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2016.02.25

テロの影響で日本からの来場が26%減―メゾン・エ・オブジェ2016年1月

 インテリア・ライフスタイルの大型見本市「メゾン・エ・オブジェ(Maison et Objet)」が2016年1月22~26日、パリ北部郊外のノール・ビルパント見本市会場で開かれた。前回から伝統的な分野ごとのホール構成を見直し、世界観ごとにまとめる構成へと変更したが、今回もそれを踏襲する形でレイアウトを行った。

 

 出展社数は60ヶ国2978社で、海外からの出展が55%を占めた。一方来場者は、前回比8%減の76417人で、うち仏国外は143ヶ国・地域、48%だった。ベルギー14%増、オランダ4%増だったが、昨年11月のパリ同時テロの影響を受けて、米国からの来場者が大幅に減少した模様だ。日本からも26%減と大幅な来場者減となった。いつもの肩がぶつかりそうになるほどの混み具合にはほど遠く、土日は賑わったものの平日はいつもより少ないと感じられる会場だった。8%減という数字から見ると、複数日の来場も減少傾向にあったのではと考えられる。

映画監督の北野武氏による作品

 日本からは、有田焼創業400年を記念した事業「ARITA 400project」で有田焼の窯元が、ホール7に継続出展した。関連イベントとしてホール6入口では、この企画のプロデューサーを務めた工業デザイナーの奥山清行氏とゲストクリエーターとして、映画監督の北野武氏、建築家の隈研吾氏、アートディレクターの佐藤可士和氏による有田焼の作品を展示したインスタレーションを実施し、多くの来場者にアピールしていた。

 ファッション分野としての見どころは、ホール6に集約された「ファッション」と子供関連の「キッズ」が中心となる。ファッションゾーンとはいっても、洋服の出展は少なく、バッグ、スカーフ、アクセサリーといったファッション雑貨や一部インテリア雑貨、ステーショナリーまで幅広く集めており、純粋なモード傾向の展示というより、雑貨の小売りやコンセプトショップに向けた提案商品が目立つ。

 「Andrée Sorant(アンドレ・ソラン)」は、リールとパリの二人組によるスカーフ、タイのブランドで、エレガントだった祖母の名前から付けたブランド名だ。建築デザインとリンクさせているのが特徴で、テキスタイルデザインを専攻してきたという。同柄のウォールペーパーやカーペットも展開している。スナップボタンで着脱が簡単なボウタイ(蝶タイ)は25型あり、リバーシブル。素材は綿、シルクやレザーなどで、ジャカードやプリントを施しており、小売価格は50ユーロ(約6,300円)。プリントはリヨンで行っているという。

 英国のハンカチブランド「tamielle(タミエル)」は、文字シリーズを強化した。すでにパリのザ・ボックス(プルミエールクラス・カンボン)にも出展経験があり、日本はアッシュペーフランスなどに販売している。約100種類のバリエーションがあり、小売価格は刺繍が15~30ポンド(約2,500~5,000円)、メンズが12~15ポンド(約1,900~2,500円)、プリントが28ポンド(約4,500円)など。

 日本からは小松精練が昆布のように見える素材を使ったバッグ「konbu(コンブ)」で2回目の出展。ゴワゴワした昆布のような素材感から名付けられたブランド名で、その珍しいファブリックとホールガーメントのバッグに注目が集まったという。ミニマムが100個からという問題で個店からの受注が難しく、またFOB(本船渡し価格)が50~150ユーロ(約6,300~19,000円)で、価格抵抗感も強いと感じたそうだ。

 一方キッズゾーンは大半が玩具やぬいぐるみ、家具といったアイテムが中心でアパレル製品は少ない。日本からは「KIKO+&gg* by KUKKIA(キコプラス&ジジ)」が木工玩具で、既に複数回出展しており、仏子供服ブランドの「ボンポワン」とのコラボ商品も手掛けている。ロンドン交通博物館とも商談が進んでおり、取引先からの要望を聞いてオリジナル商品を制作する点が評価されているそうだ。

 

 次回のメゾン・エ・オブジェ・パリは9月2~6日の予定。この他シンガポールで開催する「メゾン・エ・オブジェ・アジア」は3月8~11日、マイアミビーチの「メゾン・エ・オブジェ・アメリカ」は5月10~13日を予定している。


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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