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2020.01.28
【パリメンズ 2020秋冬 ハイライト3】驚きの演出でゲストを圧倒するデザイナーたち
写真:アンダーカバー
ファッションショーは、単なる新作のお披露目だけでなくそのシーズンのコンセプトや世界観をゲストに体感してもらうもの。どのショーも、スタイリング、ポージング、音楽、映像など様々なアートやパフォーマンスを集結した総合芸術とも言える。最高レベルのショーが、次々と行われるパリだが、毎シーズン話題となるショーがある。本記事では、現地のプレス陣で特に話題にのぼった6つのショーを紹介する。
アンダーカバー(UNDERCOVER)
高橋盾による「アンダーカバー」は、冬のサーカスを会場に最新コレクションを発表。ショー冒頭、途中、そして最後にモダンバレエのダンサーたちが、和の世界を思わせる舞を披露。
これは黒澤明監督の映画「蜘蛛巣城」からインスパイアされたもので、コレクションも和のテイストを注入したルックで構成しているが、あくまでも1つのルックの中にエッセンスとして取り入れているだけで、アイテムごとにみるとモダンでウェアラブルだ。
着物身頃のスウェットは、ジップアップにすることでスポーティ&カジュアルに。和柄の菊のプリントのブルゾンとチェックのベスト、菱形プリントのシャツの組み合わせは和を感じさせながら非常に新鮮な印象。こんな解釈の仕方があったのか、と驚かされる。
鎧を再構築したようなライダースや、羽織風のジャケット、「蜘蛛巣城」の一シーンをプリントしたブルゾンやパーカーなど、そのどれもが力強い魅力を放っている。同時に発表されたレディースのルックも、同じく和の世界で統一し、特にドレスの美しさに目を奪われた。
シンディ・シャーマン作品をモチーフにした先シーズンから一転したコレクションだったが、「アンダーカバー」らしいクリエーションに変化はなく、更なる前進を印象付けた。
Text by Tomoaki Shimizu
ダブレット(doublet)
井野将之による「ダブレット」は、北マレ地区のギャラリースペースでミニショーを開催した。2018年にLVMHプライズでグランプリを獲得する前年より、展示会でコレクションを披露していたが、満を持してショー形式で服を見せ、ポジティブで鮮烈な印象を残した。
ファミリーレストラン風のインテリアをセットし、「We are the world」が流れる中、様々なアイテムをまとった様々な年齢・性別・体型・背丈のモデルが登場し、日本から運び込んだ食品サンプルを手にして着席。アイコンとなっているハンドペイントのエコファーコートにはタージマハルが描かれ、インディアンのラッキーチャームであるドリームキャッチャーをあしらったニットやカナダのレクリエーション施設の見取り図をプリントしたショール、パンダと北京の文字を刺繍したジャケットなど、互いに関連性の無い、しかし「世界」を感じさせるアイテムが登場。摩訶不思議で楽しい世界観に、観客たちは笑顔を浮かべながらも圧倒されていた。
Text & Photo by Tomoaki Shimizu
オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)
「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」のプリーツラインである「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」の最新コレクションは、ポンピドーセンターで発表された。今季もダニエル・エズラローが演出を手掛け、ダンサーとミュージシャンを巧みに配した、エンターテイメント性の高いショーとなった。
ジャズ・ミュージシャンがモデルとして登場したシリーズは、
そして今季は「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のアウターウェアーズも登場。ボリューム感のあるシルエットに反して、フラットに畳むことが出来るのが特徴。パリのシューズショップAnatomicaが関わるWakouw
Text by Tomoaki Shimizu
「ヘンリック・ヴィブスコフ(HENRIK VIBSKOV)」
2020秋冬コレクションのテーマは”バスルーム”。会場の中央の数々のバスタブ、正面には3つのオリエンタルなシャワーブースを設置し、中に入ったパフォーマーが静かに動く。そのような独特のムードの中、ショーをスタートした。
コレクションもビンテージバスルームの内装をイメージしたオリジナルデザインのジャカードや、流れる水、シャボン玉、蒸気や水滴にインスパイアされた光沢のある素材、曇った鏡を通して撮影された花のプリントなど、テーマを様々な形で表現した。そしてそれらはどこか懐かしく、ブリティッシュムードの中にもオリエンタルな印象を与える。また、「Please Remove Before Washing(洗濯前に取り外してくださいの意)」という注意書きのブリントが、コレクションに遊びのアクセントを効かせている。
今シーズン、100%リサイクルされたペットボトルで作られたアウターウェアや、ノルウェーの羊毛を使用したニットなど、すべてのスタイルの95%がサステイナブルな素材で作られているという、時代の流れを敏感に汲み取ったコレクションとなった。
「ジャックムス(JACQUEMUS)」
「ジャックムス」は、パリ西郊の副都心ラ・デファンスにあるアリーナに、大きなスクエア状のランウェイを設置してショーを行った。1,000人を優に超えたゲストが見守る中発表した2020秋冬コレクションは、アースカラーの柔らかなトーンで紡ぎ上げたもの。春夏カラーを秋冬に用いるのはジェネラルトレンドであるが、そこに、ビビッドなピンクや優しいバイオレットでアクセントをつけていた。
今シーズンはブランドにとって節目となる10年目のコレクション。デザイナーのサイモン・ジャックムスは原点に立ち返り、初めて母親のためにスカートを作った時のようなピュアな気持ちでコレクション制作に臨んだという。ミニマルかつモダン、独特なカッティングで「ジャックムス」らしさを創り上げてきたが、今シーズンはそれをさらに楽しんだかのように、自由な発想を見せた。ウィメンズではランジェリーアイテムやタイトシルエット、背中を大きく開けて華奢なリボンを付けるなど、繊細なセクシーさを表現。メンズは、パンツのレイヤードや袖に特徴的なカッティングを効かせたシャツ、リゾートを思わせるゆったりとしたセットアップなどで、秋冬ながらも軽やかな印象に仕上げていた。
アクネストゥディオズ(Acne Studios)
「アクネストゥディオズ(Acne Studios)」の2020秋冬コレクションは、メンズとウィメンズを同会場で発表した。ルーヴル美術館の地下にある展示会場カルーセルに、パーテーションで仕切った2つのランウェイを設置。同時にショーがスタートしながら、メンズのゲストはメンズのみ、ウィメンズのゲストはウィメンズのみしか見ることができないという珍しいショーだ。
発表されたメンズコレクションは、艶や煌めき、スキニーなシルエットでグラマラスなムードを盛り込んだもの。体のフォルムを美しく見せるタイトなセットアップ、レギンスのように細身のパンツ、ブーツカット、透け素材など、ジェンダーレスなアイテムが次々に登場。時折ボリューミーなアウターやパイソン柄などでハードさを出しながらも、艶のある素材やフューチャリスティックな煌めきを放つ素材、肌見せスタイリングで、時代の流れであるエレガンスにブランドらしい色気を加えたコレクションに仕上げていた。カラーパレットはベージュやブラウン、ミントグリーンなど優しいアースカラーにオレンジや鮮やかなブルーでアクセントをつけた。
取材・文:清水友顕、アパレルウェブ編集部