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2019.09.11

米国の大手百貨店「メイシーズ」が急成長の古着サイト「スレッドアップ」とタイアップ プロパー・オフプライス・古着が同居する売り場が増加

ニュージャージー州ウェインにあるショッピングモール
「ウィローブルックモール(Willowbrook Mall)」内にあるメイシーズの売り場

 米国の大手百貨店「メイシーズ(Macy’s)」の第2四半期の売り上げは、前年から0.5%ダウンし55億ドル。既存店売上高は0.2%アップしたものの、純利益は48.2%減の8,600万ドルと発表しました。売り上げを牽引する若年層はスリフトショップなどの再販マーケットでの購入や、レンタルのサブスクリプションサービスの利用が多くなり、競合である米国のリテイラーも続々とレンタルビジネスを発表しています。今年発表されたアパレル企業のレンタルサービスは現在わかっているだけでも以下の通り。

企業・ブランド名

レンタル業態

アメリカン イーグルアウトフィッターズ

スタイルドロップ(Style Drop )

アーバン アウトフィッターズ

ニューリー(Nuuly)
アンソロポロジー&フリーピープル含む

エキスプレス(EXPRESS)

エキスプレス スタイル トライアル(Express Style Trial

アン テイラー(ANN TAYLOR)
インフィニット スタイル(Infinite Style)

バナナ リパブリック 

スタイル パスポート(Style Passport )
今年9月スタート

 自社商品を販売しながらレンタルをする――どの小売り店もまだパイロット事業の段階だと思いますが、10年以内に50億米ドルの市場規模になると予測されています。エコに関心が高く、高額な学費やその他のイベントへの出費があるため洋服の出費を抑えたいという若年層が増えるなか、メイシーズが発表したのが、オンラインの再販ストア「スレッドアップ(ThreadUp)」とのタイアップでした。不要になった洋服を袋に詰めて送るだけで、商品詳細の記載からウェブサイトへの投稿、配送作業まですべて行ってくれる利便さが人気の同ストア。宝物探し感覚で自宅から気軽に購入できるのが受け、利用者は年々増加、お金のない若年層だけでなく、中高所得者層の中高年の消費者も増加しており、今や世界最大のリセールショップへと急成長しています。

 

■【関連記事】高所得者層がハマる 中古衣料の再販サイト「スレッドアップ」成長の理由

宝物探しで若年層の集客アップを狙う 百貨店ジュニア売り場に隣接する古着ショップ

メイシーズで販売している「スレッドアップ」の商品

 メイシーズは、スレッドアップとのタイアップ売り場を40店舗でテスト運用すると発表しました。さっそくマンハッタンのミッドタウンから30キロほど離れた、ニュージャージ州ウェインという街にあるショッピングモール「ウィローブルック モール(Willowbrook Mall)」内にあるメイシーズを訪ねました。ブルーミングデールズやユニクロ、ザラなどが入った中級モールで、客層はごく一般的なミドル階級。ファミリー層も多く見かけます。

 

 スレッドアップの売り場は、1階のジュニア(中高生)向けの商品が並ぶ売り場に隣接されており、約14坪(最大で58坪)のスペース。ティーンネイジャーにフォーカスしたセレクションが中心で、小売り価格の50~70%、最大で90%オフで販売しています。メディアによると、スレッドアップ社のデータから、その地区の客層が購入しているブランド商品をキューレーションしているそうです。

 

 売り場のフロントには、“人気古着サイトとの提携で、ハイクオリティーの古着・毎月100種類の商品との出会いとスリルを提供します”というサインが貼り出されており、スレドアップについてまだ知らないお客様への訴求を強めていました。ほかにも「アーバン アウトフィッターズ」がヴィンテージ商品の売り場を設けていますが、同ブランドならではの個性的な商品セレクションやスタイリングに比べると、売り場はかなり劣る印象です。また、オンラインストアと比べ、商品数やサイズのまばら加減は否めないのですが、地元の古着屋さん感覚で、ユニークなアイテムを探すような場所は、店舗へ来ることが減っている若年層を引き寄せるきっかけとなり得るかもしれません。

プロパー・オフプライス・古着が同じ売り場に――三つ巴作戦は成功するか?

メイシーズの2階で販売されているオフプライス業態「バックステージ」

 ここ何年もの間、百貨店からシェアを奪い続けているのが、TJマックスに代表されるオフプライス店。独自のオペレーションにより過剰在庫などを買い取り、百貨店などで販売されている商品をほぼ同時期に、40~70%オフの価格で販売しています。サイズ別に構成されたシンプルなラック販売法で、宝物探しの感覚をクリエートしています。

 

 メイシーズも、オフプライス業態「バックステージ(BACK STAGE)」を2015年に開始し、現在120店舗以上で展開しています。競合であるノードストロームの「ラック(Nordstrom rack)」やサックスフィフスアベニューの「オフ フィフス(Saks Fifth Avenue OFF 5th)」などは店舗を別に構えていますが、メイシーズは通常の店舗内で展開しています。バックステージの売り上げは急成長し、集客もアップ。スレッドアップとのタイアップは、同様かつそれ以上の集客増が期待されています。

 

 百貨店でのショッピングは1999年のピーク以降、毎年縮小の一途ですが、中古衣料の購入はトレンドとなっています。グローバルデータ(GlobalData)社の調査によると、米国女性の64%が古着を購入しており、2年前の45%から増加しています。

 

 今まで見たバックステージは、プロパーの衣料品フロアの1つ上にある家具売り場のフロアに設置されていました。ノードストローム等の競合デパートは、オフプライス部門が成長し、本ビジネスの店舗数を上回っています。
メイシーズのバックステージのビジネスも好調で成長過程にあります。店内あちこちで見かける最終セール商品(Last Act)も含め、バリューとエコを重視する消費者の来店数は上がるかもしれません。しかし、プロパー、オフプライス、古着を売るという、ある意味“ボーダーレス”な売り場で、果たしてプロパー商品の売り上げは上がるのでしょうか?

 

 また、メイシーズとほぼ同時期に、JCペニーもスレッドアップとのパイロット・プログラムを30店舗にて販売する事を発表しました。化粧品のセレクショショップ「セフォラ(SEPHORA)」とのインショップ展開がうまくいき、恩恵を受けていることもあり、今回は古着の販売を通じて、若い顧客を店舗に呼び戻そうとしているようです。スレッドアップ社はオンラインに特化しているため実店舗は持っていません。彼らにとっても新たなテストと言えます。

 

 同社は先日、投資家から1億7500万ドルの資金調達を行い、総資本は3億ドルに達しました。資金はおもに配送センターの拡張に利用される予定です。1日に10万枚の衣類を選別し、今までに6,500万枚の古着を再販しています。また、今年1月~7月のアプリのダウンロード件数は、昨対比70%増の57万8,000件となりました。グローバルデータ社によると、スレッドアップの貢献により、昨年の再販市場は70億ドル(6月に上場した「RealReal」「Poshmark」「eBay」「Buffalo Exchange」などを含む推定値)に押し上げられたということです。


 

 

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