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2019.04.19

【ミラノサローネ2019 ハイライト1】街中がヒートアップする世界最大デザインウィークの現状

取材・文:田中美貴

初出展のイナックス

 4月9〜14日、ミラノでデザインウィーク「ミラノサローネ」が開催された。この「ミラノサローネ」とは、そもそもは1961年から行われている「サローネ・デル・モービレ」というインテリアの国際見本市なのだが、この見本市と同時期に市内の様々な場所で「フオリ(外)サローネ」と総称される、インスタレーションや展示会、パーティーなどの一連のイベントが行われるようになり、それがどんどん成長して今や世界最大のデザインウィークになったもの。その過熱ぶりは年々アップし、本年度の見本市会場では期間中38万6,236人の来場客数を記録。「フオリサローネ」のほうの集客数を正確に把握することは不可能だが、同サイトの閲覧数はは昨年比28%アップだとか。招待状がないと入れないファッションイベントなどと違い、一般客にも解放されていることで人気が出たのだが、ここ数年は人気の展示には長蛇の列ができるようになり、今年は入場料を取る会場まで登場した。

 

 ちなみに市内で行われる「フオリサローネ」は、もともと本会場に出展できない小規模のインテリアブランドやブロダクトデザイナーが市内で独自に展示イベントをしたのが始まりと言われているが、今ではインテリア以外の業界のメーカーも多数参加し、手の込んだインスタレーションを行ったり、デザイン業界とのコラボでイベントを行ったりしている。クルマや家電、時計や服飾など様々な業界のメーカーが参加しており、これらも“デザイン”というくくりでは確かに関連はするのだが、他業界からの参加の狙いは新製品の発表というよりは、コンセプトや開発技術力をアピールすることだったり、欧州での(ひいては世界的な)知名度をアップさせることにあるようだ。それはデザインウィークそのものに集客力があり、さらにそれは世界中のメディアやSNSにより拡散されるため、大きな宣伝効果が得られることに着目してのことだろう。また、昨今のトレンドとして見られるのはデザインにおけるエコサステニビリティで、多くの企業が自然に優しいマテリアルの開発やリサイクルを心掛けた製品の発表や製造方針を打ち出しているが、それは企業のイメージアピールにも役立っているのかもしれない。

 

 このところ特に日本企業の出展が目覚ましく、毎年大仕掛けなインスタレーションが話題のレクサス、自社製品をうまく生かしたインスタレーションが好評なソニーや旭硝子、グランドセイコー、そして初出展ながら大きなインパクトを放った大日本印刷やイナックス、久々の出展となるヤマハやユニオンなどが参加した。

 

 ファッション業界に関しては、元々インテリア関係とのつながりが強く、「ミラノサローネ」に関しても早い時期からコラボを行っていたこともあるせいか、少々他業界とは違う動きが見られる。これについては後半で紹介したい。

  • 大日本印刷

  • イナックス

  • イナックス

  • ソニー

  • ソニー


 

 

田中 美貴(たなか みき)

日本では大学卒業後、出版社に勤務し、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌などを担当。その後、98年よりミラノへ移住。編集者、ライターとしてファッションを中心にライフスタイル、旅、デザイン&インテリアなどに関する記事を有名紙誌に寄稿。特に人物インタビュー、職人取材や地方の隠れたイタリア文化取材を得意とする。また撮影コーディネートやイタリアにおける日本企業のイベントや視察オーガナイズ、PRも多。企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳等も。渡伊直後からミラノコレクション取材を続けており、アパレルウェブでは主にファッションウィークレポートを担当。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。

 


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