PICK UP

2019.05.10

ゲストは株式会社アルファ代表&クリエイティブディレクターの南貴之さん 第22回SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」

 USEN(東京、田村公正社長)が運営する音楽情報アプリSMART USENで配信中の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。ウェブメディア「ジュルナルクボッチ」の編集長/杉野服飾大学特任教授の久保雅裕氏とフリーアナウンサーの石田紗英子氏が、ファッション業界で活躍するゲストを招き、普段はなかなか聞けない生の声をリスナーに届けるが、アパレルウェブでは、その模様をレポートとして一部紹介していく。第22回のゲストは株式会社アルファ代表、クリエイティブディレクターの南貴之氏。

<前略・オープニングトーク>

 

久保:南さんはもともとアッシュペーフランスにいて、独立して現在はアルファという会社を運営されています。僕の中では仕掛人というイメージかな。ちょっと面白い仕掛けをしたお店をプロデュースしたり、ディレクションしたり。設計などの業界の人たちが読む雑誌にも登場されています。クリエイターですね。

 

石田:確かに、クリエイターという言葉がぴったり。丸い眼鏡がこんなに似合うなんて。

 

久保:昔から眼鏡でしたっけ?

 

:目が悪いんですよ、小学校くらいから。若い頃は女の子にモテたくてコンタクトをしていましたけど。最近はそういうこともないので、好きな眼鏡をかけています。(笑)

 

<中略:幼少時代から家族の話へ>

 

久保:いつぐらいの時期に、ファッションに目覚めたというか、こういう方向に進みたいと思うようになったのですか。

 

:いわゆる雑誌を読んで流行っている服を買うみたいなことには全く興味が無かったんですね。中学・高校時代は洋楽にハマっていて、PVに出てくるアーティストのファッションが好きで、古着屋で服やスニーカーを探したりしていました。でも、ブランド物とかには全く興味が無くて。そういう意味では、ファッションに興味が無かったんだなと思います。高校生の頃は柔道をやっていたんですが、2年生でやめました。僕は遊び散らかしたかったんですよ。だから特に何もせず、遊び回っていたんです。でも、高校時代ってあんまり思い出が無いかなあ。ダラダラと生活しているって感じでしたね。

 

久保:高校を卒業してからはどうされていたのですか?

 

:やりたいこともないので情報処理の専門学校に入ったのですが、その夏にやめてしまいました。またプラプラし始めそうになって、何か仕事をしなきゃって思ったんです。ただ、ネクタイは締めたくない。そうすると、美容師かアパレルが選択肢かなあと。近所のハローワーク的なところに行ったら、何とか美容室というところがあるから行ってみたらと言われて。国家資格が要る仕事とも知らなくて、とりあえず雇ってくれたので働いたという感じでしたね。美容師のアシスタントをしていました。それで鍛えられまして。で、1年ほどでそこを辞めて、何でもよかったので次はアパレルしかないって勝手に思ったんです。渋谷をウロウロして、アルバイト募集中って書いてあった店に入ったら、そこがアッシュペーフランスでした。

 

石田:そこからだったんですか!

 

久保:販売のアルバイトで入ったということ?

 

:今はもう無いんですけど、当時のアッシュペーフランスはパルコパート3の3階で「メディアブルー」というお店をやっていたんですね。そこで販売をやっていました。僕は今思うとゾッとするくらい生意気な奴だったんですけど、結構、売っていたんですよ。それなら俺が仕入れをやった方がもっと売れるって、社長に申し出たんです。それで仕入れもさせてもらえました。その頃の経験が今の仕事の最初の入り口というか、バイイングするっていうことのベースになっています。

 

<中略・:入社時のアッシュペーフランス、物作りの話>

久保:アッシュペーフランスから独立し、アルファを立ち上げて最初にディレクションをしたのが「1LDK中目黒」でした。

 

南:会社員が向いていないのは理解していたので、独立したんです。お誘いいただいた会社もあったんですけど、迷惑をかけたくないと言ったら、契約でということになった。アッシュペーフランスにいた10年間の経験を活かして、一人でいろんなことをする会社を作りたいと思ったのです。その時にいただいた仕事の一つが、1LDKでした。

 

石田:1LDKというのは何のお店なんですか?

 

:「家」をコンセプトにした、洋服とそれ以外のものも扱っているお店です。家の中に服しかないって気持ち悪いじゃないですか。なので、生活まわりの物を含めて販売するお店として作ったのが1LDKです。当初は「売れない」とか、「1年ももたない」とかいろいろ言われたんですけど、けっこうよく売れて、いい感じに店舗数も増えていきましたね。

 

久保:「フレッシュサービス」では、ザ・コンラン・ショップ(以下コンランショップ)ともお仕事をされていますね。

 

:コンランショップの周年記念でポップアップショップの依頼を受けたんです。その時にフレッシュサービスのアイデアを思いついて、コンランショップの中で展開させてもらいました。それが今は別事業になっていて、物を作ったり、お店もやったりしています。プロダクト寄りの商品が多いですね。

 

※フレッシュサービス:架空の運送会社をイメージしたモバイル型コンセプトストア。

 

<中略・いろいろなショップ開発の話>

 

久保:現在は「グラフペーパー※」というお店を運営されています。神宮前のこのお店がある場所には、以前はPR事務所が入っていたという記憶があるんですが。

 

:セットバックしている感じとか、ちょっと行きづらい感じがすごく好きだったので、ゆくゆくはお店にしようと思っていたんです。そのタイミングが来たなって感じて、お店を開けました。

 

久保:それにしても、通行人もまったくいないという立地です(笑)。

 

:昔は恵比寿とか広尾とか青山とか、場所の流行りみたいなのがありませんでした? ああいうのが無くなってきたなあって感じていたんです。1LDKを始めた時の中目黒は、いわゆる「ファッション的には良いエリアじゃない」と言われていたけれど、お客さんが来るようになりました。場所じゃなくてコンテンツだと思っていて、そういう意味では正直、グラフペーパーもどこでも良かったんですね。

 

久保:フランス人の造形美術家とかアーティストが日本に来た時に必ず案内するんです。「ちょっとおもしろい店があるから」って。リニューアル前のグラフペーパーは、真っ白い壁の中にキャンバスのようなものがいくつも埋め込まれたようになっていて、他には何もないっていう店作りをしていましたよね。

 

石田:何もない!?

 

久保:で、キャンバスを引っ張り出すと……。

 

石田:仕掛けがあるんですか?

 

久保:洋服が掛かっていたりする。別のも引っ張り出すと、また違うものが出てくる。大喜びですよ、外国人は(笑)。だけど、行きづらい場所なので案内してあげないとねえ。

 

:普通にはたどり着けない。今はGoogleに登録されているので、みなさん来ますけどね。昔はそういうものが無かったので、怒って入って来られる人もいました(笑)。電話で行き方を訪ねられても、こっちも説明できないから申し訳ないなと思っていて……。

 

石田:行き方からすべてがお店への導入部分なんじゃないですか? 迷い込んで来てくださいみたいな。

 

:そこまでは狙っていなかったですけどね。

 

久保:ぜひ行っていただければと。でも、これで人が押しかけちゃったらどうしよう。あそこは隠れ家だから、あんまり知られたくないっていう気持ちもあります。

 

:けっこうお客さんはいらっしゃいますよ。すごく特殊なものというか、好きな人じゃないと買わないようなものしか置いてないんですけど。服もありますし、インテリアもありますし、アートとかオブジェもあります。ほとんどの人は興味のないものですが、それを好きな人がわざわざ集まる。そういう意味では完全に成功していると思います。

 

石田:偶然にアッシュペーフランスの求人案内を見てファッション業界に入って、デザインなどの専門的な勉強もせず、そういうアイデアはぼんぼん浮かんでくるものなんですか?

 

:専門の学校に行ったことがないので、学校で何を学んでいるのかもよく分からなくて。ただ、現場でないと分からないことって死ぬほどあるわけです。中身は分業になっていて、僕がパターンを引くわけでもないし、服を縫うわけでもありません。中身を知っていて、情熱と面倒臭がらない気持ちさえあればやれる。それが真理かなと思います。好きだっていうことが大事だと思うんです。今の仕事は好きだからできていて、好きなこと以外は仕事にできないというのが僕という人間です。偏っているんです。

 

久保:クライアントがいる場合は、納得させられる論理性も必要ではないのですか?

 

:アートの世界ではないので、ロジカルも必要ですし、ビジネスとして成立しないといけません。僕は、どういうものを組み合わせて、どう作っていくと面白いことができて、ビジネスにつながるかということをやっているんです。その意味では、経理もマネジメントもすべてクリエイティブな仕事だと思っています。そうでないと、コンピューターに取って代わられちゃうと思うんです。そういうことをスタッフにもいつも話しています。なかなか分かってもらえないですけど。

 

※グラフペーパー:ギャラリーとしての機能を持つキュレーション型セレクトショップ。

 

<中略・仕事への情熱、ヒビヤ セントラル マーケットの開発背景の話>

久保:直近では東京ミッドタウン日比谷に、書店の有隣堂さんと組んで「ヒビヤ セントラル マーケット」を作りました。

 

石田:ヒビヤ セントラル マーケットさんもマーケットのような雰囲気のノスタルジックなお店になっています。お店とお店の間に壁がなくて、床屋さんなどもあったりしますよね。

 

:クリエイションやディレクションをする時の概念があるんですね。僕は世の中で見たことがないことには興味がないんです。皆さんが知っている=僕も知っている、僕自身が生きてきた中で見てきたものにしか興味がない。それを「日常」と呼んでいます。日常の中に一番面白いことがあって、視点を変えると物事がいろんな見え方をします。

 

ヒビヤ セントラル マーケットは「市場」とか「街」がコンセプトなんですけど、街やマーケットに行ったことない人はいないじゃないですか。床屋さんのところでは皆さんが写真を撮って行かれるのですが、「あなたの家の近所にもありますよ」って僕はいつも思っています。ファッションに興味があるとか、アートが好きといったことを抜きにしたフラットさを、あそこに入れ込みました。そうではあるけれど、100万円近い家具を売っていたり、メゾンブランドの服を売っていたりもする。その片側ではハイボールを飲んで唐揚げを食べていたり。そういうカオスを抱えているのが日本人だと思うんです。「僕の頭の中身や夢で見た光景をかき混ぜてお店にしたらこうなります」という感じですね。

 

石田:まだまだお話を伺いたいんですけれども、最後にファッション業界を目指していらっしゃる方々へのメッセージをお願いします。

 

:う~ん、ちょっと困っちゃうなあ、僕もまだ若い気でいるから。でも今、何かが好きといった興味を持っていない子が多いかなあ、とは感じています。何か一生懸命になれることをどうやって作るかを考えなきゃいけないのかなって。好きなことをやるって、偏っていることなんです。今はネットで何でも調べられますから、知識は得られると思うんですね。でも、知識ではなくて知恵をつけないと。知恵ってクリエイティブなことなんです。僕たちは「0」から「1」を創る仕事をしなきゃいけない。そういうことは好きじゃないとなかなか見つけられないんじゃないかな。

 

※ヒビヤ セントラル マーケット:南貴之さんと有隣堂が生み出した小さな街のような複合型店舗。

 

<後略・アウトプットとインプットの話、クロージングトーク>

詳細は、SMART USENでお聴きください。

 

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第22回のゲストは株式会社アルファ代表&クリエイティブディレクターの南貴之さん

 

▼公開情報
USENの音楽情報サイト「encore(アンコール)」
http://e.usen.com/

 

 

 

メールマガジン登録