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2020.02.10
【コレクションレポート】ハーフレイヤードの洗練トリッキーパターン 「チノ」2020秋冬コレクション
「チノ(CINOH)」(茅野誉之デザイナー)が2020年2月7日、2020秋冬コレクションを発表した。2020秋冬シーズン向けに東京で発表される有力ブランドとしては最も早い時期のファッションショーとなった。1月にパリでお披露目済みのメンズコレクションを含めた、メンズ・ウィメンズの合同形式だ。
洋服を自分らしく身にまとうことやコーディネートという自分自身のスタイルに洋服を調和させる行為からインスパイアされたディテールを落とし込んだ。そういった意味を込めて、テーマには“compatible(「適合」「調和」という意味)”を選んだ。
自然光があちこちからランウェイに降り注ぐ、天井の高い空間に、縦長で伸びやかなシルエットが映えた。全体にアシンメトリーですっきりした印象。秋冬向けなのに、重たさやかさばりを感じさせない落ち感あるフォルムが印象的だ。
今回のコレクションを象徴するウェアは、右側の身頃だけが二重になっているジャケットだ。「ハーフレイヤード」とも言えそうな、通常の打ち合わせの上から、もう1枚の身頃を重ね、半身分だけレイヤード風に見せている。「1.5枚服」とでも呼べそうな、一見、トリッキーなこしらえだが、スマートに仕上げた。
重ねた半身の部分は、表裏をひっくり返して、今度は背中側に回すと、裏地が表地に様変わりして、別の景色が生まれる。第一印象は目を驚かせるが、むしろ全体がまとまって映る。
カシュクール風に身頃を半分重ねたジャケットにも「1.5枚服」のアイデアが盛り込まれた。正面ボタンの打ち合わせも少しだけイレギュラーにずらすようなアシンメトリーの工夫があちこちに施されている。
ニットのセットアップは着心地や使い勝手に優れる。編み地に表情と起伏があり、一般的なスーツに比べ、朗らかでヒューマンなたたずまい。チェック柄のシアー素材のブラウスやオーバーサイズのアウターには艶めいた黒スカートをあわせて、ストリートエレガンスを表現している。
メンズは程よいオーバーサイズがリラックス感を思わせ、大人も着やすい提案だ。ウィメンズと同じく黒やグレーと好対照のオレンジが印象的に差し込まれている。ロゴ入りの大判ショールを片側の肩から垂らしかける演出もメンズ・ウィメンズの両方で披露された。
1990年代のパリコレで見られた、ミニマルでありつつ、どこかちぐはぐなイメージの装いにヒントを得ているようだ。以前からミニマルストリートラグジュアリーのテイストで人気を博している「チノ」が、パターンの持ち味を生かしながら、大人のウィットを添える試みがコレクションの鮮度を高めていた。
取材・文:宮田理江
撮影:野村亜紗子
宮田 理江(みやた・りえ)
複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。 コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。
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