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2021.10.29

新ブランドの出店が続く、ロックフェラーセンター周辺

 今月上旬に掲載されたCNBCニュースの記事によると、マンハッタンのミッドタウンでは空き物件が目立つといいます。筆者も同様の変化に気づいていて、記事内でも言及されていたのは、59丁目とレキシントンアベニューにある、百貨店「Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)」から58丁目にかけての1ブロックがほぼ空き状態ということです。以前はGAPや「Banana Republic(バナナ・リパブリック)」、H&M、「Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」といった誰もが知っている有名ブランドのストアが並んでいました。最近、筆者がその付近を通った際、GAPとBanana Republicが撤退した2店舗の店内には明かりが灯っており、もしかすると新規出店が今後あるかもしれません。その一帯は急行も止まる便利な駅でもあり、駅から地上に上がってすぐの好立地が空き店舗というのはかなり衝撃的な光景でした。

アーティストのKAW氏が制作した高さ約5.5メートルの作品「SHARE」

 とは言え、前述したような暗いニュースばかりではありません。8月11日から10月8日の間、アーティストのKAW氏が制作した高さ約5.5メートルの作品「SHARE」が登場した「Rockefeller Center(ロックフェラーセンター)」周辺のリテールでは、最近気になる動きがあります。

 

 ニューヨークを訪れたことがある方でしたら、ミッドタウンにある百貨店「Saks Fifth Avenue(サックス・フィフスアベニュー)」をご存知でしょう。そのサックスの建物を背にして通りを渡ると、噴水や植え込みがあり、両サイドには店舗が並ぶ遊歩道「Channel Garden」があります。おそらく、冬の時期であればロックフェラーセンターのスケートリンクやクリスマスツリーに向かってその歩道を歩いた方もいらっしゃると思います。しかしその際、歩道の両サイドに並ぶ店舗について覚えがある方は、筆者も含めてそういらっしゃらないと思います。そのエリアが今夏から少しずつ変化しています。

オープンする予定のTodd Snyder

 Channel Gardenには「Tiffany(ティファニー)」や「Kate Spade New York(ケイト・スペード ニューヨーク)」といった有名ブランドが出店しており、近くには「Michael Kors(マイケル・コース)」や「Cole Haan(コール・ハーン)」など観光客にも人気のブランドも並んでいます。しかしこのエリアでは最近、ストライプスタイルが人気の「KULE(クール、@kule)」やファインジュエリーブランドの「EVA FEHREN (エヴァ・ファーレン、@evafehren)」、メンズのライフスタイルブランド「COTE A COAST(コート・ア・コースト、@coteacoast) 」など、ニューヨーク発のブランドが相次いで出店しています。さらに11月には、メンズウェアブランドの「Todd Snyder(トッド・スナイダー、@toddsnyder)」がオープンを予定しています。

KULEの店舗

 ニューヨークのブランドに詳しい方であれば、これらのブランドの並びがミッドタウンさらにはロックフェラーセンター周辺の一等地に出店となると、驚きを隠せないと思います。ちなみに、Todd Snyderが出店する場所は以前にLEGO STORE(レゴストア)があった店舗です。LEGO STOREは、閉店ではなくフィフスアベニュー沿いに移転し、エクスペリエンス満載の新店舗として今年6月にリオープンしています。

 

ファッションにフードは欠かせない!

Lodiの店舗

 この変化を見過ごさぬよう、度々ミッドタウン周辺を訪れていたところ、フード業界にも動きがあることに気づきました。ジェイムズビアード賞のベストシェフを受賞するイグナシオ・マットス氏が手掛けるイタリアンベーカリー&カフェ「Lodi(ロディ、@lodinyc)」が、Dean & Delucaに代わりオープンしています。そして、アーティサナルなドーナツで有名な「Dough Doughnuts(ドウ・ドーナッツ、@doughdoughnuts)」もロックフェラー周辺に先月オープンしています。他にも、トライベッカにある人気フレンチブラッセリーの「Frenchette(フレンシェット、@frenchettenyc)」がロックフェラーセンターに出店する計画があるというニュースも、19年の終わり頃に伝えられています。ファッションとフードは切っても切れない特別な関係なのだとつくづく感じます。そしてファッション、フードと続くと次は「音楽」です。バイナルレコードショップの「Rough Trade(ラフトレード、@roughtradenyc)」も今年6月にオープンしています。

クリスマスホリデーはもう間近

 現在アメリカでは、サプライチェーンの問題やオンライン注文品の配達遅延の可能性も含め、これまで以上にホリデーショッピング期間を前倒しする風潮が、オンライン、オフラインいずれの場でも見受けられます。筆者個人の記憶ですが、2019年のホリデー商戦がハロウィンシーズン(10月末)から始まった際にも、その早さに驚いたことを覚えています。しかし2021年はさらに前倒しとなり、10月初旬にはブランドからホリデーショッピングを意識させる内容のメールマガジンが届き始めました。これらの動向は、Amazon、Target、Walmartなど大手リテーラーのホリデー商戦に向けた動きが早まることによって、付随する形でスモールビジネスがホリデーマーケティングを調整せざるを得ないのでは、と筆者は読んでいます。

 

 ニューヨークのホリデーシーズンといえば、その始まりを告げる一つのトレードマークとして、ロックフェラーセンターのスケートリンクがあります。現在は工事が行われていますが、公式Instagram(@rockefellercenter)では11月6日にリオープンすると伝えられていました。未だ国や地域ごとに状況は異なり、生活が大きく変化したことによる懸念は尽きません。ただ、そうした状況下ではありますが、ニューヨークでは新規出店や街のシンボルのリニューアルオープンなどポジティブなメッセージが目に見えて感じられるようになってきております。


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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