PICK UP

2014.07.09

勢いがとまらない!HAUL VIDEO(ホールビデオ)現象がもたらすこととは?

 小売業界に取って、深い繋がりを持つソーシャルメデイア。 より効果的に活用する為に世代によって使い分けるのが当たり前になって来ていますが、10 代~20 代前半の女性の間で2~3 年程前からスタートした現象に、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】があります。ベッドルームのPCウエブカムに向かい、最近、購入した洋服やアクセサリー、コスメ等をショッピングバッグから一つづつ出して紹介し、ユーチューブにアップするというもの。ユーチューブで“HAUL”というタイトルで検索してみたところ、なんと458万件!勢いは止まりません。ショッピングした商品を伝える様子は、喜びと興奮が入り交じり、同世代の女の子達から熱烈な支持を受けているのですが、何故それ程までに人気があるのか、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】からスターも登場、ファッションブランドとの関係は、そしてこの現象が、小売業界に与えている衝撃の影響とは?

最強リアルほんとに知りたい情報!

 【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】の長さは、平均10~15分、結構長いのです。買った洋服を見せるだけならそれ程、時間はかかりませんが、 投稿者は事細かに、何故その服を買ったか、素材、デザイン、いかにお買い得か、正直な意見やアドバイスを熱弁しています。視聴する方も、興味がなければフォロワーに登録する事はない訳ですが、同じ年頃の女の子が何を購入しているのかという興味、時には着用している様子も映されており、彼女の正直なコメントは、リアリテイそのもの。ネット購入の傾向が強い中、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】での情報は、HPで写真を見るのとは異なる生の声そのもの、自分とかけ離れたモデルさんで無い分、コーデイネートやフィッテイング等、現実味が伝わります。例えば、私が見た黒人の女の子の【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】では、自分の肌のトーンに合うファンデーsションを紹介していました。ネット購入では“REVIEW”欄から、ある程度の情報は得られますが、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】では、投稿者が直接、使用してみた感想、メイクアップ法等、丁寧に紹介している。どこの誰だか匿名のREVIEW を読むよりも遥かに説得力に優れています。口コミサイトの役割りも果たしており、フォロワーになれば友人に聞く様な感覚で確実な情報が得られるのでしょう。

JADORE のHAUL VIDEO(ホールビデオ) より。(https://www.youtube.com/channel/UCRydku2m7GemOOBLN-IPLVg

共有世代のリサーチ術の変化

  いつの時代もトレンドの情報を得るには雑誌が一般的、デジタル化に伴い、IPAD版や自社HPやユーチューブでの発信をしているのは周知の事実。それらのメデイアには“素敵でしょ、さあ買ってください”とばかりのがメッセージが秘められているが、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】にはスポンサーもジャーナリズム精神も無い。閲覧者が商品を買うか買わないかは全く関係ないのです。小中学生の頃からデジタル機器に慣れ親しんでいる世代には、文字よりも画像、画像よりも動画といった、ダイレクトに伝わる方法が好まれるのです。12歳になる知り合いのお嬢さんも、ママのアイフォンを借りてインスタグラムに夢中です。どこかへ行く度に自撮りしてアップ。友人からの“LIKES”を増やしたいのでフォロワーがもっと欲しいのだと言います。2014年米国のプロム(卒業パーテイ)では、事前のネットリサーチで、ヴァリュー商品を購入する傾向から、前年比14%減だそうですが、それでもドレスや靴に平均987ドルが使われたそう。多くの卒業生が、購入前にドレスを着用している写真を#タグ付きで、インスタグラムにアップした事が話題になりましたが、友人からの”LIKES”を得る事は、ドレス費用以上の価値だそう。ドレスがバッテイングしない様にと いう配慮もある様ですが、より多くの共感を得る事は、この世代には不可欠なのです。

【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】が、ファッション業界にもたらす影響

 この現象が急激に増加する引き金となったのが、フォーエバー21だと言われているのですが、同社の商品を購入し、【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】をユーチューブに投稿した人の中から、優勝者に数百ドルのギフトカードを与えると言う『STYLE HAUL PASS CONTEST』で投稿者を募ったのです。 結果、予想を遥かに超えるエントリーがあり、ユーチューブに大量のビデオが投稿。ギ フト券欲しさにF21の商品を大量に購入し、次々と商品アピール、視聴する女の子達もリアルな消費者が興奮さながら手にしている商品に購買意欲がわくという、F21 に取っては僅かな費用で最も効果的な宣伝と販売に繋がると言う濡れ手に粟な状況。 

 

 もちろん他にも【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】ブームを利用し、ユーチューブへの投稿を呼びかける企業は相当数あったのですが、米国テイーンに絶大なる人気があるフォーエバー21の影響は相当なものであると想像できます。急激なブームを巻き起こした結果、何が起こったかというと、“安い商品を大量購入する”テイーンが増えたのです。この方式、フォーエバー21の価格を更に安く設定した新コンセプトストア『F21RED』の流れにリンクしませんか?WWD誌によると『F21RED』の増店を視野にいれ、向こう3年の間に、海外店舗を含む現在の店舗数の2 倍にあたる1200店舗への拡大するとアナウンスしています。学生ローンで苦しむ、昨今の学生達が望んでいる事、品質よりも値段。飽き性な彼女達には、一つの商品を長く着るよりは、安くて複数の商品。例えば、Tシャツには、この金額以上は払えないと言う価格のボーダーライン。これらの感覚を急激に促進する結果となったのでは?

イギリスのLILY MELROSE さんのHAUL VIDEO(ホールビデオ) より。(https://www.youtube.com/user/etcllymlrs

ベッドルームから、ミリオンを稼ぐHAUL VIDEO(ホールビデオ) スター 

 既に多くのホールビデオスターが登場していますが、最も話題となっているのが、18歳のベサニー・モータさん。彼女のチャンネルの登録者数、なんと650万人超え!レデイガガが現在、70万人なので、その人気ぶりはポップスター以上。インスタグラムでも、ヴォーグ等の人気ファッション誌4~5社を合わせるより遥かに多い300万人を超えるフォロワー数。ルックスのキュートさ、キャラクター、センスが揃い人気を博している彼女をメデイアや企業がほっとく訳がなく、最近では売り上げが低迷している『エアロポステール』とのコラボが大変話題になりました。ショッピングモールのエアロポステールに彼女が現れる事を聞きつけたファンが押し寄せているビデオを見たのですが、ポップスターでもムービースターでも無い素人の彼女に憧れる女性の多さにまたびっくり!

 

 ビジネスインサイダーによると、ユーチューブの広告収入だけでも月に4万ドル超え、年間に4千万円の収入はあるだろうとの事。彼女の何が、こんなにテイーン達を惹き付けるのか?13歳頃から【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】を始めたというベテランユーザー。購入して紹介している商品は、フォーエバー21やH&M、時にはトップショップなどもありますが、いずれも低額商品。“F21で購入したカットソーは、アーバンアウトフィッターズで見たのとデザインが同じだけれど値段が3分の1だよ~”なんていう事も語っています。収入から考えるともっと高額商品が買えるのでしょうが、フォロワーの目線と同じ、ターゲットやモールで買えるブランドが中心。ホリデイシーズンには、“あなたの一番好きなクリスマスソングは何ですか?”というアンケートを募り、回答者の中から、MacBookProや、アレキサンダーワンの財布等のサプライズギフトもしています。これって、完全なるマーケテイング!?これだけメデイアに取り挙げられ、企業との商売もある為、弁護士やエージェントが付いている様ですが、彼女自身のサービス精神と共に自然に身に付いたマーケテイング力で(株)ベサニーモータが誕生しているのでしょうね。

【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】の進化

 ベサニー・モータさんのチャンネルを見ていると、四季おりおりのイベント、ホリデイ等、テーマに合わせた動画を作成しており、それぞれのシチュエーションに合わせた、トピック、ファッション、ヘアメイク、インテリア、フード&ドリンク、洋服やジュエリーのDIY等、どれも真似したくなる様なアイデイアが満載。さながら、ヤング・マーサスチュワートの如く、工夫を凝らしたライフスタイルの提案はカラフルで、楽しく、ファッションだけにたくさんのお金を費やしてきたかつてのテイーンとは明らかに異なる。たくさんの熱烈なファンを創出するのも理解できる。ファッション雑誌を1ページづつめくるよりも明らかに楽しくリアリテイがあり、デジタル世代の為のライフスタイル雑誌、“ベサニー・モータリビング”という印象。旅をテーマにした2つ目のユーチューブチャンネル【ベサニーズライフ】も配信しており、日本やインド等アジア諸国への旅先からの動画を配信、次回はフランスに行きたいそうですが、フォロワー達も海外への興味がわくでしょうし、いろんな国での経験が、今後の彼女のセンスを更に磨いて行く事でしょうね。

 

 全ての【HAUL VIDEO(ホールビデオ)】ユーザーが同じ事が出来るとは思えませんが、TVショーさながらの構成で、優れたスピーチ力、表現力でそれぞれのテーマを持って提案しています。新世代が求めるリアリテイがここにあるのでは無いでしょうか。こうなると、ファッション雑誌、小売業界、コスメ業界も皆、戦々恐々、おちおちはしていられないかも!?

ベサニーモータのHAUL VIDEO(ホールビデオ) チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCc6W7efUSkd9YYoxOnctlFg

BethanysLife:
https://www.youtube.com/user/BethanysLife


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA )
米国ブランドの輸出及びビジネスコーディネート、マーケット調査などを承っています。

■ビジネス関連のお問い合わせ:小林まで
■市場調査レポートのお問い合わせ:西田まで

 

【公式サイト】http://www.maxrecorp.com/
【ブログ】マックスリー・コーポレーション

メールマガジン登録