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2015.04.08

グラミー賞曲にも登場 米国最大スリフトショップ「グッドウィル」の変貌が話題に

マックルモア&ライアン・ルイスのラップ・ソング「スリフトショップ」より

 “スリフト・ストア・シック”という言葉をご存知でしょうか?「スリフトストア」は中古品を扱うストアの事ですが、元々1960年代のヒッピーが、低価格の中古品をファッションに取り入れたというのがそのルーツ。このブームは1990年代の若者の間でも再燃。そして、最近ではラッパーのマックル・モア&ライアン・ルイスのヒット曲「スリフトショップ」が若者層のハートを掴み、昨年のグラミーショー4部門を受賞。リリックの中には、米国最大の非営利団体が運営するスリフトショップ「グッドウィル」が登場しているのです。“クラブでは同じドレスを来た娘に6人会った、プラダやグッチがクールだと言ってもTシャツに50ドルも出すのはバカバカしい”と、大量生産されるファッションや、成功者の証の如くギラギラとしたブランド品を身につける人々への揶揄を含みながらも、時代を反映する興味深い言葉が綴られています。そのスリフトショップ「グッドウィル」は約2900店舗あり、多くの小売り店がしのぎを削る中、年間に40億ドル(約4800億円/1ドル=120円換算)の収益をあげているメジャーリテイラーなのです。ラップソングのヒットと共に「グッドウィル」が若者層の支持を得つつ、2年前から密かに進めている、トランスフォーメーションが、話題となっています。

掘り出し物の宝庫?「スリフトショップ」が「古着屋さん」と異なる点

RARE by Goodwill(レア・バイ・グッドウィル)の店内

 古着屋さんは、同じ中古商品でも店主のセレクトによって仕入れが行われ販売すれば、店の売り上げになるのに対し、スリフトショップは非営利団体による運営、消費者からの寄付品を集め販売されており、収益金は、慈善事業に使われる。また、仕入れコストがかからない分、超破格値で販売されています。また、古着屋さんがファッションコンシャスな客層に対し、スリフトショップの客層はバジェットコンシャスな究極のバーゲンハンター。但し、スリフトショップに寄付をする人々には高所得者層も多くいる為、ラグジュアリーブランドの中古商品や殆ど着用せずに寄付される物があるため、古着屋さんよりも遥かに安い掘り出し物が含まれているのです。

ブティックのような空間で若年層を取り込む

 一般的な「グッドウィル」は、倉庫の様な店内に、ラックと簡易的な棚やテーブルに中古品が雑然と並べられただけの実用主義的な冴えない店なのですが、新フォーマットでは、同社のドネーションセンターの中から厳選された、アンティークの家具や、デザイナーブランド商品をセレクトしたブテイックタイプに一新。さながら、アーバンアウトフィッターズや、アメリカンラグを意識した内装を取り入れ、若年層を取り込もうというもの。2年前から密かにスタートした、このブティック型は現在60店舗、更に拡大していく予定です。

OCに出現したロフト風のショップ VMDチームによる地域密着型の内装

Deja Blue by Goodwill(デジャ・ブルー・バイ・グッドウィル)

 内装も店名も地域によりそれぞれスタイリッシュに変えており、例えばカリフォルニア州、オレンジカウンティの「OCグッドウィル・ブティック」では、VMDチームを発足し、「アート・センターカレッジ・オブ・デザイン」とのパートナーシップワークで、古着や家具をクリエイティブに演出。むき出しのブリックウォールを使用したロフト風の内装、デザイナーブランドの商品をフィーチャーしています。同じチームにより昨年12月にオープンした「RARE by Goodwill」は、450坪程のこじんまりとしたスペースに、インダストリアルシックなインテリアを使用。プラダやバーバリー、ピンクのシャネルブレザー等のハイブランドをセレクト。LPレコードを視聴できるリスニングステーションの他、フォトフレームをキッチンで使用する黒板にリメイクしたり、ジャケットをスタイリッシュなベストにリメイクする等、オリジナルの用途だけでなく、消費者がDIYできる様なアイデイアを提案する事で、生活の創造性が広がっています。その他、コロラド州の「Deja Blue Boutique-デジャ・ブルー・ブティック」、ラスベガスやテキサスにも地域による異なるVMDの店舗が続々オープンしています。

若者のライフスタイルにしっくりはまる 新スリフトショップの魅力

ブルックリンの「バッファロー・エクスチェンジ」とノリータの「ハウジングワークス」

 ハイエンドブランドが異例の破格値購入できる。周りの友達とまったく異なる個性あるファッションが楽しめ、友人からの注目も浴びる。飽きたら、リセールしてクローゼットを全く新しいワードローブにチェンジ。セーブしたお金は、バケーション、コンサート、ディナー、パーティに使える等、絶対的な価格の安さとファッションを求めるヤング層のライフスタイルにしっくりマッチしている。ファストファッションよりも更に安く、中古とはいえ、個性的で品質の良いアイテムを取入れることができる事は、冒頭のマックルモアの大ヒット曲「スリフトショップ」のリリックに共鳴し、新しいショッピング体験に繋がっているのではないでしょうか。

パーソナリティ求められる今―ファストファッションに次ぐ脅威となるか

 ユーズド商品を販売するストアの中では、「Buffalo Exchange(バッファロー・エクスチェンジ)」や「Housing Works(ハウジング・ワークス)」が、先行してヒップなイメージを打ち出し、支持を得ていますが、「グッドウィル」も、米国の消費を支えることになる最大の消費者層にアピールするファンキーな店作りをスタートさせた形です。ファストファッションの人気が継続している一方で、一点もののヴィンテージ商品や、パーソナライズできる商品を好むヤング層が徐々に増加しています。ギャップが昨年チャレンジした「ノームコア」戦略は大敗して、早々に値下げをしていましたが、グッドウィルのトランスフォーメーションのみならず、“パーソナリティ”は、ヤング層にアピールする上で、重要なキーワード。すでに取り入れている小売り店もありますが、今後のビジネスの大きなヒントとなるのではないでしょうか。

 

 アーバンアウトフィッターズやラルフローレン、トミーヒルフィガー等の米国ブランドは、古着業者からサンプルを大量購入し、デザインソースとして使用していますが、グッドウィルの様なスリフトショップが、スタイリッシュなブティックへと変化している事は、ファストファッション以外の新たな競合としての脅威でもありますね。


 

 

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