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2017.01.25

「ナイキ」と「アディダス」のNY新ショップに見る ストアエクスペリエンスの極意

 2016年後半は「ナイキ(NIKE)」そして「アディダス(adidas)」といった2大スポーツブランドがニューヨーク・マンハッタンにフラッグシップストアをオープンし、話題となりました。

 

 「ナイキ」が昨年11月にストアをオープンしたのはダウンタウンのソーホー地区。 ブロードウェイ通りとスプリングストリートの角地という最高の立地条件に、5階建て、敷地面積約5,100平方メートルの大規模なストアをオープンしました。

 メンズ、そしてウィメンズのシューズやウエア、スポーツグッズなども揃い、商品を「見て」、サービスを通じて「学び」、履き心地を試すなど「体験」もできる。あのストアに行ってみたい!そんな風に思わせる新ストアです。

ミッドタウンに世界最大の「アディダス」ストア

 一方、5番街では、アディダスの店舗として世界最大のストアが12月に開業しました。NYを象徴するブライアントパークとロックフェラーセンターのちょうど中間辺りです。現地靴業界紙の「フットウェアニューズ」によれば、新店舗はハイスクール(高校)のスタジアムにインスパイアされデザインしたそうです。

ここにしかない!を体験

 アディダスのフラッグシップストア店内には、スポーツの試合がライブ観戦できる大型スクリーンや、ロッカールームをイメージしたフィッティングルームなど、店内の至るところでスタジアムらしさを体験することができます。

 

 ストア全体はブラックとシルバーのモノトーン。各階に上がる階段やレジ周りの金網は、ニューヨークのダウンタウンに見られるバスケットボールコートのよう。1階から2階へと上がる階段の途中にはラウンジエリアもあります。

 そこにはアディダスの創業者であるアドルフ(アディ)・ダスラーの銅像があり、一緒に記念撮影ができます。普通に撮るもよし、私のようにシーティングの正面に設置されたモニター越しに撮るもよし。ニューヨークにある店舗でもここでしか体験できない、ファンにはたまらないスポットです。

 

 また、1階にはコールドプレスジューサリーやスムージー、ベイクグッズなどを作るブルックリン発の「グラスルーツジューサリー(Grass Roots Juicery)」があり、アディダスと共同で作ったコールドプレスジュースやパワーバーを買うことができます。

 ソーホーにオープンしたナイキの新ストアでは、ニューヨークのシンボルをスニーカーに刻印したり、Tシャツなどをプリントしたりなどパーソナライズした商品をつくることができるスタジオ「Nike by NYC」を設けています。

 ストアのオープンを記念して、ニューヨークのローカルアーティストであるグロテスク(Grotesk)やフィリップ・T. アナンド(Phil T. Annand)、ジェイソン・ポラン(Jason Polan)とコラボレート。彼らのイラストがパーソナライズできる特別感がこの店にはあります。こうした“ニューヨーク限定”ものは、アディダスでも展開しており、Tシャツやペナント、ポスターなど、お土産にも最適なアイテムが揃っていました。

買う前にじっくり体験 「知り尽くす!」が未来のリテールの形

 ナイキ、アディダスともに、スニーカー売り場には ランニングマシーンが設置されています。走るシーン(環境)などを設定し、その履き心地を試すことができるのです。また、売り場にいるスタッフに気軽に悩みを相談することもできます。自分に合ったスニーカーを知り尽くした上で購入を決断できるのは、ストアを訪れたからこそ得られる満足感です。

 

 私がアディダスのストアを訪れた時には、歩き癖で足のどの部分が痛くなるか、といった相談に乗ってくれたり、ストレッチやマッサージの仕方まで丁寧にアドバイスしてくれました。

 

 ストアという場所が“学びの場”という意味を持つと、ブランドとお客様との関係を深めるチャンスを生むきっかけとなります。そして、それはどの業態でも取り入れることができる顧客サービスです。

 

 ひと昔前のスポーツ関連のストアは、ある程度買いたいものがあったり、気になっている商品を見に行ったりと、目的を持って訪れる人が多かったと思います。私も確実にそのひとりでした。

 

 それが、ナイキやアディダスといったメジャースポーツブランドの最新ストアを見てみると、“体験”や“学び”、そしてパーソナライズされた商品を注文するといった“楽しみ”や“クリエーション”が加わり、色々な角度からブランドの強みやよさを伝える、進化したストアの形になっていることがわかりました。

 

 大手だからできること…と考えるのではなく、形や規模は小さくても、これからのストアのあり方として、この3つのポイントを意識した店舗づくりを試してみると、ブランドと顧客との関係をより深める、そんな場面を生み出す場所として活かすことができるでしょう。


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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