掲載)

「ニューヨーク」2023春夏コレクション
https://apparel-web.com/collection/NY

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