PICK UP

2020.12.24

気になった!しかし購入までには至らなかったあと一歩のサービス

 最近、個人的に“一瞬”食いついたサービスが二つあります。一つはアメリカのトップブランド、ラルフローレンのバーチャルストア。そしてもう一つは、アマゾンの新しいカスタムTシャツのサービスです。

ラルフローレン「Ralph Lauren Woodbury Common Virtual Store」

「Ralph Lauren Woodbury Common Virtual Store」の公式サイトより

 ニューヨークが好きで仕事や旅行で訪れたことがある人ならば恐らくご存知なのが、NYの郊外にあるアウトレット「ウッドベリープレミアムアウトレット」の存在。1985年にオープンしたこのアウトレットセンターは、規模拡大を定期的に繰り返し、オープンから35年経った今、出店数が220店舗に至るほどのメガアウトレットとなりました。

 

 ウッドベリープレミアムアウトレットのウィキペディアページに掲載されている情報によると、日本人観光客が最も多いと記されています。出店ブランドの中には日本でも人気のラルフローレンショップもあります。そのラルフローレンが最近、アウトレット店のバーチャルショップをオープンしました。

Ralph Lauren Woodbury Common Virtual Store」でAR機能を使用する様子

 Ralph Lauren Woodbury Common Virtual Storeのサイトでは、米Obsess社のAR/VRサービスを活用しバーチャルショップを開設。ralphlaurenvirtualstores.com/woodbury-commons へアクセスすると、アウトレット店の外観が表示され、入り口にある矢印をクリックし店内に入ることができます。店内の雰囲気は、まるでVRのヘッドセットを装着して実店舗を訪れているかのごとくリアルで、ある意味ECサイトよりも商品の雰囲気を掴めるように思います。バーチャルストアの店内には矢印がいくつも表示され、クリックするごとに売り場を移動できます。また、バーチャル画面で詳細を見ることができる商品には黒いドットのマークが表示されており、それをクリックするとポップアップが表示され商品詳細について確認ができます。しかしここで残念なのが、その画面から買い物ができず、正確に言えば、オンラインショッピングページと連動していない点です。バーチャルオンラインで商品を見ているのにも関わらず、その画面からは決済ができず、同商品を購入するためには「ショップに電話」という案内がされてしまいます。

 

 決して購入できないということではないですが、バーチャル上の店舗に入った時のワクワク感が、オンライン決済できないという現実によって半減してしまったように思います。私が想像するに、おそらく近い将来にこの問題は解決されオンライン決済が可能となると思うのですが、折角このような素晴らしいバーチャルショップを開設したのであれば、ショールームの形に留まることなく、当初からオンラインショッピングのエクスペリエンスまでをフルに体験できていたらと残念でなりません。

 

 ちなみにCoffee n’ Clothesのサイトでは、同様にObsess社のサービスを使い、バーチャルショップからそのままオンライン購入ができるようになっているので参考までにご覧ください。

アマゾンの「made for you」

「made for you」の公式サイトより

 もう一点、一度とても気になったサービスにアマゾンが最近ローンチした「made for you(メイドフォーユー)」のサービスがあります。これは、$25.00(約2600円)でカスタムのTシャツを作ることができるサービスです。そこで、アマゾンのアプリを起動し、made for youのページよりどんな工程で作成できるのか確認してみました。

 

 まず、サイズ情報として「身長」と「体重」を入力。次の画面では「フェミニン」も しくは「マスキュリン」のいずれか、体型を選択します。その後、スマホのカメラ機能を使い等身大の写真を明るい場所で撮影。ここで撮影した写真は、どうやらアマゾンの3Dボディースキャナーを使い解析されるようです。写真を撮影する際には、体にフィットした服を着ていること、靴は脱いだ状態であることが大切なようです。また、髪が長い場合は縛っておくようにと書かれています。

 

アマゾンのアプリでTシャツの色や素材を選ぶ

(「made for you」の公式サイトより)

 

 次に、Tシャツについての質問になります。8色の中より選択し、薄手の素材もしくはやや厚手の素材のいずれかを選びます。ちなみにやや厚手の素材は100%Pimaコットンですが、薄手のタイプはコットン他混合素材です。その後「ショート」、「ミディアム」、「ロング」から着丈を選択し、「スリム」、「クラッシック(レギュラー)」もしくは「リラックス」からフィット感を選びます。襟元は「クルーネック」と「Vネック」、袖は「ショート(半袖)」と「ロング(長袖)」がいずれも用意されており、好みのスタイルを選ぶことができます。そして最後のステップでは、ネームタグに文字を入れ(Max9文字まで)、より自分好みのデザインを演出する事が可能です。

 

 このように、5分もあれば必要なステップは完了するので、簡単にカスタムTシャツの注文ができます。なお、注意事項によると、全身撮影の際に提出した写真データは、アマゾン側で保存することはなく、直ちに削除されるということです。今回の新サービスの立ち上がりに際しては、ブレイク・スコット(@blackscott)やキャラリン・ミランド(@caralynmirand)、サイ・デ・シルヴ(@scoutthecity)など数十万人のインスタグラムフォロワーを持つインフルエンサーを起用した宣伝を実施しているので参考までに彼らのインスタグラムもチェックして見てください。

 

 サービスとしては「簡単」かつ「手頃な値段」ですし、「サイズは間違いない」ので作っても無駄にはきっとならないでしょう。ただ最近は、サステナビリティーについて考える機会も多く、サービスの良し悪しというよりは、“本当に新しいTシャツが今必要なのか“と立ち止まり、今回は購入に至りませんでした。

 

 パンデミックを通じ、色々な事が変化しました。進化したことにおいては快適になったサービスも多いですが、体験をする中では、今回のバーチャルストアの様に、オンライン決済までできない点を少し“惜しい”と思ってしまいます。また、コロナ禍で無視できない環境問題を思うと、サービスとしては便利であるものの、Tシャツを買うきっかけに気持ちを向けられないような自分もいます。なんだか色々な意味で難しい時代になりましたね。


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

アパレルウェブ ブログ
■ お仕事のご依頼
取材/記事執筆、マーケティングリサーチ、コンサルティング、その他お問い合わせ、ご相談はこちらから。

メールマガジン登録