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2019.05.10

“イノベーション”を“体験”する AIL(アパレルウェブイノベーションラボ) 2018年10月米NY店舗視察レポート

――アパレルウェブ「AIR VOL. 20」(2019年2月発刊)より

 

written by 田中 伸雄(AIR編集部)

 アパレルウェブイノベーションラボは2018年11月14・15日の2日間、「AIL in NY」と題し、ニューヨーク店舗視察研修を行いました。参加者は総勢約30名。約40以上のDNVB(Digitally Native Vertical Brand)を中心とした店舗視察をしました。

 

 2019年も10月24・25日にニューヨーク研修を予定していますが、ここでは昨年の印象的な視察先など一部を振り返ります。

 

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先進的なデジタル体験を提供 ノードストロームメンズ館

ノードストロームメンズ館のサービス宣言(左)、返品専用のタブレット端末と返品ボックス

 今回の研修を振り返る際、AILが注目したのはノードストローム(Nordstrom)メンズ館のデジタルに対する仕組みの「集大成」でした。ここでは先進的なデジタル体験を提供しながら、自社で独自開発したサービスも充実させています。さらにその上でアナログの部分も取り入れています。同社は提供しているサービスを具体的な言葉にして発信しています。店舗入り口にある主なサービス宣言は、下記のとおりです。

 

(1)ECの注文が24時間店舗で受け取り可能
(2)来店試着サービスがECで事前予約可能
(3)配送料・返品無料
(4)ギフトラッピングサービス
(5)専属スタイリストによるスタイリングサービスがECで予約可能
(6)洋服の直しサービスとオーダーメイド

ECでの注文が24時間店舗で受け取れる

 

 ノードストロームの店舗受け取りは勝手が違います。ECの注文が24時間店舗で受け取り可能なのです。

 

 事前に受け取りの時間を指定すれば、たとえ深夜の3時でも、店舗の入口で専属のスタッフから商品を受け取ることができます。

 

充実した無人返品サービス

 

 さらに「Express Return」という無人返品サービスです。仕組みとしては、顧客が店舗の入口に設置されている返品手続き専用タブレット端末にレシートをスキャン、注文番号を入力します。そして、「返品ボックス」に商品を入れるだけで手続きが完了します。これはCRMの構築、管理がしっかりできていないとなかなか実現はできません。

リサイクル生地利用を表現、打ち出すサステナビリティ「EVERLANE」

SOHOにあるEVERLANE(写真上左)、ペットボトル35本を利用していることを明記
ペットボトルを利用した店内装飾(写真下)

 デジタルネイティブブランドで有名なEVERLANEは、メディアで取り上げられていることでも知られるように、リサイクル素材を使用した商品を展開することで、ブランドが持つ企業理念を前面に表現していました。

 

 上の画像(上右側)は店内に飾られる商品を説明するポップです。35本のペットボトルを利用して作られたことがわかるように商品の前に置かれています。店内には来店してくれたお客様にオリジナルのパックに入ったミネラルウォーターを無料で配るサービスがありました。店内で飲み終わったパックは、同じく店内にある専用のリサイクルボックスのようなごみ箱に入れます。店を訪れた人はこの一連の流れの中でも、企業の精神を感じることができます。

ブランド人気の理由は社会貢献に共感

 

 左の画像はペットボトルをカーテンにして店内を装飾しているEVERLANEの店舗の画像です。訪問時にはこの装飾は見られませんでしたが、シーズンの始まりの際にこういった装飾で全面的にサステナビリティを訴えます。

 

 デジタルネイティブブランドの特徴の一つでもあるこの顧客とのつながり方が、ブランドの考え方、社会貢献活動に対する「共感」です。現地の顧客はこういった「共感」を持ったブランドの商品だからこそ購入を続けるという側面もあるようです。それが証拠にというわけではありませんが、印象的だったのが店内はいつどんなタイミングで行っても来店客でにぎわっていることでした。

 

allbirdsは再生素材を展示して表現

allbirds店内に展示された再生資材のディスプレイ(左)、SOHOにあるallbirds店舗内

 履きやすさと、再生素材でシリコンバレーの起業家の間でも話題を呼んだallbirdsでもやはり、利用している素材の展示を行っていました。EVERLANE同様、店内に何を使ってこの商品が作られたのかを明確にすることで、生産背景の透明性や、サステナビリティの企業精神を前面に打ち出しています。

 

包装資材も企業理念に沿う

 

 購入をしてみると初めてわかることでもありますが、商品を買った時の梱包資材もブランドの重要な訴求ポイントでもあります。あまりに過剰な包装は逆にクレームが来るそうです。ブランドとしてサステナビリティを前面に打ち出し、共感を得てこその購入だからこそのエピソードです。企業側がただ発信するのではなく、販売する行動の中にもそのマインドの浸透が重要な要素になっています。

――アパレルウェブ「AIR VOL. 20」(2019年2月発刊)より一部抜粋

 NY研修は2019年10月に開催予定です。ご興味のある方はぜひアパレルウェブ福塚(TEL:03-3663-4976/E-mail:ail@apparel-web.com)までお問い合わせ下さい。

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■AIR(APPARELWEB INNOVATION REPORT)とは…

 アパレルウェブが持つマーケティングプラットフォームに蓄積されたビッグデータやメディアのログなどから導いた独自データや分析結果、海外のファッションビジネスにおけるテクノロジー導入事例など、ファッションビジネスにおいて即効性のあるレポートを定期的に提供しています。

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