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2021.05.20

顧客のエンゲージメントでポストコロナの成長を狙う! URBAN OUTFITTERS社の最新動向

 パンデミック発生以来、競合店同様に苦戦してきた「URBAN OUTFITTERS(アーバンアウトフィッターズ)」グループは、アパレル以外にも、ブライダル、ピザレストラン、フラワーショップなどの多角経営を通じて、それぞれの顧客が何を求めているのかを研究し、時代に沿った新しい市場に挑戦している企業の一つだと思います。先月発表された第4四半期の売上は、パンデミックの影響を受けて前年比6.8%の減少、通年では13.4%の減少となりました。しかし、同社の経営陣は今年度のビジネスについて回復すると予測しています。理由の一つには、自宅で過ごす時間が増えた女性の増加により、グループの中で最もカジュアルなラインを展開する「Free People(フリーピープル)」が売上に貢献し、EC販売率も70%増加したことが挙げられています。また、姉妹ブランド「Anthropologie(アンソロポロジー)」のホームカテゴリー「アンソロリビング」部門が第4四半期で成長したことを受け、今後5年以内に10億ドルの売上に達すると予測されています。そして、2021年には34店舗の新規出店を予定しているアーバンアウトフィッターズ社(以下、UO)。最近の気になる動向を見ていきたいと思います。

「URBAN OUTFITTERS(アーバンアウトフィッターズ)」店舗の様子

フリーピープル、アスレジャーブランドの実店舗展開

 UOグループの中でコロナ禍にも関わらず好調だったのが、フリーピープルのアスレジャーブランド「FP Movement」です。第4四半期の顧客数は前年比138%増加、EC売上は150%増という成長を遂げました。フリーピープルのアクティブウェアラインのEC販売率は第3四半期に70%に達し、姉妹ブランドの中で最も貢献しました。

Free People movement のショップインショップ

 そして、第四半期に、FP Movementの独立店舗をカリフォルニア州とコロラド州にオープンしています。競合店が閉鎖、縮小し、EC販売にシフトする中で敢えて出店に挑むのは、パンデミックの最中でも引き続き好調なカテゴリーであったことにくわえ、また将来的にはフリーピープルと同等の規模に成長することを見込んでいるからです。昨年の売り上げは1億ドル弱でしたが、2024年までに2億5000万ドルを超える可能性があると予想しているようです。カリフォルニアの店舗には屋外イベントスペースがあり、ヨガや瞑想などのイベント活動が行われるようで、ナイキやルルレモン同様、コミュニティを育てながら運営していくといいます。

パンデミックの最中でも顧客獲得に有効だったヴァーチャルアポイント

 UOグループの姉妹ブランド「Anthropologie(アンソロポロジー)」と「BHLDN(ビーホールディン)」では、強固な顧客エンゲージメントによる販売が成功したと伝えられています。コンサルティングが求められるジャンルであるインテリア販売やブライダル提案を、体験型プラットフォームを提供するJRNI社の「仮想店舗アポイントメント」を活用することで、2万5千人を超える顧客とのコネクションを得ることに成功しています。リモートアポイント及びEメールを組み合わせ、パーソナライズされた顧客体験を提供した結果、取引数は25%増加しました。実店舗で予約した人の購入率は40%であるのに対し、仮想アポイントを体験した人の購入率は65%にも及ぶということが分かったそうです。

「BHLDN(ビーホールディン)」のECサイトより

 仮想アポイントの流れは、ブライダルブランド「ビーホールディン」の場合、顧客が予約の種類(花嫁・ブライズメイズ・花嫁の母・アクセサリー)と日時を選択。次にビーチやガーデンなど式場のスタイルをスタイリストと相談します。仮想アポイントはZOOMを使用して行われ、顧客は友達や親など他の誰とでも画面を共有する事ができます。スタイリストと一緒にビーホールディンのECサイトで提案された商品を見ながら、スタイリングやフィット感に関するアドバイスを受けるといった流れになります。JRNIのプラットフォームでは、顧客管理システムやカレンダー、オンライン決済システムと統合しており、予定のキャンセルや再スケジュールが容易に可能となります。

同じマインドの顧客と繋がるポップアップショップの取り組み                                    

 近年、倒産や閉鎖した店舗の空きスペースを利用したポップアップショップの取り組みが予想される中、アーバンアウトフィッターズ社でもユニークな試みが行われています。ブルックリンのウイリアムバーグ店「Space Ninety8」では、規格外のオーガニック野菜やフルーツをサブスク販売する「Misfits Market(ミスフィットマーケット)」との提携で、注文したボックスを受け取る事ができる1ヶ月間限定のポップアップショップを開催しました。このイベントでは、プロデイユースバッグ(生鮮野菜を保存する袋)などのUO社限定商品も購入する事ができます。ミスフィットマーケットには、ユーズドコレクションの販売などサステナブルなライフスタイルを目指すUO社との共通点もあり、両社は2020年12月にパートナーシップを開始。

「Misfits Market(ミスフィットマーケット)」のECサイトより

 本社のあるフィラデルフィアでは、UO、Misfits Market、Mama-Teeとの3社タイアップで、アーティストが設計した冷蔵庫を使用して、新鮮なオーガニック野菜を補完するコミュニティ冷蔵庫を設置、また、今年2月には、バーチャル料理教室も開かれました。フィラデルフィアでは、失業により食料不安に陥っている人々が5人に1人いると伝えられており、一方では、食品廃棄の問題もあります。UO社ではこのような矛盾を排除しようと活動するミスフィットマーケットの使命をサポートし、年間を通じてポップアップショップの展開や冷蔵庫の設置をしていくようです。

 

 アーバンアウトフィッターズ社は今後、顧客の中心であるミレニアル世代とZ世代の現在の境遇とポストコロナのライフスタイルを創造しながら、実店舗が持つ強固なコミュニティとデジタル強化による利便性を掛け合わせての運営となりそうです。若年層を中心にサステナブルを実現していく地道な活動も、企業価値としての評価に繋がっていくのではないでしょうか。

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