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2017.02.08

メイシーズやノードストロームはディスカウント戦争に勝てない【オフプライス業態2017】 2017.2.8

 大規模な店舗縮小プランでサバイバルを余儀なくされるデパートやアパレルチェーンと対照的に、実店舗の存在が成長に不可欠であり、更に店舗拡大傾向にある業態がオフプライス店。通常価格の40~70%オフという圧倒的なバーゲンバリューとトレジャーハンティングの要素で消費者を引きつけ、今年も6~7%の成長が見込まれています。中でも、TJマックス(TJ-Maxx)、ロスストア(Ross)、バーリントン(Burlington)、ノードストロムのラック(RACK)の4店舗は、株価、売り上げともに、他を凌ぐ勢いを持続しています。

 

 昨年7月にNPDグループが発行した「チェックアウト・トラッキングデータ」によると、米国消費者の3分の2が、オフプライス店の店頭で買い物をしていることが分かっています。この業態がなぜ成長しているのか、メイシーズやノードストロームなどのオフプライス業態も含め、なぜまだまだ成長を続けることができるのでしょうか。

低所得者から中高所得者まで なぜオフプライス店で買うのか

 2016年、アパレル企業の多くが苦戦しましたが、時代とマッチしたマーケティングで消費者の心をがっちりつかみ、成長している企業があります。

 

●エブリデイーロープライスで毎日がバーゲン

 

 セール時期を待つことなく、常にオリジナル価格から最大で70%オフの低価格。プライスの二重表記で、ディスカウント価格が一目瞭然。ハイブランドの商品も20~60%オフになっており、スタイリッシュな商品も扱っている。

 

●商品の回転の早さとFOMO感情

 

 発注から入荷まで、リードタイムが長いアパレルやデパートに比べ、週に3~4回の入荷があり、一定期間で売れない商品はクリアランスコーナーに即移動、常にフレッシュさを保っている。動きが早く新商品への入れ替えが早いため、FOMO(Fear of Missing Out)―その時に買わなければ次はない、見逃してしまう、という恐れの心理が働いている。

 

●利便性の良いロケーション

 

 スーパーマーケットが入っているようなロードサイドモールに隣接していることが多いため、消費者が出入りしやすい身近なロケーションにある。

TJマックスが独走 上位オフプライス店の売り上げ

ストア名 年商(2015) 前年比 9ヶ月間(2016) 既存店成長率
TJマックス 300億9,500万ドル 6.8% 237億ドル 5%
ロスストア  110億9,000万ドル 8% 94億ドル 4%
バーリントン 51億ドル 6.2% 38億8,000万ドル 2.1%
ラック 35億3,000万ドル 10% 25億7,000万ドル N/A

 上記オフプライス店の売り上げはいずれも前年比からプラス成長しており、昨年10月29日付け9ヶ月間の売り上げは、いずれも8%以上の成長率。これに最後の四半期の売り上げが加わるわけですが、2016年通年でTJマックス(7.2%) 、ロスストア(7.3%)、バーリングトン(8.6%)の成長が概ね見込まれています。TJマックスは、2015年に初めてメイシーズの売り上げを追い越しました。

飽和状態も時間の問題!? 店舗拡大の勢いが止まらない

ストア名 店舗数
(2016)
オープン予定
(2017)
長期プラン
TJマックス(米国店舗のみ) 2,785 40~60 5,600
ロスストア 1,535 80~90 2,500
バーリントン 591 30 1,000
ラック(Nordstrom) 215 50 データなし

 TJマックスの内訳は、TJマックス(1,156店舗)、マーシャルズ(1,007店舗)、ホームグッズ(568店舗)。カナダ、ヨーロッパ、オーストラリアの海外店舗(1054店舗)を加えると、トータルで3,785店舗を運営。ロスストアは姉妹店の「dd’s ディスカウンツ(dd’s DISCOUNTS)」と合わせ、昨年は84店舗をオープン、今年も同様のペースでの出店を予定しています。バーリントンは昨年25の新規店舗をオープンしています。他にもオフプライス業態のストアは存在しますが、上記4店舗のトータル店舗数は、5,126店舗。そろそろ飽和点に達する可能性もあるのでは!?と思わせる勢いです。顧客受けナンバーワンのノードストローム「ラック」の店舗数は、レギュラー店より100店舗以上も上回っています。

約2万社から商品供給 “在庫安定化”を強みに成長

 商品サプライヤーとの密着したコネクションによる、ローコストでの仕入れ構造があります。例えばTJマックスの場合、アパレルからファッション雑貨、家庭用品、食品、電化製品、モバイルアクセサリーに至るまで、およそ100カ国・1万8,000社以上のベンダーソースから仕入れを行っています。基本は、製造業社が過剰生産した在庫商品や、アパレルやデパートのキャンセル商品を購入しているということですが、3,000店を超える店舗へ供給するため、TJマックスのためだけに製造された商品があるといいます。アパレルでは70~80%以上を占めると言われており、在庫の安定化がバックボーンにあります。

オフプライス業態の巧みな在庫コントロール

ストア名 在庫回転率 在庫回転日数
TJマックス 6.4x 51.7
ロスストア 6.1x 59.2
バーリントン 3.9x 93.5
ノードストローム 5.0x 73.0
メイシーズ 3.0x 121.6
コールズ 3.1x 116.5
JCペニー 3.0x 121.1

資料:Market Realist 2015年の在庫回転率

 上の表は、マーケット・リアリスト社の資料から、オフプライス店の上位4社およびデパートの在庫率と在庫回転日数を抜粋したものです。1年に何回在庫が入れ替わっているかを示していますが、在庫回転率が高いほど売り上げにつながり、マークダウンせずに販売できるため、高いマージンをキープできます。また、在庫回転日数が短いことで在庫にかかるコストカット、商品の劣化を避けることが可能となります。TJマックスとロスストアは、その両面において優れており、リードタイムの長いデパートグループは逆に劣っていることがわかります。

デパートやアパレルはディスカウントゲームに勝てない

 デパートが運営するオフプライス業態には、ノードストロームの「ラック」以外にも、サックスフィフスの「オフフィフス(OFF5TH)」やニーマンマーカスの「ラストコール(LAST CALL)」、メイシーズの「バックステージ(Backstage)」、コールズの「オフアイル(OFF/AISLE)」、ロード&テイラーの「ファインド ロード&テイラー(Find@Lord&Taylor)」が登場しています。しかし、自社在庫をベースに販売することで、レギュラー店の商品と共食い状態となり、本業のビジネスを脅かすことになるデパートと、ローコストオペレーションで運営が可能なオフプライスを本業とする業態は大きく異なります。デパート勢はオフプライス商品が売れれば売れるほど利益率も下がり、レギュラー店と両方繁栄することは非常に難しいですが、TJマックスなどの本業グループは自社のビジネスを傷つける要素がないのです。

 

 売却の噂が飛び交っているメイシーズの「バックステージ(Backstage)」は、2015年に6店舗をオープン後、2016年には22店舗に拡大。今年はさらに、45店舗をオープンする予定です。また、これまでは自社在庫のみで運営していましたが、ハイエンドスクーターや子供用の車などの玩具、フィギュアやペット用アクセサリーなどのホームグッズなど、メイシーズでは取り扱いのないカテゴリーを13店舗で販売。加えて、オフプライス店で売り上げがよく、行列を作るような人気プロダクトの商品カテゴリーを取り入れてテスト販売することも計画しています。

 

 今年も仕入れ力のある4社は好調にスタートしているようですが、続々と店舗が増加していく中、各ストアの動きや消費者の反応を注視していきたいと思います。

■ TJマックス http://tjmaxx.tjx.com/store/index.jsp

■ ロスストア https://www.rossstores.com/

■ バーリントンストア http://www.burlingtoncoatfactory.com/

■ ラック https://www.nordstromrack.com/

■ メイシーズ http://www1.macys.com//

■ コールズ https://www.kohls.com/

■ JCペニー http://www.jcpenney.com/


 

 

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