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2019.05.11
テーマ”キャンプ”が意味するものは? MET GALA 2019に見る社会潮流とファッショントレンド
米NYメトロポロタン美術館では、毎年春から夏にかけて「The Costume Institute」によるエキシビションが開催されている。今年も5月9日~9月8日の会期が決定、テーマは「Camp:Notes on Fashion」。その前夜祭とも言えるパーティMET GALAが5月6日に行われ、レッドカーペットは、テーマを彷彿するコスチュームで闊歩するゲスト達で、「Camp」な賑わいを見せていた。
さて、MET GALAヴィジュアル観賞の前に、今回のテーマも含め、毎年開催される本エキシビションのベースに眼を向けてみよう。そこには、大きく社会潮流が関わっており、まさに「ファッションは時代の鏡」を示唆。次シーズンのファッションリソースにおけるコンセプチュアルワークの宝庫ともなっている。
現在のグローバルな社会潮流は、何と言っても「ボーダレス」「ダイバーシティ」。その境界なき世界が生む自由や新たな美意識、その多様性が受け入れられることにより拡がりを見せる未来。ファッションは、その開かれ始めた社会潮流を如何にして表現に繋げ、生活の豊かさ、心の潤いとして届けていくのか…が大きなひとつのMISSIONではある。
近年の本エキシビションでは、2017年には「Art of the In-Betweenness」というテーマでコムデギャソンの作品展が開催された。「東/西、男性/女性、過去/現在etc…」といった川久保玲氏が追求した「境にあるもの」が、まさに社会潮流を底流として、4次元の時代感を漂わせ、クリエーションの力強さを湛えていた。
2018年のテーマは「Heavenly Bodies:Fashion and the Catholic Imagimation」。宗教(religion)の語源はラテン語の「再び結びつける」。そこから「神と人間を結びつける」と解される「Religion」。模索と混沌が続く社会潮流の中、生活者の気持ちが「神との結びつき」「神の視座で未来を捉えていきたい!」といった希求となり、CHANELが2018SSプレコレクションをギリシャの地で展開したことと同様に、このエキシビションも必然的に時代の声に応えての開催であった。
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宗教家たちの荘厳かつ煌びやかなファッション、そしてディテールは、昨今、デイリーなファッション・シーンにも影響を与え始め、神と人間は「結びつき」始めている。
そして、本年のテーマ「Camp:Notes on Fashion」にスポットを当ててみよう。「Camp」という言葉その概念は、米国出身の作家スーザン・ソンタグ(Susan Sontag/1933~2004)が1964年にしたためたエッセイ「Notes on ‘Camp’」の中で、ひとつの美学として定義しており、「皮肉であり、ユーモラスであり、模倣的で、人工的で、演劇的な、誇張されたもの」と掲げている。由来は、仏語「se camper」(立ちはだかる、大胆な行動にでる)からと言われており、19~20世紀後半の欧米で起こったQueer文化(セクシャルマイノリティによる)も大きく関わっている。19世紀ロンドンにおける、クイア(Queer)文化のアイコンとも言えるのが、ヴィクトリア朝時代のクロスドレッサー(異性装者)、ファニーとステラだ。
2018~2019欧米コレクションでも、すでにこの流れからインスパイアされた作品は少なくない。まさに「ダイバーシティ」の社会潮流からクローズアップされた「Camp」ではあるが、加えて、ノームコア以降、あまりにもリアルクローズ寄りに進んできたファッションシーンを、内包された≪美≫に導き、≪装い≫という表現に、一石を投じてくれるであろう強固なパワー!
≪エネルギッシュ・ある種猥雑・ある種崇高≫に、期待せずにはいられない。本エキシビションの立ち位置・役割を共有したところで、MET GALAの「Camp」な装いを!
第71回「MET GALA2019」レッドカーペットに登場したセレブリティーたち
レディー・ガガ
MCも務めるレディー・ガガ(Lady Gaga)は、Campな4変化&ゴージャスなアイラッシュで登場。ブラックとピンクが交互に波打って、アンドロジナス感が香り立っています。
ケイティ・ペリー/ジャネール・モネイ
ケイティ・ペリー(Katy Perry)やジャネール・モネイ(JanelleMonae)らはユーモラスで模倣的、人工的で芝居がかって誇張されたものと化し、Campなオブジェパレード!
ケイティ・ペリーは「モスキーノ」のシャンデリア風衣装で。
音楽プロデューサーや女優、モデルなど幅広く活動するジャネール・モネイは、「CHRISTIAN SIRIANO」のアートなドレス。
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ハリー・スタイルズ/アレッサンドロ・ミケーレ
現代の「ファニーとステラ」は、ハリー・スタイルズ(HarryStyles)(右)とアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)。リアルなファッションシーンでも、オーガンジー、リボン、フリルは、ますますメンズのCampアイテムに(Photo: Courtesy of Getty for Gucci )?!
ルーシー・ボーイントン/カーラ・デルヴィーニュ
“夢みる色彩たち”が結集。ダスティなペールカラーやハイパーマルチカラーで、ヘッドからトウまで、全身を覆ってみる!人工的で、誇張されたCampニュアンスの中に≪女性/性≫が浮かびあがったNewなムード…。
大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディー」にも出演した英国出身女優のルーシー・ボーイントン(LucyBoynton)は、メタリックなレイヤードドレスで。
モデルのカーラ・デルヴィーニュ(CaraDelevingne)は、「ディオール(Dior)」のマルチカラーストライプのコスチュームで(Photo by Dior)。
エズラ・ミラー
シックなブラックに、ブレード調のジュエリーやチェーンで彩られた装いは、人工的で芝居がかった中に、ユーモラスな温かさをも兼ね備え、アンドロジナス感を表現。まさにCampな時代感として、今日的なファッションシーンへも活用できそう。 「バーバリー」のスーツを着用した俳優のエズラ・ミラー(EzraMiller)は、7つの眼を表現したアートメイクも話題に。
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ソランジュ・ノウルズ(サルヴァトーレ フェラガモ) Photo by Getty Images
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女優のリリー・ラインハルト(サルヴァトーレ フェラガモ) Photo by Getty Images
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俳優コール・スプラウス(サルヴァトーレ フェラガモ) Photo by Getty Images
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女優エリザベス・デビッキ(サルヴァトーレ フェラガモ) Photo by Getty Images
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女優のグウィネス・パルトロー(クロエ)Photo by Getty Images, Courtesy of Chloé
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女優のグウィネス・パルトロー(右)と「クロエ」クリエイティブディレクターのナターシャ・ラムゼイ=レヴィ Photo by Getty Images, Courtesy of Chloé
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セリーヌ・ディオン(オスカーデラレンタ) Photo by Oscar de la Renta
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モデルのロージー・ハンティントン・ホワイト(オスカーデラレンタ) Photo by Oscar de la Renta
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レジーナ・キング(オスカーデラレンタ) Photo by Oscar de la Renta
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女優プリヤンカー・チョープラー(ディオール) Photo by Dior
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ニック・ジョナス(ディオール) Photo by Dior
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リチャード・マデン(ディオール) Photo by Dior
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トラヴィス・スコット(ディオール) Photo by Dior
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Verbal(ディオール) Photo by Dior
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ジゼル・ブンチェン(ディオール) Photo by Dior
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ショーン・メンデス(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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ゾーイ・クラヴィッツ(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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アンバー・ヴァレッタ(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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アンバー・ヴァレッタ(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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シャルロット・ゲンズブール(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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デミ・ムーア(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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リアム・ヘムズワース(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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マイリー・サイラス(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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ラミ・マレック(サンローラン) Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT
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ジャレッド・レト(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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ハリー・スタイルズ(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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フローレンス・ウェルチ(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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ジェレミー・O・ハリス(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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カーリー・クロス(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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キキ・レイン(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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オマリ・ハードウィック(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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レジーナ・ホール(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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サルマ・ハエック(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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21サヴェージ(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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アンダーソン・パーク(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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アシュリー・グラハム(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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クリス・ロック(右)(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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ダコタ・ジョンソン(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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ダッパー・ダン(グッチ) Photo: Courtesy of Getty for Gucci
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キム・カーダシアン(ミュグレー) Photo by Mugler
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女優のエラ・バリンズカ(トリー バーチ) Photo by Tory Burch
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デザイナーのトリー・バーチ(トリー バーチ) Photo by Tory Burch
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女優のケリー・ワシントン(トリー バーチ) Photo by Tory Burch
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女優のケリー・ワシントン(トリー バーチ) Photo by Tory Burch
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モデルの森星(右)と「W Magazine」編集長のステファノ・トンキ(トリー バーチ) Photo by Tory Burch
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(左から)ミュージシャンのマギー・ロジャース、「コーチ」クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース、俳優でプロデューサーのマイケル・B・ジョーダン(コーチ) Photo by COACH
時代の気分はCampな潮流…エズラ・ミラーの様に7つの眼で感じながら、新たな美学をファッションの息吹きとして、迎え入れていきたい。
山田 晶子(やまだ・あきこ)
百貨店からキャリアをスタートさせ、宝飾、美術、食器、インテリア、婦人ライブスタイルショップ等のカテゴリーで、販売、通販(EC)、宣伝販促、MD.、バイヤーを歴任。 官民連携のファッションビジネススクール立上げメンバーとして参画。カリキュラム策定、スクールフォーマット設計に携わる。
その後、セレクトショップにて組織強化への人材育成、ツール作成を担当後、商品制作・調達のベースとなるマーケティング~ディレクションを構築。「社会潮流~顧客心理~ファッションの役割」をクリエイティヴィティをベースに波及。
百貨店系シンクタンクでは、婦人担当および新規事業開発考案を担当。
アパレル系事業統括会社にて、社会潮流を起点としたディレクションを発信。ブランド売上伸張に寄与。
現在、フリーランスとして、社会と時代をベースに、ファッションビジネスの「人・物・場」の「育成・予測・仕掛け」を、常に未来を見据える視点で取組み、活動中。 |