PICK UP

2020.01.20

ヘリテージとアルチザンで強みを示すイタリアンメゾン <4/5>

ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)

 今シーズン、”Artistic Craftsmanship”というテーマを掲げ、ブランドの王道的なコレクションを発表した「ドルチェ&ガッバーナ」。テーラー、羊飼い、花売り、ニット職人、パスタ職人、荷馬車の御者、理髪師、陶芸家、靴職人など、イタリアの伝統的な職業や職人技からのインスピレーションだ。

それはひと昔のイタリア映画に出てくるようなちょっとレトロなイメージでもある。羊飼いのアンダーウェアのようなニットのオールインワンや作業着のような手編み風ローゲージニット、花売りが使うようなレザーのエプロンやサロペット、荷馬車の御者が纏うような乗馬パンツやパンツをブーツインしたスタイル。「CRAFSTMANSHIP」、「FATTO A MANO」などのレター入りセーターも。ピンストライプやタータンチェック、ハウンドトゥース、ウールツイードといったマスキュリンかつクラシックな素材がふんだんに使われている。

 

 今回はわかりやすいシチリアテイストは出ていないが、カラーとしてシチリアの自然からインスパイアされた黒色溶岩のようなブラック、遺跡や石を思わせるグレー、ミルクホワイト、ハニーカラー、日に焼けた大地のようなブラウン、砂岩のようなベージュが使われている。

 

 SNS時代を先取りしていた「ドルチェ&ガッバーナ」は今、その世界と真逆を行く、アルチザンな方向へ。時代はもしかしたらまたそちらに向かうのかもしれない。

エルメネジルド・ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)

 ショー会場のセレクトには毎回こだわりのある「エルメネジルド・ゼニア」だが、今回のショーではミラノの旧鋳造工場を選び、インスタレーションはアメリカ人のマルチメディアアーティストのアン・パターソンとのコラボにより、「エルメネジルド・ゼニア」の余り生地を利用したリボンを垂らして舞台装置を作った。

 

 今シーズンのテーマは”Art for Earth”。アーティスティックなインスタレーションと共に、前回のコレクションのテーマ”#UseTheExisting”を発展し、サステナビリティに力を注ぐ同ブランドを象徴している。今回もリサイクルされたカシミアフランネルや、製造工程で廃棄される切れ端を新たに混紡し織り上げられたウール生地が使われている。それがモアレ、マクロチェック、デジタル化された風景のような柄となって都会的なニュアンスを発揮する。

 

 基本的にはトラディショナルなテーラードスタイルをベースにしつつ、フラップポケットやパッチポケットでアウトドアテイストを入れたり、ジップアップのオーバーシャツをシャツの代わりに使用したり、半袖のブルゾンのような二重仕様のシャツなどでカジュアルダウン。コートとパーカーを融合させたり、後ろに深くプリーツの入ったボリューミーなコートやボックスシルエットのジャケットで、ストリート的なテイストも加わる。

 

 生地メーカーという強みをふんだんに活かした最先端かつアーティスティックな素材を武器に、誰にも作れないコレクションを展開する「エルメネジルド・ゼニア」。クラシックテイストの中の微妙な遊びは、ベースがしっかりできているからこそ。老舗メーカーならではの余裕と、今シーズンのトレンドを予感させるショーだった。

エトロ(ETRO)

 前回も使用した本社近くのガレージをショー会場にした「エトロ」。今回はその壁にエトロ家が所有している古い肖像画(レプリカではなく本物!)が一面に飾られている。今シーズンは、肖像画に描かれた先人たち=伝統の象徴であり、時代と共に壊れていくルールを守る番人に捧げるオマージュ的コレクションだ。そんな先人へのリスペクトはショーの最後に登場したクリエイティブ・ディレクターのキーン・エトロが、肖像画たちに敬礼を送りながら会場を立ち去った様子からも理解できる。

 

 さてコレクションは、古典的イメージを醸し出すブランケットやカーペットのような生地、英国クラシック調のヘリンボーン、グレンチェック、または貴族的雰囲気のベロアやシルクなどの素材を、テーラードジャケットやスーツなどのクラシックなアイテムと、マント、ポンチョ、サリアナジャケットなどカントリーやエスニックテイストのアイテムを混在させる。肩に大きなストールをかけたり、足元は乗馬ブーツ風にパンツをインするなどのコーディネートは中世の騎士風だ。そこに金糸のエンブロイダリーやキラキラのペイズリーなどをあしらい、艶やかさもプラスする。

 

 トラディショナル+アルファがトレンドの中で、「エトロ」はその「トラディショナル」な部分の時代設定をあえて遠い過去に置き、「+アルファ」には「エトロ」らしいエスニックテイストを控えめに入れ込んだ。それによってちょっとノスタルジックで温かく甘い雰囲気が漂う。

ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)

 今回は場所を「アルマーニ/テアトロ」に戻してショーを行った「ジョルジオ アルマーニ」。会場の中央には氷のようなオブジェが置かれ、絶え間なく降る雪のような光の演出がなされている。その中でまずはウィンターリゾートのためのカプセルコレクション「NEVE(雪)」の御披露目。オールブラックのダウンジャケットやスキースーツなど、スタイリッシュなスノーギアがルックが登場する。

 

 そこから一転して、クラシックを直球で行く本コレクションが登場。とはいえ、今シーズンのテーマとして”触感”を掲げているだけに、「ジョルジオ アルマーニ」が常に提案してきたエレガンスは、柔らかく、リラックス感満載で提案される。ウォッシュド加工のウール、マットジャカード、ブークレ、ベルベットなど、肌触りの良い素材を厳選して、ネールカラーのジャケット、ショールカラーのラップアラウンドコート、ラグラン袖のブランケットタイルのコートなど着心地の良いアイテムとして表現する。

 

 またラペルやポケットのフラップ部分だけ素材や色を変えていたり、表地と対照的な裏地が見えるような作りになっていたり、またパンツの裾にはカフがついていたり・・・と小さなディテールを使ったカジュアルなくずしも加わる。オプティカル柄やペイズリーがモダンな雰囲気をプラスし、ウエストポーチやネックレスタイプのカードケースなどのアクセサリーにはちょっぴりストリートテイストも。

 

 このような、クラシックに着心地の良さとモダンテイストを入れ込んだスタイルは今年のトレンドだが、それは「ジョルジオ アルマーニ」がずっと変わらずやってきたこと。そんな貫録を見せつける圧巻のショーだった。

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