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2019.12.10

【インタビュー】英国セレクトショップ発越境ECプレイヤー「マッチズ ファッション」の強みとは

取材・文:山中健

アジア太平洋ブランド&コミュニケーション統括責任者 ジェイソン・リン氏

 2019年11月8日、英国セレクトショップ発越境ECプレイヤー「マッチズ ファッション(MATCHESFASHION)」が、日本で初の単独展示会を開催した。展示会場では、ロンドンメンズの旗手「クレイグ・グリーン(CRAIG GREEN)」や「セシリー・バンセン(CECILIE BAHNSEN)」、そしてマッチズファッション エクスクルーシブ ブランド「レイ(RAEY)」の新作コレクションをお披露目した。同日、来場した同社のアジアエリアのPR責任者、ジェイソン・リン氏に同社の事業について聞いた。

―「マッチズ ファッション」の現在の体制について教えて下さい。

 

 「マッチズ ファッション」は、チャップマン夫妻が1987年に英ウィンブルドンで創業しました。2017年以降は、英国の投資ファンド「アパックスパートナーズ(Apax Partners LLP)」の傘下にありますが、彼らは今も株を保有していますし、経営にもディレクションなどの大局的な領域で関わっています。

 

―今日のプレスビューではエッジの効いたデザイナーをハイライトしていますが、私が見た本国のお店やECでは名だたるブランドを揃えていますよね。

 

 店での取り扱いブランド構成は、今も基本的に変わりません。でも、それぞれの店のロケーションによってバイイングが変わります。ハイブランドが多い店もあれば、新進気鋭のデザイナーをハイライトする店もあります。

 

―日本ではハイブランドはだいたい現地法人や代理店を持っていて、チャネルに対する規制も欧米より厳しいと思いますが、そういう苦労はありませんか。

 

 「マッチズ ファッション」は、ブランドと強い信頼関係があります。そういう意味で何かやる時や、ブランド名を使用する時はブランド側にアプルーブをとります。またエクスクルーシブのコレクションもあります。逆にハイブランドの売上やイメージを上げるために、当社の名前が良い効果を生むことも多くあると思います。

 

―欧州に多くの越境ECプレイヤーがあると思います。「ユークス(YOOX)」や「ネット・ア・ポルテ(NET-A-PORTER)」のような大手のほか、「ルイズ・ヴィア・ローマ(LUISAVIAROMA)」や「アントニオーリ(ANTONIOLI)」のようなセレクトショップ発のプレイヤーもあります。彼らと比べて御社の強みとは何ですか。

 

 「マッチズ ファッション」の強みは、創業期から付き合いを始めたブランドが多く信頼関係を築けているということです。ユニークな仕入れをしたり、エクスクルーシブな取り組みをしたりするなど、「マッチズ  ファッション」独特の雰囲気を持つセレクトをしています。またブランドをサポートすることもしています。ロンドン・カルロスプレイスの旗艦店では、多くのデザイナーとコラボレーションしたイベントをしています。

 

東京での展示会の様子

―「マッチズ ファッション」はセレクトショップ発の越境ECプレイヤーの中ではパイオニアですものね。

 

 光栄です。「マッチズ ファッション」は、お客様の信用を第一に考えていますし、デザイナーやブランドなどの仕入れ先に対しても、誠実に対応することを大事にしています。我々は、オンラインのショッピングサイトですが、やはり実店舗があることで、実際に洋服を触ったり、着たりできますし、そこでオフラインとオンラインの両方を経験できるのも強みだと思います。

 

―本国の英国以外で売上が大きい国はどこですか。

 

 アメリカですね。アジアでは韓国のシェアが高いです。韓国は、「マッチズ  ファッション」のストーリーや世界観、価値観などが支持されています。韓国で、火がつくきっかけは2016年にソウルファッションウィーク会期中に「ヴェトモン(VETEMENTS)」のポップアップをやったことがあげられます。実は「ヴェトモン」を発掘したのは、「マッチズ  ファッション」のファッション&バイイングディレクターのナタリーなのです。「ヴェトモン」と「マッチズ ファッション」はとても親密な関係があるのでそのようなことができたのです。他にアジアでは中国ももちろん重要な国ですね。

 

―日本市場での仕掛けも楽しみにしています。

 

はい。期待してください。

ロンドン・カルロスプレイスの旗艦店

■「マッチズ ファッション」

 

 英国ロンドンをベースとしたファッション小売業。1987年にウィンブルドンで、トム・チャップマンとルース・チャップマンが創業した。2017年には、英国の投資ファンド「アパックスパートナーズ(Apax Partners LLP)」の傘下となる。現在は、ロンドンに4店舗を構えているが、英国の「ブラウンズ」、イタリアの「ルイザ・ヴィア・ローマ」、「アントニオーリ」のようにEC企業としての存在感を強めている。

 

公式サイト


 

 

山中 健(やまなか・たける)

 

大手百貨店、外資系ブランド、大手経営コンサルタント会社を経て、ファッションビジネスコンサルタントとして独立。 アパレル業界を中心に、ライフスタイルショップ、百貨店、SCなど幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。 トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。 また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。 2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にアパレルウェブ編集長就任。

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