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2019.04.18
ファッションスタートアップ「Zilingo(ジリンゴ)」はなぜ多くの投資家を魅了できたのか
written by ケルビン(AIR編集部)
デジタルプラットフォームで市場のニーズを満たし成功!
「Zilingo」は2015年にシンガポールで設立されたファッションスタートアップです。同社は東南アジアの中小・零細、個人規模の「ブランド」「小売業者」「工場」をマッチングするB2Bマーケットプレイスを運営、同時にB2CのファッションECマーケットプレイスも展開しています。次々と資金調達に成功し、急成長する同社はユニコーン企業候補として投資家の注目を集めています。
世界の2大ユニコーン企業を上回る成長スピード
Zilingoのアプリ
「Zilingo」で注目したいのが、その成長スピードです。同社は2019年の2月に大型の資金調達(約250億円)に成功しました。今回の資金調達ステージはシリーズDと呼びます。海外メディアの報道によると、資金調達が成功した背景には「Zilingo」の事業が早くも黒字化へ転換したことが大きいようです。同社は設立からこのステージの資金調達まで3年半で到達しています。一方で「Uber」と「バイトダンス・テクノロジー」がシリーズDに到達するまで、それぞれ約5年と約4年かかりました。「Zilingo」の驚異的な成長スピードが同社のポテンシャルを物語ります。
創業のきっかけはタイの服飾資材市場
2015年に創業者でCEOのAnkiti Bose(アンキティ・ボーズ)氏とCTO( 最高技術責任者)のDhruv Kapoor(ドゥルーフ・カプア)氏がタイの服飾資材市場を視察した際に、多くの零細企業や個人事業主がその市場で取引している光景を見たことがきっかけと言われています。CEOのAnkiti Bose氏は今年27歳でインド出身の女性です。2018年には米国のForbes誌のU30(30歳以下)CEOに入選した注目の若手経営者です。
B2BとB2Cの融合で生まれる生態系
B2Bマーケットプレイスではアパレルから、シューズ、時計、インテリア、コスメ関連までの仕入れが可能
ビジネスモデルは利用者が「Zilingo」のB2Bマーケットプレイスで商品を仕入れ、B2Cのマーケットプレイスで一般消費者向けに販売できる仕組みとなっています。
さらに「Zilingo」で仕入れた商品を他のマーケットプレイスでも販売できるという便利な仕組みが、利用者を増やしている理由の一つです。また、B2Cマーケットプレイスで出店費用を徴収せず、販売手数料で収益を得ていることも特徴です。2019年3月時点で、B2Cマーケットプレイスの利用者は700万人を突破しています。
「離れたくない」プラットフォームの付加価値
主なターゲットは、これまでITに触れたことがない中小企業や個人事業主となります。これらのターゲットに対し、在庫管理システム、越境対応物流システム、売上分析、コンサルティング、テクノロジーサポートまでを「ワンストップサービス」として無料で提供しています。
加えて、提携先の外部企業とタッグを組み、融資、保険、カタログ作成、商品写真撮影などのオプションサービスも展開しています。販売手数料以外にこれらのオプションサービスも重要な収益源になっています。
「初期費用が不要で、無料で利用できるサービスも充実、さらに金融サービスも提供、全てが一つのプラットフォームで実現できたことが、利用者の離れたくないを生み出している理由」とCEOが発言しています。
B2Bマーケットプレイスが世界展開へ
B2Bマーケットプレイスのノウハウを活用して、2017年には欧米市場向けの新事業「Zilingo AsiaMall」をスタートさせました。その後、順調に拡大しており、現在では全体売上の40%を占めています。2019年にはフィリピン・インドネシア・オーストラリアなどに進出する計画があります。
――アパレルウェブ「AIR VOL. 22」(2019年4月発刊)より