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2021.05.28
「CAMP」が提案する子どもの為の
オンラインショッピング
ニューヨーク発、家族みんなで楽しめるサービスを提供する企業「CAMP(キャンプ)」が今月17日、子供がオンラインで安全に買い物ができるEコマースのプラットフォーム「Present Shop(プレゼントショップ)」をローンチし注目を集めています。
「CAMP(キャンプ)」の店舗
日本の小売業やMD、VMDに関わり、この3年の間にニューヨークを訪れている方であれば恐らく一度は店舗視察に訪れたことがあろうCAMPというブランドの店舗。CAMPとは、簡単に説明すると、大人までもがワクワクしてしまう玩具屋さん。同社が取り扱う商材はおもちゃかから、文房具、キッズアパレル、食品まで幅広く展開しています。Eコマースを展開しながら、店舗では家族で楽しめる絵本の朗読などの店頭イベントも顧客から好評のようです。
「CAMP(キャンプ)」のEコマース
一号店は2018年12月にマンハッタンに出店し、現在はニューヨーク州、テキサス州、コネチカット州を含め計5店舗を出店しています。今年も新店舗の出店計画が進んでいるようです。CAMPの店舗では数ヶ月ごとにコンセプトが変わり、毎回ユニークな体験を顧客に提供しています。もちろん創設当初からEコマースもあり、デジタル上でも充実したサービスを展開しています。大人までもがわくわくし、買い物をしたくなるような商品のキュレーション。一方、子どもは楽しみながら学べるアクティビティーやイベントに参加することが出来、開業当初からエクスペリエンシャルストアとして人気のブランドとなりました。
ところが2020年3月、世界的なパンデミックの影響により、アメリカでも同様に小売店舗は一時休業となりました。そこで、店舗でのエクペリエンスが注目されていたCAMPは瞬く間にそのサービスをデジタル上にシフトし、パンデミック禍では顧客が無料で開催できるバーチャルバースデーパーティーなど様々なオンラインイベントを提供しました。顧客とのエンゲージメントを途絶えさせないだけでなく、CAMPというブランドはいかなる形でも子どもを持つ親の強い味方として様々なサービスを届けてくれるという印象を与えたと感じます。
今月ローンチした新サービス「プレゼントショップ」は、子ども(3~12歳)自身が商品を探して選び、それらを親や先生、友人へ、お礼や誕生日、父の日や母の日といったお祝いなどの様々なオケージョンに合わせて贈る(送る)ことが出来るサービスです。また、CAMPでは、子どもが大人同様に自分へのご褒美として買い物をすることも有りだ、と提案しています。例えば、お手伝いをしてくれた、学校の成績が上がった、何かの目標を達成できたなど子どもを褒めてあげたい時、親がご褒美としてこのサービスを活用し、子どもはCAMPのサイトから好きなものを選び自分に送るということができます。子どもが安心・安全に利用できるオンラインショッピングのサービスは、以下の流れで実現されています。
- まず、サービス紹介ページ(com/present)へ保護者がアクセスします。そして、プレゼントの目的、予算、発送方法、決済方法を選択します。その後、一回のみ使用可能な特別コードが発行されます。
- 次に、子どもが特別コードを受け取り、プレゼントショップで商品を選ぶ際に入力することで買い物することが出来ます。責任者が予め設定した予算は “デジタルコイン” 化され、子どもは買い物をする際にゲーム感覚のインターフェースで利用することが出来ます。
- その他、安心できる機能として、子どもがサービスを利用する際には、CAMPが用意するアニメのマスコット「スカウト君」が手順をナビデートしてくれます。また、メッセージカード機能もあり、子どもがデザインしプレゼントに添えることも可能です。
今日では、子どもや若年層が学校教育や私生活の中でパソコンやタプレットを使いこなし、個人のスマートフォンをも持つような世の中です。あらゆる場面で親世代が育ってきた幼少期とは遥かに異なる状況に進化している今、企業は、そのライフスタイルの変化にアダプトしたサービスを提供していかなければ消費者との共通点は益々減ってしまいます。大人だけがインターネットを使うという時代は去り、近年はいかに子どもでも安心、安全に学びながら、パソコンやインターネットの世界を正しく理解できるか、という時代なのだと感じます。子どもにとってデジタルコインはすでに、モバイルゲーム上で遊ぶ際のポイントとして親しみがあるでしょうから、こうしたCAMPのプレゼントショップのようなサービスもなんら違和感がないと思います。手順さえ、楽しく、そして分かりやすく説明してあげることが出来れば、これもまた教育の一つになると私は思いました。
父の日向けのキャンペーン
今回このサービスについて紹介する中で感じたことは、大人向けはもちろん、子ども向けのサービスのいずれもフリクションを感じさせないことがポイントだということです。間違ってはいけないことは、商品の見つけ方から決済までのステップがスムーズであることが第一で、分かりやすさの為に細かく段階を踏み過ぎてしまうことは逆にお客様を遠ざけ、親切なサービスだと伝わらないことも有ります。顧客から質問がありそうな内容は予めFAQにまとめるか、チャットでリアルタイムに対応する形がベストでしょう。
ニューヨークの街が少しずつ元気に息を吹き返していく中、これまで幾度かエクスペリエンシャルストアとカテゴライズされた店舗の様子について聞かれることがありました。あくまでも私から見た印象ですが、エクスペリエンスを中心としたブランド(小売業)ではもとより、顧客とのエンゲージの仕方や、ブランド・商品に対する学びの要素も含めながら顧客がいかに楽しく、便利に買い物が出来るかを理解し、提供しようとしています。その為、パンデミックでフィジカルの場が一時的に停止状態になった状況下でも、ならばデジタルでどのように世界観を実現できるのか?と、思考の切り替えが非常に早かったと感じました。デジタルオンリーにシフトした際に、さらにクリエイティブに物事を考え、色々と試行錯誤した機会があったからこそ、フィジカルの世界とのサービス連動を再開するにあたって、それぞれのサービスがより一層キャンプらしい印象を受けます。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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