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2021.01.08

コロナショックから立ち直りつつある中国、中国のトレンドを生み出すZ世代の特徴に迫る

アパレルウェブ「AIR VOL.42」(2020年12月発刊)より一部の内容を抜粋して転載しております。

中国のZ世代に人気のブランドDONG FANG(ドンファン)

 2020年11月末、香港現地の新聞社によると、中国では上海などの主要都市の経済が新型コロナウイルスが発生する前の状態までほとんど持ち直した、あるいは経済が正常化に向かっていると報じられています。ここで正常化へのカギを握っているのが、中国のZ世代です。2019年末の時点で、Z世代の消費者がすでに中国全体の消費人口の約4割を占めており、ファッションやコスメなどのカテゴリでも総支出金額の約4割がZ世代によるものです。さらに近い将来、中国市場全体の約半分の支出をZ世代が占めるという予測もされています。今回は中国のZ世代のライフスタイルや特徴を解説しつつ、Z世代に支持されているブランドの取り組みについてレポートします。

中国Z世代は消費の牽引役だけではなく
消費トレンドそのものを作り出す

中国の伝統文化と現代ファッションを融合したスタイルがZ世代の間で人気になっている

 sohu(ソーフゥ)という中国のニュースメディアが2020年の4月にZ世代の若い男女20名を集めて、「新型コロナウイルスによる消費意識の変化」をテーマとした座談会を行ったところ3つの特徴がわかりました。1つ目は「中国の新興ブランドを、積極的に支持している」ということです。一昔前の世代のように、海外の高級ブランドへの憧れはそこまでなく、Z世代は中国の新興ブランド、特に小規模のブランドを積極的に支持しています。この現象は「国潮(発音:ゴゥチヤウ、意味は中国発の流行、トレンド)」と呼ばれています。新興ブランドの特徴は、中国の伝統文化と今の時代のデザインや機能性を持ち合わせているところです。代表的なブランドは以前何度かAIRで紹介した「LI NING(リーニン)」、中国の伝統衣装「漢服」と現代ファッションを融合したブランド「DONG FANG(ドンファン)」、そして11月末にニューヨーク証券取引所で上場を果たした中国初のD2Cコスメブランド「Perfect Dairy(中国語名:完美日記、2017年設立)」です。

 

 2つ目の特徴は「大手マスメディアの情報より、自分の信頼できるSNSやKOLなどから情報を取得して、実際の体験を大事にしている」というところです。これまでの世代は著名人、タレントによるマスメディアの広告を信頼していましたが、Z世代はマスメディアから離れ、動画サイトのbilibiliやWeChatなどのSNSを中心に自分が信頼できるKOLから、情報や商品を探すようになってきています。また、ライブコマースで購入した商品が、実物と違うという体験から、試着をして購入する為にリアル店舗に行く人も少なくありません。大手マスメディアが発信する情報以上にKOLからの情報や店舗での体験を重視していることがわかります。
 

 最後の特徴は「ブランドの知名度より、商品の実用性や背景を重視して購入する」という点です。ブランドの大きさや知名度に関わらず、自分のライフスタイルに適した商品を選びます。今までの世代は、商品のクオリティより、大手ブランドの看板を購買の判断基準にしていました。一方で中国のZ世代は大手ブランドが発売している商品だからという理由だけで商品を購入しません。ブランドの大小問わず、自分にとって本当に必要な商品や納得、共感できる商品を選択します。また、欧米諸国のZ世代と同様、中国のZ世代もサステナビリティへの意識が高く、ブランドの生産背景や労働環境といった要素も購入の意思決定に大きく影響します。

万国共通で重要なのは「コミュニケーション」「共感」

「Perfect Diary」の公式ページより

 ここまで、中国のZ世代について、3つの特徴を紹介しました。まとめると、Z世代は大手メディアからの情報を待つのではなく、SNSやKOLの情報に自分のフィルターをかけて、共感する商品を購買する。また、国内の新興ブランドを支持する傾向にある。ということです。そのため中国のZ世代に対しては、ブランドは「共感できるストーリーや取り組みをしていく」「SNSを活用したコミュニケーション、情報発信」の2点が重要となります。ここで具体的例を一つご紹介します。

 

 先ほどもご紹介したコスメの「Perfect Dairy」は、ユーザーの要望で商品を作るという経営理念のもと、WeChat、ドウイン(TikTok)、小紅書(RED)などのSNSからユーザーの要望を拾い、約2週間から1ヶ月で商品化させ、ユーザーと共にブランドをつくっています。ユーザーの声を反映させた商品づくりは、言い換えるとユーザーを巻き込んだ取り組みと言えます。他ブランドと比較して共感を得やすい仕組みが整っているということです。実際にこのブランドは顧客であるZ世代から絶大な支持を受けています。お客様の声をどの程度商品に反映させるのか?といったバランス感覚や数週間で商品として発売するスピード感など、一朝一夕に取り組めるものではありませんが、共感を得るにはお客様の視点を持ち、ともにブランドを成長させていくということが重要であるとわかります。

 

 また、「Perfect Dairy」はSNSを戦略的に運用し、コンテンツを出し分けています。ドウインでは、ライブコマースに特化して運用。WeChatでは、ユーザーの声をもとに開発してる商品の進捗報告や新商品、新サービスの発表が中心です。この2つのSNSの効果的な活用が顧客とのコミュニケーション、情報発信には欠かせません。実際に、中国ではWeChatはZ世代の約7割以上が利用。またドウインに関しては、1日あたりのアクティブユーザーの約3分1がZ世代です。もちろん、この2つで情報を配信するだけで認知が広まる訳ではありません。「Perfect Dairy」は、ユーザーのニーズを知る、ユーザーとのコミュニケーションを取るために、WeChatやドウインを活用しています。その結果としてSNS上でのコンテンツや配信数は、国内のコスメブランドの中では最多となり、ブランドの認知度がZ世代を中心に高まっているのです。つまり、フォロワーを集めることを目的とした訳ではなく、ユーザーとのコミュニケーションを重視した結果、コンテンツの増加やフォロワーが伸び、認知拡大に繋がったということです。Z世代をターゲットとするとき、特にコミュニケーションを重視するという意識は全世界共通のポイントではないでしょうか。

このコンテンツは弊社の会員誌「アパレルウェブイノベーションレポート」の42号から転載しております。

 

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