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2017.01.26

【ロンドンメンズ17秋冬】街もコレクションも「カモフラージュ柄」の先へ

 2017年の年明けの後すぐ、1月6日から4日間にかけて行われたロンドンファッションウィークメンズ。およそ50のブランドが参加して行われたメンズの最新コレクション発表の場。たくさんのブランドデザインと会場に集まるファッション関係者から見えた、ロンドンファッションの傾向に注目しましょう。

マハリシ(maharishi)

カモ・カモ・カモ!メンズの柄モノはカモフラージュ柄が肝

 レディースにてミリタリーファッションがトレンドとなり露出されたのが数年前。その後、メンズファッションにも流れるようにミリタリースタイルは広がりを見せています。と言っても、メンズファッションのデザインヒントとなるものはミリタリーやビンテージファッションが中心。トレンドになる・ならないに関係なく一定数のミリタリーファッションが登場することは当然となっています。それでも今回のロンドンファッションウィークメンズではミリタリーファッションが目立った結果となりました。

 特にミリタリーファッションとして分かりやすいカモフラージュ柄。前シーズンからカモフラージュ柄を扱うブランドがあり、トレンド傾向としては当コラムでもご報告済みですが、そのままの流れで今シーズンも増加。誰もが「カモフラージュ柄=ミリタリーファッション」と連想できる、分かりやすい形でトレンドとなって登場しています。

リアムホッジス(Liam Hodges)

多種多様にアレンジ!それもカモ柄の魅力であり持ち味

 最初に“カモフラージュ柄”はとても特殊な柄であることをおさらいしましょう。

 軍用として開発され、「いかに敵から身を隠せるか」「いかに目立たないようにするか」を追求してたどり着いた柄。使用された時代や場所、国によって様々な種類があるバリエーション豊富な柄でもあります。これがファッションとして応用されると、色や柄のパターンをアレンジすることや、ブランドオリジナルのカモフラージュ柄を作ることも可能。

 今回は秋冬シーズンということもあり、素材をよりアウターに適したモノにアレンジしたデザインも見られました。逆に、こだわりを持って◯◯年代の軍隊が使用したカモフラージュ柄をそのまま再現することも可能。レディースファッションよりもデザインのストーリー性が重要視されるメンズウェアに適したアプローチの方法です。

 このようにアレンジ方法は無限に広がり、デザイナーにとっては表現方法が広がる素材でもあります。オリジナリティーが出しやすい柄であること、ミリタリーファッションが支持されていること。2つの流れからたくさんのブランドが採用したデザインとなりました。

柄の配色や素材、カモフラージュのパターン次第で自由な表現が可能に。ストリートなスタイルのクリストファーレイバーンは、アウターにアレンジ。ミリタリーファッションをベースとするマハリシは本格的なカモフラージュ柄。モードなスタイルのマシューミラーは創作的な曲線でアレンジしています。
(上段)クリストファーレイバーン(下段左から)マハリシマシューミラー

ストリートもカモフラージュ柄で“目立つ”スタイルがトレンド

 身を隠すために開発された柄でありながら、ストリートのファッションではより“目立つ”アクセントとして取り入れられているカモフラージュ柄。ミリタリーファッションが広く支持されている中で、ロンドンのストリートもカモフラージュ柄の人口が増加しています。その大半がミリタリージャケットやマウンテンパーカーなどのストリートカジュアルなアイテム。取り入れ方もビンテージ感がしっかりと出た古着のカモフラージュアイテムというよりも、アウトドアブランドやデザイナーズブランドなどが手がけた比較的キレイめなスタイルがメインとなっています。柄のデザインも多彩で、1枚羽織ればアクセントとなる存在感が魅力。

 メンズファッションに限らずレディースファッションでもカモフラージュ柄が広がっており、昨シーズンまでのライダースジャケットやスカジャンに変わるアウターで遊びたい人たちが取り入れている様子です

ロンドンのストリートを色付けたのもカモフラージュ柄。メンズだけでなくレディースファッションでも「グリーン・ブラウン・ブラック」の配色が目立ったコーディネート。メンズはミリタリージャケットやマウンテンパーカーがメインであり、レディースはブルゾンスタイルが多数派の傾向となっていました。

“機能性追求”が加速!ミリタリーからアウトドアへ

 ミリタリーファッションがトレンドとして注目される中で、次の一手となる方向性を示しているのがアウトドアディテールのデザインです。ミリタリーファッションと同じく機能性を追求したデザインや素材が魅力的であり、メンズファッションとも相性が良いスタイル。

 

 様々なブランドが、トラッドなファッションにアウトドアをプラスすることや、モードやストリートなファッションにアウトドアなテイストをミックスするクリエイションを手がけています。

太くアレンジ!ディテールにアウトドアロープ

プライベートホワイトV.C.(PRIVATE WHITE V.C.)

 アウトドアのスタイルをさりげなく、そしてスタイリッシュに取り入れたブランドが、プライベートホワイトV.C.(Private White V.C.)です。 英国らしいトラッドなスタイルに一見マッチしなさそうなアウトドアなディテールをミックス。

 注目したのがクライミングや山登りで使うロープ。視認性を高めるためにカラフルな配色が特徴的なロープをジャケットやコートスタイルに取り入れています。カラーもパンツやチェック柄の配色とマッチする色合いで、自然と溶け込んだアウトドアが新しいスタイルを感じさせます。

 また、同じくロープスタイルを採用したのはクレイググリーン(Craig Green)。こちらは太く練り上げたようなロープをウエストや首に巻きつけたスタイルを提案。ふんわりとしたアウターの素材にきつく縛り付けられたロープのディテールがデザイン的にもシルエット的にもメリハリを与えています。

プライベートホワイトV.C.は大胆にもトラッドファッションにアウトドアロープを組み合わせたスタイリングを披露。ロープのカラーリング次第で全体的にマッチするファッションに仕上がっています。クレイググリーンは太いロープモチーフに視線が集まるデザイン。
(左から)プライベートホワイトV.C.クレイググリーン

視線を集める絶対的なビビッドカラー

リアムホッジス(Liam Hodges)

 安全面や利便性を考え、アウトドアアイテムに取り入れられるビビッドカラー。注意力を高めるため、視線をしっかりと集める役割を果たすカラーリングです。このビビッドなカラーが今回のロンドンファッションウィークメンズのブランドにも登場。リアムホッジス(Liam Hodges)やクリストファーレイバーン(Christopher Raeburn)などストリートスタイルのファッションを提案するブランドにて取り入れられています。

 現在のトレンドとなっているミリタリーなファッションや、メンズファッションでメインのモノトーンスタイルと組み合わせることも簡単であり、何よりもコーディネートにメリハリが生まれるカラーリング。次回のシーズンでは、さらに他のブランドからもビビッドカラーアイテムが増える予感がするコレクション内容でした。

リアムホッジスクリストファーレイバーンのように、全面にビビッドカラーを使用したデザインから、ケイスリーヘイフォードのように襟元にワンポイントのみ使用したデザインも見られた。
(左から)クリストファーレイバーンケイスリーヘイフォード

機能性とデザイン性を考えた自由自在のドローコード

コットワイラー(COTTWEILER)

 今回のロンドンファッションウィークメンズに参加したブランドの中で目立った機能的デザインがドローコードを連想させるディテールです。バッグの開閉はもちろん、フードやウエストのシルエットを調整するためにも取り入れられています。

 

 このドローコードのディテールも、アウトドアウェアなどで頻繁に取り入れられるスタイル。レディースファッションとは違い、デザインに制限が多いメンズファッションの中で、シルエットやデザインのアクセントとして工夫がしやすいテクニックのひとつ。より創作的に、よりオリジナリティーあるデザインを追求したデザイナーがドローコードスタイルにたどり着いています。

アウトドアアイテムに欠かせないドローコードスタイルが、今回のメンズファッションに多用。自由な着こなしが可能となり、着る側の好みによってシルエットの変化が楽しめる仕様がポイント。
(上段左から)フィービーイングリッシュクレイググリーン(下段左から)チャールズジェフリーラバーボーイマハリシ

雇用問題が深刻化!コレクション期間中の地下鉄ストライキ

 今回のロンドンファッションウィークメンズで起こった最大の事件は「地下鉄の大規模なストライキ」です。原因は、地下鉄職員の人員削減と駅窓口縮小に抗議するもの。

 最も地下鉄が混む週明けの月曜日。そして天気は雨。狙い撃ちされたストライキの実行日はロンドンファッションウィークメンズの最終日でした。朝から地下鉄はストップしており、車は渋滞。地下鉄はもちろんバス・タクシーなど全ての交通機関が麻痺。そのため、ショーのスケジュールは朝から大幅に遅れる事態となりました。

 ロンドンファッションウィークメンズのオープニングに参加し、スピーチをしたロンドン市長のサディク・カーン氏。こんな事態となることを、この時すでに知っていたのでしょうか。


 

 

高嶋 一行(たかしま・かずゆき)
ファッションライター

 

ロンドンのELEY KISHIMOTOにてデザインアシスタントを経験後、日本では海外ブランドのセールス・PRエージェント会社に勤務。 現在はイギリスに戻り、英国を中心としたファッション記事を執筆中。 現在、ファミリーセールやサンプルセールの情報サイト「tokyosamplesale.com」(毎日更新)も運営している。

 

tokyosamplesale.com

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